54ー同じ種族
こんな事、前の時は思いもしなかった。仲が良いとかどうとか、気にしなかった。
俺って、冷たい奴だったのかな。
いや、二度目だからこそ見える事なのだと思いたい。
ま、取り敢えず食べよう。
「あばー」
「坊ちゃま。沢山食べてください」
「あう」
パン粥にチキンペーストがトッピングされている。
デザートはりんごを甘く柔らかく煮たものだ。俺、これ好き。
「あむ……」
「ももじゅーしゅは、おいしいみゃ」
また桃ジュースかよ。よく飽きないな。
「らうみぃらって、しょのりんご、あきないみゃ」
「あぶ」
まあ、そうなんだけどさ。
スプーンを握り締め、ヨイショとパン粥を掬い大きなお口をあけてあーんと食べる。
「んまんま」
「美味しいですか?」
「あうぅ、んまんま」
モグモグと一生懸命食べる。小さな乳歯で噛んでいるつもりが、口の端から出ていたりするのは何故だ?
「あらあら、拭きますよ」
「ぶぶぅ」
おフクがすかさず拭いてくれる。
「ふふふ、ラウも沢山食べられるようになったわね」
「可愛いぞぅ」
父は喋る度に、氷霧公爵のイメージが崩れるから気を付けた方が良いぞ。
「んまんま」
「フク、ラウは美味いと言っているのだな?」
「はい、そうですよ。最近覚えられたみたいです」
「なのに何故、父様と言えない」
「ふふふ、一度呼ばれてますから大丈夫ですよ」
何が大丈夫なのか分からないけども。それって結構俺にはプレッシャーなんだぞ。
そんな事を考えながらも食べる手は止めない。
「んまんま」
「あまり溢さなくなったわね」
「ええ、お上手です」
「いや、口から零れているじゃないか」
「あなた、それは仕方ないわ。まだ赤ちゃんなのですよ」
「ああ、分かっているぞ」
そんなにみんなで俺を見るんじゃないよ。緊張するじゃないか。
ふぅ、さて俺はりんごを食べるかな。甘くて美味しいんだ。
「ごー」
「はい、りんごですね」
「んま」
「ふふふ、坊ちゃまはお好きですね」
「あう」
見な、おフクと会話できているぞ。凄いと思わないか?
俺はまともに喋れないのにさ、よくおフクは理解できるな。
「みみもわかるみゃ」
「ぶぶぅ」
ミミはいいんだよ。それ以前に念話ができるじゃないか。いや、俺の考えている事が分かるだろう?
「みみは、しぇいれいらからみゃ」
「あぶ」
「ラウ、朝食の後は会議だ」
また魅惑のバリトンボイスで当然の様に父が言った。だからさ、何度も言っているけど俺は赤ちゃんなんだ。会議に出席しても仕方ないだろう?
まあ俺は、情報が得られるから良いんだけど。
「あう!」
だから元気よく手をあげてお返事しておいた。
「今日こそは父様と呼んでくれ」
それと会議とは関係ないな。うん、りんごを食べよう。
「ラウ、スルーするんじゃない」
「あぶぅ」
なかなか鋭い事を言うね。ふむ、やっぱりんごは美味い。
「ラウ、父様は呼んで欲しいのよ」
「あう」
そんな事は分かっているぞ。でも言えないんだから仕方ない。
一生呼べない訳じゃないんだしさ。いいじゃん。
「ラウ、一日も早く呼んでほしい」
ジッと見られた。訴えるように、めっちゃじーッと見られている。眼力がハンパない。
「ああちゃ」
「ふふふ、そう見られても言えないものは仕方ないわよね」
「あぶ」
その通りだ。でも気持ちは受け取ったぜ。うん、善処する。
「あうあ」
「ラウ、早めに頼む」
「ぶぶぅ」
まあ、頑張るさ。
さて、そんな朝食はいいんだ。それよりも、父はあんな呑気な事を言っているが、ちゃんと裏では進めていた。何をかって? 拘束した奴等の取り調べだ。
最初に襲撃してきた男達、総勢8名だった。たった8名だ。いや、この国に秘密裡に8名も入っているんだ。少なくはない。
それでも、この邸を落とそうと思ったら8名だと少ないだろうと俺は思う。
だって、メイドさんまで戦えるらしいのだから。
何より、俺みたいな赤ちゃんにやられているんだ。それってどうなの?
「らうみぃ、ちがうみゃ。らうみぃはふちゅうじゃないみゃ」
「ぶぶぶ」
俺が異常みたいに言うな。ちょっと前の記憶があるだけじゃないか。
「しょれが、ふちゅうじゃないみゃ」
「あば」
まあ、そうか。そんな奴、今までに会った事ないな。
「しょりゃしょうみゃ。らうみぃらけみゃ」
どうして俺なんだろう? やっぱあれか? 最後に悔しいと強く思ったからか?
「もちろんしょれもあるみゃ。けろ、らうみぃは、しぇいれいじょうおうのおきにいりみゃ」
「あぶ」
お、おう。前の俺から知っているらしいしな。あれ? それってストーカーっていうんじゃね?
「みゃみゃみゃ! らうみぃ、しょんなこといったらだめみゃ!」
「あう」
冗談だよ。またチャンスを貰えて有難いと思っているさ。
「ふゅぅ~、びっくりしたみゃ。きかれたら、どうしゅるみゃ」
「あぶぶ」
精霊女王は優しいし、冗談だって分かってくれるさ。
また脱線したじゃないか。その拘束した奴等だ。男達は呪詛を使えなかった。髪色も真紅ではない。どうやら、同じ種族でも使える者とそうでない者がいるらしい。
それで髪色が、真紅になるかどうかなのかも知れない。
なかなか全部は、まだ聞き出せていないようだ。
そして、例の女だ。
こんな感じの事が会議で報告された。
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