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11:もじゃもじゃ頭のローマン

「まずは自己紹介からしておこう・・・・。俺は冒険者ギルドマスターのローマンという者だ。お前らは何者だ?」

 

「オレは従魔の熊太郎で、こっちがヒマだ・・・」


「こんちゃ!」



 オレとヒマと、もじゃもじゃ頭の冒険者ギルドマスター、ローマンは、ます自己紹介を交わした。



「で? その従魔を従えたお嬢様が、いったい冒険者ギルドにどんな情報を求めてきたんだ?」



 ヒマの服装は、ここでもお嬢様に見えるようだ。

 現実世界で一般的な服装も、この世界では豪華に見えるのだろうか?


 まあそれが情報を引き出すには、都合が良いともいえる。

 なんの地位も持たない、ただの庶民の子供が、ふらっとやってきても、話を聞いてくれるとは思えないからな。



「一つは【勇姫】の二つ名をもつ冒険者の居場所の情報だ。もう一つは【聖獣アマルテア】の居場所について知りてえ・・・・」



 オレは知りたい情報、【勇姫】と【聖獣アマルテア】の居場所について、冒険者ギルドマスターのローマンに尋ねた。



「う~ん・・・・。まず【聖獣アマルテア】についてだが・・・・もしかするとある依頼が絡んでいるかもしれねえ・・・・」



 依頼ということは・・・・冒険者の依頼に関する情報が、絡んでいるということか?

 なら冒険者になって、その依頼を受ける必要があるのか?

 


「もう一つ・・・【勇姫】の二つ名持ちについてだが・・・・そいつは秘匿情報になるから何も話せねえ」



 【勇姫】の情報が秘匿情報ということは、その【勇姫】という二つ名を持つ冒険者が、かなり特別だということになってくる。


 オレは【勇姫】の二つ名をもつ冒険者こそ、勇者ユーキではないかと思っている。


 勇者ユーキは異世界から召喚された勇者だと聞いているし、その名前から現実世界からの召喚者の可能性が高い。

 ならば特別扱いされ、秘匿されるのは当然かもしれない。



「じゃあ聖獣アマルテアに関する依頼について教えてくれねえか?」



 オレはギルドマスターに、聖獣アマルテアの依頼についての情報を、尋ねることにした。



「まあこの酒をもらったしな・・・・。それくらいは教えてやってもいいだろう。立ち話もなんだ・・・。そちらに座ると良い」



 そう言うとローマンは酒場のテーブル席に腰かけ、その正面の席を、オレとヒマに勧めてきた。



「そうだな・・・・。まずその依頼についてだが・・・・」



 オレとヒマが席に付くと、ローマンは再び口を開き始めた。



「峠に出没するというオーガの群れを討伐依頼だ」



 オーガの群れ討伐か・・・・ヒマには聞かせたくない話だな。



「そのオーガの群れの中に、やたらと強い兎が混ざっていたそうだ」


「兎!? まさかその兎が聖獣アマルテアっていうことか!?」



 ヒマの村のオーガは、兎の聖獣であるアマルテアを崇拝していたという。

 ならそのオーガの群れは、ヒマのいたオーガの村の生き残りの可能性がある。

 その中に彼らを庇護する、聖獣アマルテアがいてもおかしくはない。


 だがその場合ヒマの目的は、すでに達成されていることにもなる。

 ヒマの目的はオーガ村の襲撃を、聖獣アマルテアに伝えることだからな。


 だからと言って聖獣アマルテアに会わないわけにもいかない。

 なぜなら聖獣アマルテアと、一緒にいると思われるオーガたちは、ヒマと同じ村の知人である可能性があるからだ。



「俺が話せるのはここまでだ。依頼を受けていない・・・・ましてや、冒険者でもないお前たちに、詳しい依頼内容に関することを、軽々しく話すわけにはいかないからな」



 そう言い終わるとローマンは、スクッと席を立った。

 もう話すことはないと言わんばかりに、去ろうとしているようだ。



「オレたちが冒険者になって、その依頼を受ければ・・・・教えてくれるのか?」


「金があるなら、そのお嬢様が冒険者を雇えばいいだろ? 金額によっては良い冒険者を紹介できるぜ?」



 結局はどの世界も金なんだろうな・・・・。

 まあ面白くはないが、ヒマの安全のためだ。

 とっとと商業ギルドで金を稼いで、冒険者を雇うとしますか・・・・。


 オレがそんなことを考えていると、ヒマが突然席を立ち口を開いた。



「ヒマは冒険者になりたい! 聖獣さまは自分で探したい! それがイーワンとの約束!」



 オーガという種族は、不器用なのだろう。

 危険を冒しても、約束を守ろうとするのは、愚かなことだと思う。


 だがヒマの目には、何か強い決意のようなものが宿っていた。

 イーワンというオーガとの約束は、ヒマにとってはそこまで大事なことなのだろう。

 

 そしてオレはそのヒマの台詞を聞いた時、なぜだかニンマリと、口角が上がっていた。



「ヒマ・・・・お前年はいくつだ?」



 するとローマンはヒマに、唐突に年齢を尋ねた。



「6さい!!」



 いや・・・・。5歳だろ・・・・。


 ここは本当のことを言うべきだろうか?



「6歳ならぎりぎり冒険者になれる年齢ではあるな・・・」



 え? 6歳でぎりぎり冒険者になれるの?

 オレは自らの口を塞いで、ヒマの本当の年齢を告げるのを止めた。

 本人も自らを6歳だと思い込んでいるし、ここでヒマが冒険者になれないのは可哀そうだ。



「闘技場にこい・・・。冒険者の厳しさを教えてやる」



 ローマンは先ほどとは打って変わり、気迫のある表情で、ヒマにそう告げた。

 どうやらローマンは、ヒマと闘技場で、模擬戦を始めるようだ。


 ヒマの実力が冒険者に相応しいか試すつもりだろうか?


 いや・・・・。


 ヒマに冒険者の厳しさを叩き込み、冒険者になることを、諦めさせようとしているのかもしれないな。

 今のローマンのあの目は、そういう目だ・・・・。

 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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