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59ー鍛えよう

「ラウーッ!」


 そして走ってきた父は、そのまま俺をギュッと抱きしめた。


「あばー!」

「ラウ! 凄いぞぉッ! よく歩いた!」

「あなた! 一体何をなさっているの!?」


 母が珍しく走って出てきた。きっと窓から父の姿が見えたのだろう。上から父が落ちてきたんだ。そりゃ、驚くさ。

 もしかしたら、宙で一回転していたのも見ているのかも知れない。


「アリシア! ラウが歩いたぞ!」

「ええ、見ていましたわ。だからと言って、窓から飛び下りてどうするのですか!」

「これしきの高さなど、どうって事はない! それよりもラウだ!」


 はいはい、父はとんでもないやんちゃ坊主だな。アハハハ!

 きっと部屋を出て廊下を走り階段を下りるというのが、もどかしかったのだろう。

 そんな気持ちも嬉しいのだけど、やんちゃはもう程々にしてほしい。


「ああちゃ!」


 俺は両手を出しながら、母の方へと足を出す。


「ラウ、ゆっくりよ」

「ラウ!」


 フッフッフ、もう一度歩いているからな。コツは掴んだぞ。

 小さな足を、ヒョイと一歩出す。そして反対の足をもう一歩。また一歩。

 ヨチヨチとほんの数歩歩いて、俺は母の腕の中に飛び込んだ。


「ああーちゃ!」

「ラウ、凄いわ!」

「ラウー!」


 父が俺の後ろから、手を回す。母も一緒に抱き締められた。

 本当に、熱い父だ。何度も言うけど、どこが『氷霧公爵』だよ。

 だけど、こんな両親が俺は大好きだ。


「キャハハ! ああちゃ! ちゃーちゃ!」

「おう! 父様だぞぉッ!」

「キャッキャ! ああちゃ!」


 父に後ろから抱きしめられながら、俺は母の胸にスリスリする。母が一番なんだよなー。


「良い子だ。ラウは立派な男になるぞ!」

「ふふふ、元気で育ってくれればそれで充分だわ」

「ああ、そうだな」


 大きくなるよ。最低17歳までは生きられる。そこからが問題なんだ。

 それに5歳の時に受ける『鑑定の儀』だ。

 また今回も俺は大賢者と鑑定されるらしい。ミミもそうだと言っていた。

 それがなぁ、問題なんだ。せめて父と同じジョブにできないかな? 若しくは、大賢者というジョブを隠すとかさ。その事も、精霊女王に要相談だ。


「旦那様、奥様、そろそろ風が冷たくなってきます。中に入りましょう」

「そうね。フク、有難う」

「あら、何でしょうか?」

「ふふふ、フクが外に連れ出してくれたのでしょう? お陰で歩けたわ」

「まあ、そんな事など当然です」

「いや、フクがしてくれている事が、ラウの良い刺激になっているのだろう。これからも頼む」

「はい、旦那様。勿論です」


 邸の中に入るとミミが飛びついてきた。


「あぶぶぶ」

「らうみぃ! ろうしてみみをおいていくみゃ!」


 俺の顔面に張り付いている。羽がチクチクするって。足が俺の口に入っているじゃないか!


「あばば!」

「あらあら、ミミちゃん。ラウ坊ちゃまが苦しがっておられますよ」

「え? しょうみゃ?」

「あぶー」

「らうみぃ、みみをおいていくからみゃ」

「あばぶ」


 だってミミは爆睡していたじゃないか。


「らから、おこしてくれたらいいみゃ!」

「あば」


 起こしたって起きないじゃないか。いつもミミは爆睡だ。


「みゃみゃみゃ! しょんなことないみゃ!」

「あぶあー」


 そんな事あるんだよ。いつもそうだ。精霊女王に呼ばれた時だって爆睡だ。俺はその性格に感心するよ。俺なら無理だ。精霊女王に呼ばれたら絶対に起きるぞ。


「みゃ……しょれをいったらだめみゃ。きをつけるみゃ」


 今度は俺の頭に乗って肩を落としている。


「ももじゅーしゅのむみゃ」

「あぶ」


 桃ジュースかよ! どんな時でもそれなんだな。


「ももじゅーしゅをのんれ(飲んで)、げんきをだしゅみゃ」


 いつも元気じゃねーか。

 

「きもちのもんだいみゃ! らうみぃはみみの、でりけーと(デリケート)きもち(気持ち)りかい(理解)れきないみゃ!」


 はいはい、そうかよ。それと桃ジュースと、どう関係があるのか理解できないけどな。


「ラウ坊ちゃまもりんごジュース飲みますか?」

「あう」


 ヒョイと手を上げる。おフク、また明日も庭に出たいな。やっぱお外は良いよ。


「ぶばー、あうあ」

「また明日もお散歩しましょうね」

「あう」


 そうだよ、良く分かるな。ちょっとずつ歩く練習をしよう。

 魔法の練習だけじゃなくて、身体も鍛えないとな。何が起こっても対応できるようにさ。

 あの父の身体能力だよ。あれは凄いぞ。俺もああなりたい。


「ちゃーちゃ」

「おう、ラウ! 父様だぞ!」


 いや、そこじゃない。さっき3階から平気で飛び降りていたじゃないか。それって身体強化とかしてんのか?


「あぶあー、あうあぶ」

「んん? 全然分からんぞ!」


 そうだよな、俺の言いたい事が分かるのはおフク位だよ。


「坊ちゃま、フクもそこまでは分かりませんよ」


 え、そうなのか? 今迄完璧だったのに。


「らからみみがいるみゃ。わしゅれたらだめみゃ」


 そうだった。なら、通訳してくれよ。


「しょんなことしなくても、みみにはわかるみゃ」


 ええー、そうかなぁー。だってミミだからなぁー。


「らうみぃはひろいみゃ!」


 そう言いながら、パタパタと羽で叩いてくる。やめろ、チクチクして痛いんだよ。

 分かっているなら教えてくれよ。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


明日は投稿をお休みすると思います。

申し訳ありません!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 父様が窓から飛びを降り、その後に母様がラウちゃんの所に駆け寄りご対面。そりゃ母様もビックリだ‼️よね。でも1番嬉しいのは、ラウちゃんが歩けた事・:*+.\(( °ω° ))/.:+ [一言…
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