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73ー詰めが甘い

 精霊女王は俺の決心が変わらないのなら、出来るだけ負担を少なくするように考えてくれていたんだ。有難い事だ。

 精霊女王に呼ばれた翌日、またミミに言ってやった。昨夜も精霊女王に呼ばれたのだぞと。


「みゃみゃみゃ!? らから、ろうしておこしてくれないみゃ!」

「あぶぶぶ」


 ワッハッハッハ! もう眠っていても支障がないからさ。それでも叩いて起こそうとしたんだぞ。

 でも全然起きなかった。爆睡だったんだよ。


「みゃみゃ! ちょっとおちちゅくみゃ。みみは、ももじゅーしゅをのむみゃ」

「あぶー」


 なんでだよ。桃ジュースは関係ないだろう。まあ、いいや。俺もりんごジュースをもらおうっと。

 おフクー! ジュースが欲しいぞー!


「ぶきゅー! あう、じゅーしゅ」

「あらあら、またですか? 朝ごはんの時に飲んだでしょう? 果実水にしておきましょうね」

「あぶぅ」

「みみは、ももじゅーしゅみゃ」

「はいはい」


 あ、ズリーな。俺は果実水なのに。と思いながら、コップを両手で持ってストローでチュゥゥーと果実水を飲む。これはこれで美味い。

 さて、ミミ。落ち着いたか? ミミがツンツンと突きながら桃ジュースを飲んでいる。それってじれったいな。もっとゴックゴックと飲めないのか?


「とりしゃんらからみゃ」


 嘴だもんな。ふむ。それより、ミミ。いくぞ、魔王城へ。


「あばー!」


 と、コップを持っていた手を掲げる。決意表明だ。誰にだよ!? て、思うのだけど。


「みゃみゃみゃ!? みみはまら、のんでるみゃ」

「あぶぶ」


 なんだよ、俺はもう飲んだぞ。それでな、昨夜精霊女王と話したんだけど。


「まちゅみゃ。まらのんでるみゃ」

「ぶぶぶ」


 これで本当に大丈夫なのか? 俺はとってもとっても不安になってしまうよ。

 魔王城へ行くのはミミが頼りなんだからな。しっかりして欲しいんだ。


「なんみゃ? はなしたみゃ?」

「あぶ」


 そうだよ、精霊女王とちゃんと話をしたんだ。


「みみはねていたみゃ」


 おう、爆睡だったな。


「らから、みみは、しらないみゃ」


 ん? なんだと?


「らって、みみはいきたくないみゃ」


 今更何言ってんだよ。ミミは魔王城まで乗せて行ってくれないと、俺はここから転移なんてできないだろう?

 それに、精霊界を経由するんだ。精霊女王がそう言っていた。


「なんみゃ? ほんちょみゃ?」

「あぶぅ」

「ええー、みみはいきたくないみゃー」

「あばば!」

「らって、いきたくないみゃ」

「あばばば!」

「わかったみゃ、しかたないみゃ。しぇいれいじょうおうも、いいっていってるみゃ?」

「あう」

「しかたないみゃー」


 なんだよ、なんだかとっても嫌な感じで態度が横柄だ。


「あぶあー」

「わかったみゃ」


 本当かよ。じゃあ今夜はミミに乗る練習な。決まりだ。


「しかたないみゃ……ケフッ」


 あ、ミミったらゲップしたな。ちゃんと聞いているのか?


「きいてるみゃ、ほんとうに、ほんとうに、みみははんたい(反対)みゃ」


 そうつぶやきながら、空のお皿の前で毛繕いなんて始めている。

 なんだかとっても偉そうなんだけど。これってあれか? 母を連れてくる方が良いか? このミミの態度を見てもらおうか? おう? どうするよ?


「みゃみゃみゃ! ちゃんとしゅるみゃ! ありしあしゃまはこわいみゃ!」

「ぶぶぶ」


 なんだよ、それは。とっても感じ悪いぞ。やっぱ使い魔をチェンジしてもらうか?


「らうみぃ! しょれは、いってはらめみゃ! ちぇ、ちぇ、ちぇんじなんて!」

「あぶぅ」


 なら、ちゃんとしような。ミミ、分かったか?


「わかったみゃ。らうみぃはしゃしゅが(さすが)ありしあしゃまの、あかちゃんみゃ」


 またそんな事を言っている。ちゃんとすれば良いんだよ。ミミは直ぐに楽をしようとする。


「ちがうみゃ! みみは、しんけんにはんたいみゃ!」

「あぶぶ」


 はいはい、分かったよ。そんな事を言っても俺の気持ちは変わらない。

 いくぜッ! いざ魔王城へ!

 ブンッと手を掲げる。やる気満々な俺だ。


「なんれ、はりきってるみゃ」

「あばー!」


 反対だとか何とか言っているけど、本心は行きたくないんだろう。ま、それはそうだろう。

 だって精霊とは正反対の存在の、魔族の国に行くんだ。そりゃ、行きたくないだろう。

 そんなミミを無視して……いや、説き伏せてその日の夜にまた精霊女王の世界に呼ばれた。と、言うか呼んでもらった。ミミに乗る練習をする為だ。

 俺ってちゃんと準備しないと、嫌なタイプなんだ。だから念入りに練習するぞ。


「あば!」

「わかったみゃ」

「ふふふ、ミミったら頑張りなさいな」

「がんばるみゃぁ……」


 ここまできてもまだ、やる気のないミミだ。だけど、そんな事はお構いなしだ。

 さて、どうやって大きいミミの背中に赤ちゃんの俺が乗ろうか?

 超基本的な事を考えていなかった。デカイんだよ、ミミが。その大きさが良いんだけど。

 それでもやっとヨチヨチ歩きができる様になった俺にはどうしようもない。単純に全く届かない。


「あぶぅー」

「フッフッフッフ、ラウったら考えていなかったの?」

「あう」


 大きくなっているミミの前で、俺はチョコンと座りちょっぴり呆然としてしまった。マジかよ、どうやって乗るんだ?


「らから、らうみぃ。つめがあまいみゃ」

「あば」


 詰めが甘いなんて言うな! その通りなんだけどさ。さて、どうしようか?


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

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