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51ー潜入捜査の報告

 サイラスさんは、隙がないとはこの事だ。まるで後ろにも目が付いているのではないかと思うくらいに、全ての動作に無駄がない。

 きっとこの人はかなりできる人なんだ。その人が呪詛を掛けられてしまうなんて、一体どういう状況だったのか。

 それから詳しくサイラスさんが報告をした。

 伯爵家で執事見習いとして潜入したサイラスさん。邸の女性の瞳を確認していたらしい。

 先にメイドとして潜入していた者と一緒にだ。メイドの中にはローズ色の瞳の者はいなかった。そこで一介のメイドでは、近寄る事ができない立場の女性をサイラスさんが確認していた。

 と、言ってもそう人数がいる訳ではない。侍女長や伯爵の客等を玄関で出迎え客間に通しお茶を出し、そんな状況で確認していた。

 そしてとうとうローズ色の瞳の女性を見つけた。やはり髪色を変えていたのか。そんな事を思っていたら突然身体に力が入らなくなった。

 サイラスさんは諜報員だとバレるような事をした訳じゃない。だが、瞳を確認したと気付いたのだろう。

 それだけで呪詛を掛けてきた。サイラスさんと一緒に潜入していた者が、異変に気付き共に邸から離れた。と同時にメイドとして潜入していた者も密に邸を出た。と、いう事らしい。

 だが、こっちの情報を抜かれていた。だから昨日襲撃してきたんだ。

 サイラスさんが呪詛に掛けられて味方に助け出される間、どれくらいの時間が経っていたのかだ。

 

「自分には全く記憶がないのです。どうやって伯爵邸から撤退したのかも覚えておりません。申し訳ありません」

「呪詛を掛けられていたのだ。仕方がない」


 そうだ、抗えないのだろう。


「昨日捕らえた者達と、あの女性で全員なのかどうかだが」

「はい、昨日捕らえた者達をごう……ごほん、尋問しております。それで明確になると思うッス」


 アンジーさん、今『拷問』と言いかけたよな? 怖い怖い、拷問してるんだ。

 もしも捕まったら、ただではいられないだろうと覚悟はして来ているだろう。

 全員命を奪うことなく無力化しているんだ。この邸の人達の能力は高い。

 だけど俺は、現在はもちろん前の時でもそんな事を全然知らなかった。

 父は今までにもきっと、危ない仕事をしてきたのだろう事が伺える。


「ああちゃ」

「ラウ、どうしたの?」

「ああちゃぁ」


 心配だよ、そう思って母にしがみ付いた。


「あらあら、大丈夫よ。もう安全よ」

「ああちゃ」


 そうじゃない。そうじゃないんだ。母は平気なのか? こんなに危険な仕事をしている父と一緒にいるんだぞ。


「ああちゃー」

「あらあら、どうしたのかしら?」

「らうみぃは、しんぱいなのみゃ」

「え? もう心配いらないわよ?」

「しょうじゃないみゃ。ちちしゃまはきけんなことを、しているみゃ。らから、しんぱいなのみゃ」

「まあ、ラウ。私達の心配をしてくれているのかしら?」

「あばぁ、ああちゃ」


 心配だよ。でも俺が守るからな。今世こそは絶対に。

 そう思っていると、母ごとふわりと抱きしめられた。父だ。


「ラウ、私が守る。確かに私は危険な仕事も多い。だが、アリシアやラウは私が守るぞぉッ!」

「ああちゃ」

「父様だ、ラウ」

「ああちゃッ」

「ああぁーッ! また駄目なのかぁーッ! 一度呼べていただけに、悔しいぞぅッ!」

「ああーちゃッ!」


 もう意味が分からない。折角良い事を言っていたのに台無しだ。

 だが、父よ。頼んだぞ。俺も守るけど、父も頑張ってくれ。

 サイラスさんがいつどうやってこっちの情報を抜かれたのか、それもあの女性の意識が戻るとまた父の部下が取り調べをする事だろう。

 呪詛を封印できているのだから、こっちの方がずっと有利だ。

 しかし、良い度胸をしている。女一人でこの邸に乗り込んで来たんだ。それだけ自信があったのだろうけど。呪詛だけじゃなくて、魔法も使えたみたいだし。

 だが、前日に自分の仲間が戻らなかったんだ。そこで失敗したのだと分かるだろう?

 なら自分一人が乗り込んで、上手く行くかどうか位は予測ができたはずだ。それでも乗り込んで来た。それは度胸だけなのか?


「あの女性も取り調べしますよ。フェン、協力してくれるッスよね?」

「おう! 当然だぞ!」


 そんな良い返事をしているフェンだけど、またおフクに桃ジュースを貰って飲んでいる。


「みみもほしいみゃ」

「ミミちゃんは一度に沢山飲むでしょう? だからまた後でです」

「わかったみゃ。しかたないみゃ」


 え、桃ジュースくらいで、そんなに肩を落とさなくてもいいんじゃないか? それ程の事なのか?


「なにいうみゃ、らうみぃ。ももじゅーしゅはだいじみゃ!」

「あばー」


 そうかよ、そんなになのかよ。まん丸な身体の、何処が肩なのかは定かじゃないけど。それでも項垂れているのは分かる位に残念がっていた。

 これは是非とも精霊界にあるピーチリンを食べてみたいな。


「とってもとってもおいしいみゃ。きっとびっくりしゅるみゃ」

「あぶあ」

「らうみぃも、だいしゅきになるみゃ」

「あばー」


 じゃあ今度精霊女王に会った時に貰おうぜ。


「みゃみゃみゃ! そのてがあったみゃ!」

「あば」


 もしかして思いつかなかったのか? やっぱミミって抜けてるんじゃないか?


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 感動する場面なのにラウちゃんとミミ会話は、なんか違う気がするのですが。???〜落ち着く所がモモジュース❓ [一言] 精霊界のピーチリン食べてみたい٩(^‿^)۶ (ニュージーランドで出会え…
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