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81ー最初の一歩

 翌朝、眼が覚めるともうおフクが部屋にいた。俺のオムツをたたんだりしている。


「あぶぅ……ぶきゅー」

「あら、おはようございます」

「あばー」


 まだ眼がショボショボするぞ。


「よく眠れましたか?」

「あう」

「オムツは大丈夫ですか?」

「あー」


 そう言われると、意識するから出ちゃうよね。なんだか昨夜から、出ちゃうばっか言ってる。

 ブルブルッと震えた俺を見て、おフクがオムツを用意した。よく分かっている。


「昨夜は珍しく夜中にしましたからね」

「あぶあぶ」


 まあ、あれだ。それは仕方ない。

 でも考えないとな。転移する度に出ちゃってたら、今後魔王のところに行く度に出ちゃうという事になる。

 どうしてだろう? やっぱ無意識に力を入れているのか?

 て、静かだな。ミミはまだ寝ているのか?

 ベッドを見ると、しっかり大の字になって眠っていた。お疲れかな?

 でも最初の一歩が踏み出せた。これは俺の目標の一つだったのだ。

 こうして一歩ずつ積み重ねて、未来を変えてやるんだ。


「さあ、朝食に行きましょう。今なら奥様も一緒ですよ」

「あば、ああちゃ」

「はい、奥様です」


 ミミ、ご飯だって。起きろー!


「そうでしたね、ミミちゃんを起こさないと」


 おフクがベッドのところまで行って、ミミを揺さぶる。

 そんな事じゃ全く起きそうもないミミ。

 

「ミミちゃん、ミミちゃん、桃ジュースですよ!」

「みゃみゃ! ももじゅーしゅ!」


 おう、おフクったらミミの事をよく分かっている。

 さあ、ご飯食べに行こうぜ。


「みゃみゃみゃ、もうあさみゃ?」

「あぶ」

「みみは、おちゅかれ(疲れ)みゃ」


 はいはい、昨夜頑張ってくれたからね。でもさ、ミミ。魔王の前でちょっとテンション上がり過ぎだったと思わないか?


「みゃ? しょうみゃ? みみは、しょんなことないみゃ」

「あぶぶ」


 何言ってんだよ。ミミが一番煩かったじゃないか。デンジャーだとか叫んでいただろう?


「しょうみゃ? しょんなことないみゃ。みみはいつれも、れいしぇい(冷静)みゃ」


 そんな事ないからな。俺の方が絶対に冷静だったぞ。


「あら、何のお話しなのかしら?」


 おっと、母だ。


「ああちゃ」

「ラウ、おはよう」

「あばー」

「ふふふ、今日も可愛いわ。今朝はお父様もいらっしゃるわよ」

「あば? ちゃーちゃ?」

「そうよ、お父様」

「ああちゃ」


 珍しい。いつも父は早いのに。

 最近は落ち着いているんだな。例の真紅の髪の女性の件が落ち着いたのか?


「もう取り調べも全部終わったみたいよ」

「あぶぶ」


 なら暫くはゆっくりできるのかな?

 食堂に入って行くと、その父が待っていた。先に食べていれば良いのに。


「アリシア、ラウ、おはよう」

「あなた、早いのですね。おはようございます」

「ちゃーちゃ、あぶあー」


 ヒョイと手を上げる。

 すると父がヒュンッと、おフクに抱っこされている俺の直ぐ側までやってきた。


「ラウ! 今日も可愛いぞーッ!」


 おフクから俺を奪い取り、ほっぺをスリスリしてくる。ちょっぴり残ったお髭が痛いから、両手でぐぐぐーッと押し返す。


「ラウ! 父様ともう一度呼んでくれ!」

「ちゃーちゃ」

「おおーッ! そうだ、父様だぁッ!」


 朝から元気な父だ。早く席に戻って食べよう。


「あなた、お食事ですわよ」

「お、おう。そうだった」

「あぶぶ」


 本当にこの父のどこが氷霧公爵なのか。確かに公爵だけど、氷霧ではない。絶対に違う。

 こんな熱い父が見られるのも、限られた者だけなのだろう。城にいる時の父は雰囲気が違うから。

 そういえば、王妃はどうしたのだろう? 王子に優しくしていると良いのだけど。


「ああちゃ、あぶあばー」

「あら、なあに?」

「らうみぃは、おうひ(王妃)おうじ(王子)のことをしんぱい(心配)してるみゃ」


 そうなんだよ。ミミ、通訳有難う。


「しかたないみゃ。みみはらうみぃの、ちゅかいま(使い魔)らからみゃ」

「あぶ」


 珍しい、とっても素直なミミだ。


「ラウ、大丈夫よ。王妃様は落ち着いていらっしゃるわ」

「あぶぶ」


 それは良かった。


「みんななかよし(仲良し)が、いいみゃ。みみはしぇわ(世話)しきれないみゃ」


 え、なんだかとっても偉そうなミミだ。


「ももじゅーしゅのむみゃ」

「はいはい、ミミちゃんのはこっちですよ」

「みゃみゃみゃ、いっぱいほしいみゃ」


 桃ジュースの方が大事らしい。

 

 この初訪問を境に、俺とミミは何度も魔王の元に転移した。一度経験してしまえば、もう慣れたものだ。

 2回目からはテンパる事もなく、結構冷静に話せたと思う。

 時間が限られるから中々話が進まなかったのだけど、取り敢えず俺が言いたい事は伝わった。

 そして、魔王とも仲良くなったんだ。


「もっとゆっくりできないのか?」


 なんて言ってもらえる様になった。

 魔王というからどんな奴なんだと身構えていたのだけど、全然悪い奴じゃなかったんだ。

 一国を収める(治める)王だ。ちゃんと冷静に話を聞いてくれた。こんな赤ちゃんの話をだ。

 定期的に魔王の元へと通った。その所為か俺のシールドの精度も上がり、少しずつ時間も長くなった。と、言ってもまだ数分なんだけど。

 そして肝心な、出ちゃったは毎回出ちゃった。何でだろう? オムツが取れる頃には、しなくなるだろうと思う事にした。


「ラウ、また匂うぞ」

「あばー!」


 魔王とそんな会話もする様になった。

 これが大きな一歩になってくれる事を祈る。


お読みいただき有難うございます!

今日で第1章は終わりです。0歳児が長かった^^;

これって需要があるのか?なんて、酷い事を言われた事もありました。(T . T)

明日から第2章に入ります。続けて読んでいただけると嬉しいです。

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
需要、ありまーす!
お題が0歳児だから良いじゃ無いですか❓私は、ラウちゃんとミミの掛け合いが好きですね。(^O^☆♪ 何回の魔王様との訪問❓で仲良くなって良かった( ◠‿◠ ) 案外魔王様は、話の分かるお兄さん⁉️それと…
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