手紙
光へ
いろいろ迷ったのですが、今これを書いている私はすっかりお婆ちゃんになってしまったけれど、この手紙は光と出会ったときの、私が十七歳の時のつもりで書くので、光もそのつもりで読んでね。きっとこれを読んでいる光も十七歳のはず!
まずは残念なお知らせ。この手紙を読んでいると言うことは、私はもうこの世には居ません。手紙は私の家族の誰かが渡してくれていると思います。本当は直接伝えたくて、ずっと探したけど見つけられなかったんだよ。
次にいいお知らせ。私はあの日、昭和二十年の三月十日を生きることができました。光は私を抱き上げて隅田川に飛び込んで、そこから気を失ってる私を船に押し上げてくれたって聞いています。大変なこともたくさんあったけど、その後の人生をとても楽しく幸せに過ごすことができたのは、なにもかも光のおかげ。本当にありがとう。平成って本当にあったね!
次はどっちのお知らせなのかな。もう知っていると思いますが、昭和二十三年に私は芳兄と結婚しました。芳兄は光のことを人生の恩人だとずっとずっと言ってました。幸せなことに子供や孫にも恵まれましたよ。この手紙を読んでいるということは誰かに会えたよね?誰だろう、梓かな?あの子は私にそっくりだから光も驚いたかな。
最後に大切なこと。言問橋でバスに登って光と一緒に見た光景はずっと忘れられません。光も覚えてるよね?ものすごく怖かったけれど、光が一緒にいてくれたあの日は私の二回目の誕生日です。
この手紙が無事に光に届きますように。これからの光の人生が名前の通り光でいっぱいでありますように。本当に、本当にありがとう。すごく短い時間だったけど、光に会えて本当に良かった。
もしも来世があるならば、今度は光と結婚してあげるね。芳兄も了承済み!
伊吹 桜(旧姓 上條)




