04:装備を作ってみた
「おお! これが鉄の鉱脈か!?」
オレは妖精たちの案内で、チュートリアルフィールドにあるといわれる、鉄の鉱脈に来ていた。
そこには鉄の鉱脈らしき岩山があり、そこの岩壁から鉄鉱石が採掘可能なようだ。
鉄鉱石は【操土】で岩壁を操作することで、簡単にかつ大量に、採掘することができた。
「他にもおもろそうな石が転がっとるな!」
またその周囲には白い【綿石】という石が、無数に転がっていた。
アイテム説明によると、この【綿石】からは、布製品が作れるらしい。
そして【綿石】は嬉しいことに、【操土】で使えるようだ。
まさか土魔法で衣類までもが造れるとは思いもよらなかった。
また【綿石】は重ねて使うことで、革のようにもなるそうなので制作の幅が広がる。
そして次の目標は【ゴーレム製作】を覚えることだ。
【ゴーレム製作】は【操鉄】を使いまくることで覚える魔法だ。
そのために鉄鉱石を使い、【操鉄】でかっこいい鉄製の装備を造りまくってやるのだ。
「いったい何作ろうかな・・・♪」
オレは鼻歌交じりに製作を開始した。
オレが最初に造り上げたのは鉄製の剣だ。
長さが1.5メートルほどの、騎士が装備するようなロングソードだ。
オレはそのかっこよさに、ほれぼれする。
「ぬ! 重くて振り回せん!」
だが筋力のないオレには、残念ながら、そのロングソードを扱うことができなかった。
オレはロングソードを諦める他なかった。
「しゃあないな・・・・。次は鎧を作るか・・・・」
そして次に造ったのは、騎士が装備するようなかっこいい鎧だ。
この鎧はオレの身長に合わせて、小さくしてあるのだ。
さっそくオレはその鎧を装備してみた。
「・・・・・動かれへん!!」
だが筋力のないオレには、その鎧を着て、動くことが出来なかった。
「こないないことあるか! 装備くらいまともにさせて!」
オレはそのゲーム仕様に憤ったが、現実はあまくないようだ。
ゲームは現実ではないが・・・・・。
けっきょく装備できたのは、上着と赤いマフラーと革のベルトくらいだ。
武器はなんとか10cmほどの、ミニマムダガーを装備することができた。
『土魔法に【ゴーレム製作】が追加されました』
「おう?」
そしてこのタイミングで、ようやく【ゴーレム製作】の魔法を、習得することが出来た。
「リファレンスやと?」
【ゴーレム製作】にはリファレンスなる、魔法における命令系統の説明書がある。
その命令系統を上手く使うことで、自由自在にゴーレムを、造り出せるというわけだ。
そのリファレンスには、色々とサンプルも掲載されており、そのサンプルを使うことで、標準的なゴーレムを造り出すことも可能だ。
オレはさっそく標準的なゴーレムを、造ってみることにした。
「鈍重やな・・・・」
ところが完成したゴーレムは、想像以上に動きが鈍重だった。
「拳ロケット!」
拳ロケットはその名の通り、拳を切り離して飛ばす技だ。
ゴーレムには体の一部を切り離して、飛ばすことが出来るのだ。
ところが鈍重ゆえに、標準を合わせている間に、敵に逃げられてしまいそうな感じもある。
「微妙やな・・・・」
正直このゴーレムが、本当に戦闘に役立つかどうかは微妙なところだ。
「だがあれならいけるんちゃう?」
だがそのゴーレムの技を見て、オレはあることを閃いたのだ。
オレはさっそくその閃いた物の、製作に取り掛かった。
「完成や!」
その武器は小さく、ゴーレム程の製作時間は、かからなかった。
そいつはオレが片手で持てるくらいに、小さな武器なのだ。
パン! パパン!
「おお! 成功や!」
オレがその武器から放った弾丸が、石の板に突き刺さる。
そう・・・・オレが造ったのは拳銃だ。
その拳銃は24発の弾を装填可能で連発も可能だ。
拳銃の弾を飛ばす仕組みには、ゴーレムの拳を飛ばす仕組みを転用した。
その拳を飛ばす仕組みも、速度の調整が可能で、速度を上げることで、威力も増すのだ。
この拳銃は、非力なオレでも装備可能な、見た目よし威力よしの完璧な武器だ。
そして【ゴーレム製作】の次には、【タロス製作】を習得することが出来るようだ。
この【タロス製作】は、魔法を使うゴーレムを造るためのクリエイト魔法だ。
その【タロス製作】を使うことで、ゆくゆくはこの拳銃を、魔銃にも改造可能というわけだ。
だがその【タロス製作】を習得するには、【ゴーレム製作】を使い続ける以外にも、習得条件があるようなのだ。
だから魔銃を造るのは、まだ先の話になりそうだ。
「待てよ・・・。これいけるんやったら、あれもいけるんとちゃう?」
オレが次に注目したのは、ゴーレムの関節の動きについてだ。
拳を飛ばす速度の調整が可能ならば、関節を動かす速度の調整も可能だと考えたのだ。
そして関節の動きを速くすることで、ゴーレムの鈍重な動きも解消できるはずだ。
オレはリファレンスを読み直し、それに関する命令を探し始めた。
「あったああああ!!」
そして無事に関節の動きを速くする命令を、見つけることが出来たのだ。
「でもせっかく造るんやったらもっとロマンを追い求めんとな・・・・」
こうしてオレはさらに何日もかけて、ゴーレム製作に、ロマンを追い求めたのだ。
「できたああああ!!」
そして出来上がったのが、このごっついゴーレムだ。
そのゴーレムは両手が長く、足が太く短い。
身長は4メートルもあり、まるでゴリラのような見た目だ。
お腹の部分にハッチがあり、そこからの搭乗が可能なのだ。
ちなみにそのハッチ、透明なガラスがついているが、実はそれはガラスではない。
【操鉄】では鉄の色の変更も可能で、透明度もいじれるのだ。
そこで鉄の透明度を上げて、ガラスのような見た目にしているのだ。
おかげでそのゴーレムも、カラフルでかっこいいものに仕上がった。
「お前はゴリメタルマークワンや!」
オレはそのゴーレムを、ゴリメタルマークワンと名付けたのだ。
ゴリメタルマークワンは、搭乗者の動きに合わせて動く、超高性能ゴーレムだ。
さらに左手にパイルハンガー、右手にはガトリング砲を搭載している。
ゴリメタルマークワンの起動には300MP必要だが、オレのMPであれば問題なく起動可能だ。
しかもオレのMPはあれから、魔法を使い続けることでさらに成長し、475まで増えているのだ。
「ゴリメタルマークワン・・・起動!!」
オレはさっそくゴリメタルマークワンに搭乗すると、試運転を開始した。
『魔力出力が不足しています。起動にはMAGが160以上必要です』
「なにいいいい!?」
HP 32
MP 475
STR 2 (標準男性の数値 11)
AGL 52 (標準男性の数値 8)
MAG 93 (標準男性の数値 6)
ところがゴリメタルマークワンを起動するには、オレのMAGが足りないことが判明した。
考えてみれば、あちこちの関節部位の動きを速くすれば、稼働に必要な出力がさらに必要になる。
基本的なゴーレムが鈍重な動きである理由は、MAGが低くても、十分に動かせるようにするためだったようだ。
「くそおおお! ロマンと言う名の沼に溺れた!!」
オレは憤ったが、人は時にロマンを追い求めるあまり、冷静さを欠くことがあるのだ。
今のオレが丁度そんな感じだった。
「ぬぬぬぬ・・・・・ゴリメタルマークワンは・・・・失敗だあああああ!!」
こうしてオレのロマンは、オレの涙と共に、現実と言う名の理不尽に衝突して、砕け散ったのだ。
そんな失敗もあったが、オレには拳銃と言う兵器を手に入れたのだ。
これで戦うには、問題がない。
次はいよいよこのチュートリアルフィールドを出て、冒険に出てみるのもいいだろう。
「あれ・・・ちょっとまてよ・・・・」
ところがここまで来てオレは、重大なことに気付いたのだ。
「このゲームの目的ってなんや?」
そう。それがこのゲームでのオレの目的だ。
通常ゲームには魔王を倒す、クリスタルを集めるなどの目的があるはずだ。
いったいこのゲームの目的とは何だろうか?
まあ今までそれを失念していたのもおかしな話だが・・・・。
このゲーム【聖獣の伝説】は、次々と伝説を造り上げ、聖獣として活躍していくゲームだ。
ならその伝説はどうやって作っていけばいいというのだろうか?
「目的ならクエストに書いてある!」
「ステータス欄のクエストだよ!」
「クエストをタップするといい!」
「クエストだと?」
オレは妖精たちに言われるがままに、スマホを手に取り、ステータス欄にあるクエストの文字をタップした。
するとクエストの内容が、記載されたページが開いた。
「勇者ユーキにコーラを届ける?」
そしてそのクエストの内容に、そう記されていたのだ。
「コーラってあの飲むコーラのことやろか? なんでまたそんなんが伝説になるんや?」
オレはそのクエスト内容を見て、困惑せざるを得なかった。
フォボス
年齢 0歳
種族 熊の聖獣
HP 32
MP 475↑
STR 2 (標準男性の数値 11)
AGL 52 (標準男性の数値 8)
MAG 93↑ (標準男性の数値 6)
スキル
土魔法 : 【操土】【操鉄】【ストーンバレット】【アースウォール】【ゴーレム製作】
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