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13:商業ギルド

 あれからオレとヒマは、協力してくれる冒険者探しを保留して、とりあえず商業ギルドへ行くことにした。

 商業ギルドでの収入は、安定して稼げる、唯一の収入源となる予定なのだ。

 それによって現実世界のオレの生活がより安定するだろう。


 それから【勇姫】関する情報も、ここで探ってみようと思っている。


 商業ギルドの施設に入ると、多くの人々が出入りしている様子が見えた。


 商売人に飲食店の従業員、ドレスや背広を着て、着飾った者と、さまざまな者が出入りしている。

 本棚やら色々なカウンターがあるのが見える。


 とりあえず総合受付に、向かってみることにする。



「おや? ここは子供が出入りする場所ではないですよ?」



 職員のいる総合受付のカウンターの前いに行くと、そんなことを言われた。

 それはメガネの似合いそうな、キャリアウーマンという言葉が、当てはまりそうな女性だ。



「そんなこと言ってもいいんか姉ちゃん?」



 オレはカウンターに飛び移り、不敵な笑みを浮かべつつ、そう女性に切り出した。



「まあ・・・・。しゃべる従魔とは珍しいですね?」



 女性はそんなオレを、珍し気にまじまじと見た。



「まあこれを見てくれや!」



 そい言うとオレは、ポーチをまさぐり、ある壺を取り出した。

 そしてその壺を、見てくれと言わんばかりに、カウンターの上に置く。



「まあ・・・・。もしかしてそのポーチは収納ポーチですか?」



 すると別の部分に、女性の注目が移った。


 オレが見て欲しいのはポーチじゃねえ!


 しかもこのポーチは収納ポーチではない。

 あくまでポーチから取り出したふりをして、アイテムボックスから取り出したのだ。

 アイテムボックスの存在は隠しておきたいからな。


 これはそんな隠蔽用のポーチだ!



「まあ・・・・そんなところだ・・・・。ところでこの壺だ!」



 オレはそのポーチの話題を瞬時に切り上げると、カウンターの上に出した壺に話題を戻そうとする。



「ヒマのポーチ・・・・しゅうのうのやつ付いてない・・・・」



 するとヒマががっかりした様子で、そんなことを言って来た。

 今ポーチから話題を逸らしたばかりなのに・・・・。



「ヒマちゃ~ん。今は話題を逸らすために適当に言っただけで、収納ポーチは言葉のあやなんだよ?」


「うん! わかった!」



 オレが小声でヒマにそう説明すると、ヒマは納得したように返事をした。

 そしてジト目でそれを見つめる、受付の女性の視線が痛い。


 ヒマのポーチには、葉っぱやらいらない小石しか、入ってはいない。

 それは幼い子供が珍しい小石やら、葉っぱに興味を示し、集めるのと同じだ。


 それでどうしてポーチに、収納機能が必要だというのか?


 しかもヒマは手癖が悪いというよりは、もう魔力癖が悪いと言えるので、始末に負えないのだ。

 ヒマには【見えざるにょろにょろの手】というスキルがある。


 このスキルは軽い物限定だが、にょろにょろと伸ばして、まるでサイコキネシスのように、物を掴んで持ち運べるのだ。

 

 その悪癖は一度言って聞かさねば直るまい。

 今度言おう・・・・よし!



「・・・・マさん! クマさん!」


「おっと・・・・。悪い・・・・考えごとしてたわ・・・・」



 すると受付の女性に声を掛けられ、ふと我にかえった。


 

「その壺怪しい宗教の物ではありませんよね?」


「ちゃうわい!」



 確かにその壺は、幸運のあの壺に見えなくもないかもしれない。

 だが重要なのはその中身なのだ。



 カパ・・・・


「姉ちゃん・・・・。この中身なんやかわかるか? わからんなら少し舐めてみ?」



 オレはその壺を、徐に開けて見せた。

 そして受付の女性に尋ねる。



「もしかしてこれは・・・・?」



 女性は指先に少しその粒を付けると、舐めて確認した。



「やっぱり・・・・これは砂糖ですね?」



 そう。オレが壺に入れて持ち込んだのは、異世界ラノベのテンプレであるあの砂糖だ。

 以前エマとう少女から、砂糖は高価だと聞いている。

 この世界で砂糖が高価ならば、高額で売れるに違いないと思ったのだ。



「この白さ・・・・大変高価な砂糖とお見受けします・・・・!」



 よっしゃあ! 女性の反応も悪くない!

 この感じは高く売れるに違いない!



「もしかしてこの砂糖を売りに?」


「そうや! その通りや!」



 オレは期待に胸躍らせながらそう答えた。



「ですがこの砂糖は・・・・当ギルドではお取り扱いできません」



 なんやとおおおお!?



「砂糖は王族や貴族に優先的に回るようにと、一部のルートでしか、取り扱えない決まりになっているのです」



 くそおおおお!

 王族や貴族が、ここでオレに立ちふさがるんか!



「いらないならその白いのはヒマがもらう」



 するとそれを聞いていたヒマが、砂糖の壺に手を伸ばしてきた。



「ヒマちゃ~ん。ヒマちゃんにはこの砂糖はいらないでちょ~?」


 

 オレは瞬時にその壺をヒマから遠ざけ、そうヒマに言った。



「ヒマ・・・・それ甘いのしっている。だから必要」


「あれれ? ヒマちゃんがどうして砂糖が甘いのを知っているのかな?」


「ヒマ、クマがその白いの、さらさら袋から壺に入れている時に、にょろにょろの手でちょっと取って舐めたから知ってる」



 こらああああ!

 これが洗剤とかだったらどないすんねん!



「ヒマちゃ~ん。知らない物不用意に舐めたらだめでちょ~。めっ!」


「む~ん!」



 オレがそう言って叱ると、ヒマは不満なのか頬を膨らませた。

 これからはゲーム内での物の移し替えは控えよう・・・・。


 そして砂糖が撃沈したからといって、オレはまだ負けたわけではない。



「今度はこれでどうや!」



 オレは砂糖の壺をしまうと、今度は別の壺を取り出す。

 そしてその中身を晒した。



「この粉はまさか? 胡椒ですか?」



 そう。オレがもう一つ持ち込んだのがこの胡椒だ。

 胡椒は中世ヨーロッパでは、金と並ぶくらいに高価な品だったのだ。


 するとヒマの表情が、苦虫をつぶしたような表情になる。

 こいつ胡椒も舐めていやがったな!?



「残念ですがその胡椒も高価ですので、先ほどの砂糖と同じように・・・・」



 ちくしょおおおおお!!

 また王族と貴族かいな!!

 胡椒も取引不可なんかいな!?


 だがオレはここで引きさがるわけにはいかなかった。

 なぜならリアルのオレの生活が、この取引にかかっているからだ。



「こ・・・! ならこれはどうかいな!?」


「ああ! それヒマが食べたいやつ!」



 オレが次に出したのは、たまたまアイテムボックスに入れておいたクッキーだった。

 ヒマちゃんは今は黙っていまちょうね?


 

「これは? スンスン・・・・」



 女性はそのクッキーを手に取ると、匂いをかぎだす。



「小麦粉とバター・・・・」


「そいつは見本だから、食ってもいいんやで?」


「それでは遠慮なく・・・・カリ!」



 すると女性はクッキー齧って、口に含んだ。



「ああああああ!」



 そしてヒマが非難の声を上げる。

 ヒマちゃんには後で上げるから、今はだまっていまちょうね?



「甘い・・・そして香ばしいですわね・・・・。悪くありませんわ・・・・」


 

 よっしゃああ! これなら売れるやろ!

 こうなったら転売や!



「貴方もしかして、砂糖を使ったお菓子のレシピをご存じですの?」



 ん? この反応はちょっと意外・・・・



「えっと・・・・。いくつか知っとつけど・・・・それが何か?」


「少々こちらでお待ちください。会頭とお会いできるか確認してまいります」



 そう言うと受付の女性は、席を立って奥の通路に向かって行った。


 会頭?


 もしかしてこれから、ここのトップと取引するのか?


 どうやらなんとか取引は、上手い方向に行きそうだ。

 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。

 感想、レビューもお待ちしております。


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