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74ー初飛行

 ミミの前にテンと足を投げ出して座って考える。短いプヨプヨの腕を組み、手を顎にやる。どうやって乗ろうか? 風属性魔法と重力魔法を組み合わせるか? と、考えていたんだ。


「ミミ、いい加減にしなさいな」

「ええー、みみはわるくないみゃ」

「ミミ……」


 ちょっと威圧感のある低い声で精霊女王がミミを(たしな)めた。凄みをきかせてミミを見ている。


「ミミ、チェンジする方が良いかしら?」

「みゃみゃみゃ! しょんなことないみゃ! みみは、やくにたっているみゃ!」

「じゃあ、役に立っているところを見せてちょうだい」

「しかたないみゃー」


 あ、こいつまだ仕方ないとか言っている。ミミ、今精霊女王に叱られているんだぞ。なのにそんな態度でいいのか? 駄目だと思うぞぅ。


「これ! ミミ! ちゃんとしなさい!」

「みゃッ! がんばるみゃ!」

「よろしい」


 おう、なんとか話はまとまったらしい。

 ミミが、ピヨッと小さく鳴いた。すると、おやおや不思議。俺の身体がフワリと浮いてミミの背中に着地した。


「あば!?」

「みみがほじょ(補助)しゅるけろ、らうみぃもしっかりちゅか()まるみゃ」

「あぶあー!」


 なんだよ、なんだよー! 今のはミミの魔法なのか!?


「ふふふ、ミミは優秀だって言ったでしょう?」

「みみは、てんしゃいみゃ」


 また自分で言ってるよ。でもミミがこんな真面な事をしたのは初めてじゃないか? いつも桃ジュース飲むとしか言っていないからな。


「らうみぃ、ほんとーにひろい(酷い)みゃ」


 そんな事を言いながらもちゃんと補助してくれているみたいで、俺は眼に見えない何かでミミの背中に固定された。これなら落ちないぞ。


「らうみぃ、かじぇまほうみゃ」

「あぶあ?」

「みみがとぶ(飛ぶ)ふうあつ(風圧)があるみゃ」


 おう、それを風属性魔法でなんとかしろって事だな。よし、任せとけ。

 俺は風属性魔法で自分の身体の周りに風の膜を張った。これで風圧も大丈夫だ。


「とぶみゃ」

「あば!」


 よし! 超テンション上がるじゃないか! ミミ、いいぞ! 飛べー!


「あぶあー!」


 ミミが羽を大きく動かして上昇した。そして両手を広く伸ばした様な恰好で、羽を羽搏かせる度に前へとグンッと進んで行く。とってもスムーズだ。

 風を切って飛んでいるが、俺は固定されているし風属性魔法も使っているから何の支障もない。

 これはいいぞ! あっという間に精霊女王が小さくなって行く。

 

「ここはかじぇ()がないからおだ()やかみゃ」

「あぶあー」


 けどな、ミミ。上昇気流に乗ってしまう方が早く飛べるんじゃないか?


「みみはしぇいれいみゃ。しょんなの、かんけいないみゃ」


 ほうほう、それは凄いぞ。これなら魔族の国まであっという間だ。

 それに精霊女王が協力してくれるんだ。楽勝じゃないか!


「らうみぃはむちゃみゃ。かんがえが、あまいみゃ」


 時々冷静な事を言うな。そうかな? でも魔族の国まで簡単に飛べるだろう?


「みみはまじょく(魔族)くに()に、いったことがないみゃ」


 それがどう関係あるんだ? 空から行くんだ。道は関係ないから迷う事はないだろう? それともあれか? あの北の山脈が越えられないとか言うのか?


「しょんなことないみゃ。みみならかんたん(簡単)みゃ」


 ならやっぱ楽勝じゃないか。

 ミミの言い分だと、魔族の国は魔素濃度が高い。それはまだ良い。だが、瘴気も溢れている。それが問題なのだそうだ。

 精霊にとって魔素濃度が高い事は問題にはならない。何故なら精霊の国だって魔素濃度が高いから。でも精霊の国には瘴気がない。何しろ浄化を担う世界樹があるんだ。瘴気なんてある筈がない。

 それどころか、浄化の精気で溢れているのだそうだ。そんな場所に精霊の国はある。そこと魔族の国とは正反対なんだ。

 なら、ミミが持たないという事なのか?


「らうみぃほどじゃないみゃ」

「あぶ」


 なんだよ、それ。今の俺はシールドを張って数分だ。ミミもシールドを張れば、数日は平気なのだという。なら何も問題ないじゃないか。


「あるみゃ。いやなのみゃ!」


 なんだよ、ミミの気持ちなのかよ。


「みゃみゃみゃ! らいじなことみゃ!」


 そんな話をしながらなのだけど、ミミの飛行は快調だった。小さい時のミミは、身体が小さいものだから小さくパタパタと羽を動かしていた。

 だけど、今は本来の大きさだ。大きいミミだ。パタパタなんかじゃない。悠々と飛んでいる。

 羽搏くのも大きく羽を動かしているものだから、ほとんど揺れは感じない。


しょれ()はみみが、ゆうしゅう(優秀)らからみゃ」


 はいはい、天才やら優秀やら。確かに凄い事は認めるさ。ミミが魔法で補助してくれなかったら、俺はこんなに悠長に乗っていられないだろうし。


「しょろしょろ、もどるみゃ」

「あばー」


 ええー! もうなのか? もっと飛んでいたいぞ!

 ここは精霊女王の世界だから、景色に変化はない。一面真っ白な世界だ。

 これって元の世界だと、また全然違うのだろうなぁ。見てみたい。空から自分が生きている世界を見てみたいんだ。


「らうみぃは、やんちゃみゃ。こわくないみゃ?」

「あぶぶ」


 怖いものか。気持ち良いじゃないか。

 このまま魔族の国に行っても良いくらいだぜ。


「しょれは、みみがいや()みゃ」


 分かったよ。有難う、ミミ。


「みみは、らうみぃのちゅかいま(使い魔)みゃ。らからまも()るみゃ」


 俺の我儘を聞いてくれて、有難う。使い魔がミミで良かったよ。


「みゃみゃみゃ! きもちわるいみゃ」


 ヒデーな。せっかく素直に感謝しているのにさ。

 そうして、俺の初飛行は終わった。いやー、気持ち良かったぜ。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

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