04:ヴァルキュリアの使命
~第三相視点
「フォボスさまがお目覚めになったのなら、顕現されるのはこの遺跡と聞いたが・・・」
遺跡の森の結界の前に、一人のハルバートを持つ、少女がたたずんでいた。
見た目は12歳くらいだろうか?
そのハルバートは馬上で使うような、とても重厚なものだ。
とてもそんな少女が持てるような武器には見えない。
だが少女はその重厚なハルバートを担ぎ、何気ない顔でそこに立ち尽くしているのだ。
羽根つき帽子をかぶり、着ているローブの下には、鉄製の胸当てが見えていた。
それはまるで魔術師のような出で立ちにも見える。
彼女の名前はエマニュエル・ヘスティア・ヴァルキュリア。
皆から愛称で、エマとよばれている。
そんな彼女は6代目の炎を司るヴァルキュリアである。
そんな魔術師風の服装に関わらず、ヴァルキュリアである彼女は、ハルバートを振り回し戦う戦乙女である。
その身体能力は高く、一度戦に出れば、一騎当千の強さを誇ると云われている。
おもにヴァルキリーの役目は、聖獣を守護し、聖獣に仕えることである。
そのためには聖獣を守護するに、ふさわしい力が必要となるのだ。
そのため修行を積んだ候補者から、わすか数名しか、ヴァルキュリアになることはできない。
彼女はその狭き門を潜り抜け、今ここにいるのだ。
だが彼女はまだ正式なヴァルキュリアではない。
彼女は聖獣の眷属となった時に、初めて正式なヴァルキュリアとなるのだ。
彼女のミドルネームにあるヘスティアは、聖獣フォボスへの信仰を意味し、代々聖獣フォボスへの忠誠を誓った者たちの名である。
そのためエマは、どうしても聖獣フォボスの、眷属になる必要があったのだ。
エマはここへ来る前は、ヘスティア村で過ごしていた。
三日前に村でお婆の口から、フォボスの顕現が、神託により告げられたと知らされ、それ以降、ほとんど休むことなく駆けてきたのだ。
聖獣で最も猛々しいと伝えられる、炎の聖獣フォボスに、会うことを夢見て・・・・。
「フォボスさまは本当に顕現なさったのか?」
ところがあれから三ヶ月遺跡の前で待ったが、フォボスと見られる聖獣が現れる気配は、いっこうになかった。
それもそのはず・・・・。
フォボスとなった熊太郎は、チュートリアルフィールドで、いまだに装備の開発に、勤しんでいたのだから・・・・。
「まさかすでに街の方へ!? もしくは森の中へでも!? こうしてはおられん! すぐにお探しせねば!」
そう思い立ったエマは、フォボスを捜索するために、再び旅立ってしまったのだ。
その数日後フォボスは、この遺跡に転移することになる。
「そうか・・・ヒマは遺跡に入れないんだっけ?」
そのころ熊太郎とヒマは、遺跡の結界に阻まれ、ヒマが光の壁を通過できないことから、足止めされていた。
このままでは安全なチュートリアルフィールドに、ヒマを案内することができない。
「たしか聖獣かその眷属なら結界を通過できるんだったか?」
熊太郎はヒマを結界の先に行かせるために、ある方法を思いつく。
「ヒマ・・・オレの眷属になるか?」
それはヒマを聖獣の眷属にすることだった。
「ケンゾクなに?」
「まあ家族みたいなもんか?」
眷属には聖獣に危害を加えられないとか、強い命令に逆らえないとかいう制約はあるが、強いつながりができ、お互いの場所が把握できるようになる。
ある意味それは家族と言っていいのかもしれない。
なお眷属の契約はいつでも切れるために、熊太郎は軽いノリでそうヒマに持ち掛けたのだ。
その契約を切ることで、発生するリスクについて何も知らずに・・・・。
「クマと家族? いいかも・・・・」
「よっしゃあ! ヒマは今からオレの眷属だ!」
「おお!」
そんな軽いノリで熊太郎はヒマを、自らの眷属にしてしまったのだ。
それがどういう意味かもしらずに・・・・。
こうして仕えるべきヴァルキュリアであるエマと、聖獣フォボスである熊太郎は、すれ違ってしまったのだ。
そんな二人が相まみえる日は、果たしてくるのだろうか?
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