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70ー仲良し

 俺って、日進月歩なのだ。ちょっと眼を離すともう成長しているぞ。


「しょんなことないみゃ」

「あばぁ」


 ミミったらノリが悪い。空気を読めない鳥さんだ。


「とりしゃんじゃないみゃ。しぇいれいみゃ」

「あぶぶ」


 分かってるって。そんな事はどうでも良い。オヤツを食べよう。今日は何だ?


「りんごを煮たものに、さつまいものペーストをのせてありますよ」

「あぶあ」


 おう、俺の好物だ。これを中に入れてパイにすると、絶対に美味しいだろうと思う。

 サクッとしたパイ生地の中に、煮たりんごとさつまいもペーストだ。ま、今はそんなの食べられないのだけど。

 ベビーチェアーに座らせてもらって、首に布を巻く。食べる時にこぼしちゃうからね。

 子供用の小さなスプーンを握って、さあ食べよう!

 スプーンをぶっ刺して(すく)おうとするのだけど、これがなかなかうまく掬えない。

 それでも、なんとか口に入れる。ほんのり甘くて、とっても美味しい。


「あうあー」

「坊ちゃま、もう少しそうっと掬うと良いですよ」

「あば?」


 それができるのなら苦労しない。だが、チャレンジだ。なんでもやってみないと分からないからな。

 今度はスプーンをゆっくりとりんごとさつまいもに入れて、そーっと掬ってみる。おう、できた!


「はい、お上手ですよ」

「あばー」

「おいしいですか?」

「んまんま」


 俺は足をブンブンと動かしながら、美味しいと喜びを表現する。スプーンをしっかりと握って食べる。

 走ってやって来た父は、しっかり母の隣に座って見ている。


「ラウ、美味いのか?」

「んまんまー!」

「どれ、私も一口」

「あなた、離乳食ですのよ」

「しかし興味があるではないか。ラウ、父様に一口食べさせてくれるか?」

「あば!」


 おう、良いぞ。あぶあぶと言いながらスプーンで掬って、父の前に出す。美味いぞー。


「ちゃーちゃ」

「お、くれるのか? あーん」

「あーん!」

 

 父が俺のスプーンから一口食べた。


「あばー」

「ふむ、甘酸っぱいりんごと甘いさつまいものハーモニーか」

「あぶあぶ」


 キャッキャと喜んで体を動かす。な、美味いだろう?


「離乳食とはいえ、これはなかなか美味いな」

「あう!」


 な、美味いだろう?


「もう、あなたったら」


 おいおい、父と母の間に甘い空気が漂うぞ。仲が良いな。

 こんな雰囲気の両親も、前の時には見た事がなかった。俺が覚えている父は『氷霧公爵』そのものだった。

 いつも誰も寄せ付けないような、クールな空気を醸し出していた。

 こんなに子煩悩で、母と仲が良いなんてな。俺は両親の何を見ていたのだろう。今は家族3人仲良しさんだ。


「みみは、ももじゅーしゅみゃ」


 はいはい、ミミはいつでもどんな時でも桃ジュースだよな。

 ミミだって前の時にはいなかった。

 これは確実に前とは違っている事だ。精霊女王の存在自体を知らなかったのだし。

 よし、ミミ。後でまた練習だ。


「まらやるみゃ?」

「あば」


 当然じゃないか。あともう少しシールドが維持できたら魔王に会いに行くぞ。


「しかたないみゃ。みみがまもるみゃ」

「あら、何のお話なのかしら?」


 いかん、母は鋭いからな。秘密だ、秘密。


「わかってるみゃ。しょんなの、みみがしかられるみゃ」

「あぶー」


 アハハハ、保身じゃないか。

 四阿で、家族揃ってまったりとした後、俺はお昼寝だ。と、いっても今の俺は食べるか寝るかだ。時々、あばあばと言いながら練習したりミミと遊んだり。

 まだまだ体力がないんだな。ま、0歳児なんだから当然か。


「ぶぶぅ」

「ラウ坊ちゃま、目が覚めましたか? 果実水飲みますか?」

「あばぁ」


 まだ寝起きで、ポヤポヤとしている。ヨイショと身体を起こし、おフクに向かって両手を出す。


「ぶきゅー」

「はい、起きましょうね」


 おフクに抱っこされたその時だ。


「あぶぅ……」


 ちょっとブルルッと震えて出ちゃった。


「あばあば、しー」

「あらあら、出ちゃいましたか?」

「あうあー」

「オムツ替えましょうね」


 これもまた進歩だ。出ちゃっても今までの様にギャーギャー泣く事はなくなった。

 おフクが直ぐに察してくれる事もあるのだけど、俺も泣かずに知らせる事ができるようになった。

 なんてお利口な0歳児だよ。

 そうそう、あと数ヶ月で1歳になるんだ。身体能力や魔法の訓練の方に気を取られて、言葉には拘ってこなかった。

 それでも、まあこんなものだとは思うのだけど。少し発声練習でも追加してみるか?

 そんな事を考えながら、おフクに果実水をもらいチュウチュウと飲む。寝た後は喉が渇くんだ。


「ぶぶぅ、んまー」

「美味しいですか? 坊ちゃま、言葉もお上手になりましたね」

「あば?」


 そうか? まだ意味のある言葉なんて話せていないだろう?


「フクは、何を話しているのか分かりますよ」

「あば」


 それはおフクが凄いんだ。それだけずっと一緒にいるという事もあるんだが。

 何より、おフクがしっかり俺を見てくれている証拠だ。

 前の時は、フクも犠牲になったのかも知れない。うちを潰すつもりで嵌めていたのだから。

 おフクだけじゃない、うちにいる使用人達は皆能力が高い。ちっとやそっとでは、やられないだろうとは思う。

 それでもなぁ……と考える。今回は全員助ける。それが俺の目標だ。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
日進月歩、赤ん坊の成長は目まぐるしです。ラウちゃんとミミの成長も日進月歩〜かなぁ❓確実に一歩一歩前進〜(^O^☆♪  小さな身体で皆んなを守ろうとするラウちゃん頼もしいけどまだ貴方は0歳児ですよ。まだ…
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