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64ー懐妊

 数日、恒例の会議を開催される事もなく、ミミと一緒にシールドの練習に励んでいた。

 その間、父やアンジーさんは捕らえた者達の尋問をしているようだった。

 そして、いつの間にかその者達は城へと護送されて行った。その後、どうなったのかは俺は知らない。でも会議で聞いた感じだと、国に返す事はしないのだろうな。

 返したとしても、処刑されるかも知れない。だからと言って、この国で何ができるのだろうと思うのだが。それは大人に任せておこう。

 俺はまだ0歳児なのだから。


「あぶッ! あうッ! あだッ!」

「らうみぃ、またしょれなのみゃ?」


 ミミが「またそれ」と言った。俺は相も変わらず、足を片方ずつビシィッと出したり戻したりして足を鍛えている。勿論、歩く練習もしているぞ。

 でもなぁ、やっぱ筋力が足らないと思うんだ。それで、毎日つかまり立ちをしてこうして鍛練しているって訳だ。その掛け声がまた可愛いと評判になっている。

 どこで評判になっているのかって? もちろん、父と母の間でだけだよ。

 

「あら、ラウ。またやっているのね?」

「ああちゃ!」


 その母がやって来た。おや? 今日はえらく御粧(おめか)ししているじゃないか。お出掛けするのか?


「フク、ラウを着替えさせてちょうだいな。あなたも準備してちょうだいね」

「はい、奥様」


 ん? 俺もなのか? どこにお出掛けなのかな?


「ああちゃ? あぶあばー」

「今日はね、お城に行くのよ。父様は先に行っているわ」

「あぶ」


 城かぁ。あれだな、俺が見事な高速ハイハイを披露した時以来だな。


「王妃様がね、ご懐妊されたのよ」


 とうとうか。そろそろじゃないかと思っていたんだ。

 王妃の懐妊。将来俺達家族を嵌める王女だ。王女の兄である王子は、確か俺より3歳上だったと記憶している。

 王子は良いんだ。俺の記憶では、優しいお兄ちゃんだったって印象がある。子供の頃に、遊んでもらった事があるんだ。

 子供の頃は王女とだって一緒に遊んだ。俺の方が少しだけお兄さんだったからな。

 王子や俺の後を付いてきていた。ふんわりとしたスカートを揺らしながら、トコトコと付いてきていた。あの頃はまだ可愛かったのになぁ。

 いつからあんなのになってしまったのか……。あんなのって言っても、大人になってからは接点もなく、滅多に会わなかったし、話す事なんてなかったのだけど。なにしろ、親戚と言えど相手は王女様だ。


「あぶう」

「あら? 坊ちゃま、行きたくないんですか?」

「あうぅ」


 おフクったら、何で分かるんだ? 俺は「あぶう」しか言ってないんだぞ。


「ふふふ、毎日ずっと坊ちゃまを見ていますからね。なんとなく分かるんですよ」

「ぶばー、あうあ、ぶぶう」

「ふふふ、お城が苦手なんですか?」

「あう」


 お着替えをしてもらいながら、ヒョイと手を上げる。

 なんだかなぁ、前の時も好きじゃなかった。だってさ、いくら親戚だといっても気を使うだろう? 相手は王族なんだ。


「あら、坊ちゃまだってそうですよ。王弟殿下のご子息なんですから」

「あぶぶ」


 そうだった。父はそんな感じじゃないというかさ。俺もそんな感じじゃないし。


「あぶばぶあー」

「フクから見れば、坊ちゃまも立派な王族ですよ」

「ぶぶぶぶ」


 そうか、まあ、そうなのだろう。


「らうみぃ、おでかけみゃ?」

「あぶば」

「みみがちゅいているみゃ」

「あばー」


 まだ生まれていないんだ。懐妊が分かったってだけだ。この先、どう育つかだ。

 だが、俺は覚えているからな。忘れてはいない。胸を剣で貫かれた事を。その時に聞かされた、王妃と王女の計画をだ。

 あんな風に育ったのは、王妃の影響だろうと思うのだ。今日はその王妃をじっくりと拝見しようじゃないか。


「あぶば!」


 ブンッと拳を上げる。嫌だ嫌だと言っていても、仕方がない。しっかり観察させて頂こう。

 そして不審な気配を察知したら、がっつりと調べさせてもらおうじゃないか。と、決意表明だ。


「あら、坊ちゃま。どうしました? 行く気になりましたか?」

「ぶばー、あぶば」

「ふふふ、よく分かりませんが、参りましょうか」


 おフクに抱っこされて母が待つ場所へと向かう。母は呑気にお気に入りの四阿にいた。

 いつもは動きやすい軽めのドレスを着ている母だが、今日はしっかりとドレスアップしている。こうして改めて見ると、べっぴんさんなのだ。


「あら、ラウ。可愛いわ」

「ああちゃ!」


 おフクの腕の中から両手を伸ばす。

 俺もフリッフリのベビー服に着替えさせられて、ヒョロヒョロっとしか生えていない髪まで梳かされていつもとは違った感じなのだ。

 可愛らしいベビーシューズも履かせてもらっている。

 何だったら、俺の超キュートなヨチヨチ歩きも披露するぞ。


「ふふふ、ラウ。どうしたの? もしかして張り切っているのかしら?」

「ああちゃ、あぶぶう」


 張り切ってはいない。だけど、王妃の様子を窺おうとは思っているぞ。


「いやだわ、何だか変な事を考えていなければ良いのだけど」

「ああちゃ」


 人聞きの悪い事を言う母だ。変な事とは何だよ。リサーチと言ってくれ。

 前の時には全く意識していなかったから、今回はしっかりとリサーチしてやろう。

 俺達一家を嵌めた王妃の本性を見極めてやろうではないか。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

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