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50/217

50ーミミは何が得意?

 襲撃騒ぎも、俺の転移によって幕を閉じた。

 ちょっと予定外の事もあったけど、概ね結果オーライだ。

 それよりも、あの女性は単身で突っ込んで来たんだ。その事に俺は驚いた。

 いつものメンバーに潜入していたサイラスさんを加えて、例の会議室に集合している。

 サイラスさんは執事見習いとして潜入していただけあって、この邸の執事ノーマンと並んでいる。

 こうしていると、まさか諜報員だとは思えない。優秀な執事さんに見える。


「あばー」

「坊ちゃま、りんごジュースですよ」

「あう」

「みみは、ももじゅーしゅがいいみゃ」

「はい、用意してありますよ」

「ありがとみゃ」


 なんだか俺の周りだけとってもファンタジーなんだけど。何故かと言うと、今日はリンリンとフェンも姿を現している。

 桃ジュースを貰おうと、おフクの側にいるからだ。

 俺は薄めのりんごジュースを貰う。

 取っ手付きのコップに入ったりんごジュースを、ストローでちゅうぅと飲む。

 ふっふっふっ。自分でコップを持って飲めるようになったのだよ。俺の成長は、ボーッとしていると見逃してしまうぜ。


「らうみぃ、いみふめいみゃ」

「あば」


 俺は日々進歩しているって事だ。


「しょうみゃ? わからないみゃ」

「ぶぶ」


 そうかよ。ミミには分からないだろう。日進月歩ともいうぞ。


「ラウは可愛いわぁ〜」

「おう、俺はカッコいいけどなッ!」

「あばー」


 俺はこれからかっちょよくなるんだよ。


「で、まだ意識が戻らないか?」


 と、いつものバリトンボイスで父が言った。耳に心地良い声だ。こうして落ち着いていると、クールに見えるんだけど。


「まだです。医師にも診せましたが、心労が重なっていたらしくて、暫く目を覚さないだろうと言ってました」


 アンジーさんが答えている。


「心労が?」

「はい。最近は俺達が動いてましたから、思い通りにいかない事もあったんじゃないでしょうか?」

「それにしては、大胆だったな」

「昨日襲撃者達を取り押さえましたから、もう後がなかったんでしょう」


 なんと正面から堂々と邸に入ろうとしていたらしい。だが、門には門兵が立っている。

 それに止められ、無理矢理入ろうとしても目に見えないシールドに遮られ、何があるんだと魔法で攻撃してみたら跳ね返され。

 その騒ぎで邸から人が出て来た。皆使用人の格好をしているものだから、きっと楽勝だと思ったのだろう。

 ところが全員手練れだった。仕方なく呪詛を使いなんとか突破しようとしていたところに、突然現れたプリティな赤ちゃんにやられちゃった訳だ。


「フェン、呪詛封じはどれくらい保つんだ?」

「おう、今は取り敢えず丸3日だ」

「あばぁ?」


 取り敢えず? 呪詛封じ?

 なんとフェンが、呪詛を使えないようにしているのだ。だから皆落ち着いているんだな。

 目を覚ましたら、どうするのかと思っていたんだ。


「ぶぶぅ」

「はい、ご馳走様ですか?」

「あう」


 美味いね、りんごジュース。


「ももじゅーしゅを、おかわりしたいみゃ」

「また後で飲みましょうね」

「しかたないみゃ」

「ミミったら」

「らって、おいしいみゃ」

「そうね、ふふふ」


 うん、やっぱリンリンの方が落ち着いていて、お姉さんに見える。桃ジュースを飲むのだって、ミミみたいな飲み方はしない。

 ミミは貰ったら一心不乱に飲む。必死で嘴で突いて飲むんだ。でもリンリンは優雅に少しずつ飲む。

 鳥さんと人型の違いもあるのだろうけど。


「けぷッ」

「あらあら、坊ちゃま飲みすぎましたか?」

「あぶあ」


 そんな事ないぞ。ちょっとゲップが出ちゃっただけだ。


「呪詛封じは最長でどれくらいできるんだ?」

「永遠にだぞ」


 なんだって? 永遠に封じる事ができるという事なのか?


「俺達精霊の力を見くびってはいけないぞッ! 呪詛くらい、いくらでも封じてやるぞ」


 フェンは凄いんだな。うちのミミとトレードしないか?


「らうみぃ! ひろいみゃ! みみもしょれくらい、れきるみゃ!」

「あぶぶ」


 はいはい、冗談じゃないか。ミミも一応精霊なんだから、フェンと同じようにできないとな。


「ラウ、そんな事ないのよ~」

「あば?」


 りんりん姐さん、そうなのか?


「そうなのよ~。精霊にも得手不得手があるのよ~ぅ」

「あぶあ」


 ならミミは何が得意なんだ? 今のところ得意な感じの事をした事がないぞ。


「ミミはちゅかれたみゃ。ももじゅーしゅのおかわりがほしいみゃ」


 ミミは桃ジュースの事ばかり言っている。

 そろそろ得意な事を披露してもらいたいものだ。


「ラウ、いらっしゃい」

「ああちゃ」


 母が抱っこしてくれる。俺、こんな会議には場違いだからさ、次から欠席って事で良いかなぁ?


「今日はラウのお手柄だったわ」

「そうだな、ラウ。よくやった」


 父が側に来て頭を撫でてくれる。えへへ、そうだろう? 俺、今日は頑張ったぞ。


「だが、ラウ。ラウの能力は秘密だと言っていただろう?」

「あぶぅ」

「そうよ、ラウ」

「サイラス、そういう事だ。ラウの事は秘密だ」

「はい、承知しました」


 サイラスさんが頭を下げた。片方の手を胸にやり、45度程の角度で腰を折っている。

 背筋がスッと伸びて、背中から頭の先まで一直線になっている綺麗な礼だ。おまけに今は髪をきっちりと撫でつけ、執事服を着ているものだからどこからどう見ても執事さんだ。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずミミは、食いしん坊さんですね。あんま桃ジュースばかり飲んでいると精霊でもお腹壊しますよ。何時になったらミミの活躍が見れるやらσ^_^; [一言] また公爵家に優秀な人が増えました…
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