49ー態とじゃないよ
「あば!」
「ラウ!」
シュンッと俺は気合いを入れて転移した。どこへかって? 決まっているじゃないか。真紅の髪の女性の真上だ。
直ぐそこに見えているんだ。だから楽勝だぜ。
「らうみぃ! びっくりしゅるみゃ!」
「あば!」
ちゃんと真紅の髪の女性の真上に転移した。それは良いのだけどさ。
ちょっと力んで転移したものだから、つい……出ちゃった。エヘッ。
何がって? オムツの中、ちょっとお尻の方が生温かくなっちゃって気持ち悪い。まだ0歳児だから許してほしい。
「らうみぃー! しんじられないみゃー!」
「あばばば!」
マジか! 出ちゃったぞー! と、思いながら、そのまま俺は女性の顔面にガシィッと両手足でしがみついた。
両手で女性の頭を掴み、両足は首に絡ませた。気になるお股は丁度口や鼻の辺りだ。お尻の方じゃなかったからまだ良かったね。うんうん。
「やだッ! くっさッ!」
「あばー!」
そのまま、ドドーンと重量魔法で重さを加える。どうだ? 立っていられないだろう?
「え、え!? キャアーッ!」
「あばばば」
女性は叫び声を上げながら尻餅をつき、そのまま気を失って倒れた。
よし、今だぞ! と、顔を上げたらそこに鬼の様な形相の父が立っていた。
「ラウゥーッ!」
「あばッ!?」
父が俺の脇を持って抱き上げると、周りを取り囲んでいた者達が女性を拘束していった。よし、無事に拘束できた。
そして俺は泣き叫ぶ。だって出ちゃったから。
「ふ、ふぇ、ふぎゃー! あぎゃー!」
おフク! 拭いてくれ! おフクはどこだー!?
「ラウ、お前は……匂うぞ」
だから出ちゃったんだって。本当、間の悪い。てか、かっちょ悪い。全然決まらないじゃないか。
なんなんだよ、俺だってそんなつもりはなかったさ。ちょっと力んじゃったから。
父に抱えられ、邸に戻るとおフクが待っていた。
俺の泣き声で、察したのだろう。
「坊ちゃま、オムツ替えましょう!」
「ふぎゃ、ふぎゃ、あぎゃー」
「はいはい、直ぐに替えますからねー」
おフクの側には、呆れた様な顔をした母がいた。
あ、やべ。叱られちゃうかな?
「もう、ラウったら」
「アリシア、ラウが匂うぞ」
「そりゃそうでしょう。出ちゃったんだわ。張り切り過ぎなのよ」
「らうみぃ、かっちょわるいみゃ」
「あぶぅ」
かっちょ悪いって言うな! まさかあんな場面で出ちゃうなんて予想外だ。
「あぶあー……」
それからちゃんとおフクにオムツを替えてもらった。
しっかりプリプリなお尻も拭いてもらって、ふぅ~、すっきりした。
「らうみぃ、しゅるならしゅるって、さきにいってほしいみゃ」
「あば?」
ん? だからするつもりはなかったんだ。出ちゃったといっただろう?
「しょれじゃないみゃ! てんいしゅるならさきにいってほしいみゃ」
おう、そっちなのか。だってどうせミミは、何もする事がないじゃないか。
「しょんなことないみゃ! みみもれきるみゃ!」
「あぶあ」
はいはい、でも何もしなかったじゃないか。
「しょれはきゅうに、らうみぃがてんいしゅるからみゃ」
いやいや、行くぞって言ったぞ。俺達の出番だってな。
「びっくりしたみゃ。みみはちゅかれたみゃ」
「あばー」
なにもしていないのに。
「いっしょにてんいしたみゃ」
俺の肩に乗っていたからな。
「ラウ」
あ、母だ。絶対に怒られるぞ。でも、俺は後悔していないからな。いや、出ちゃった事は後悔している。
そんな俺は、母にギュッと抱きしめられた。
「ああちゃ」
「もう、無茶はしないでちょうだい。母様は心配なのよ」
「ああーちゃ」
「ラウにもしもの事があったらどうするの? 母様は生きていけないわ」
ああ、ごめん。そうか、心配掛けちゃったんだ。
叱られるとばかり思っていた俺は、母の気持ちが分かっていなかった。
自分の子供が目の前でどうにかなるかも知れないと、母にとっては恐怖だったんだ。
それこそ、あんな女性が襲撃してくるのなんかよりずっとだ。
「ああーちゃ……」
「ラウ、本当に二度とこんな事はしないって、母様と約束してちょうだい」
「あぶぅ」
「ラウ」
「ああちゃ、ああちゃ」
俺は思わず母にしがみ付いた。ごめん。心配掛けてごめん。
でも、俺は約束できないんだ。今回は全力で守るって決めているから。
絶対に守るから。だから、許して欲しい。必ず、母の元に帰ってくるからさ。
「ラウったら」
「ああちゃ……ふぇ……ふぇーん」
「もう、仕方ないわね。泣かないの。母様は怒っているのじゃないのよ」
「ああちゃー」
分かっている。分かっているんだ。
「ラウ、お手柄だ」
父がアンジーさんと一緒にやって来た。
あの女性はどうしたんだ? 意識が戻ったら、また呪詛を掛けられるんじゃないのか?
「あぶぅ」
「ラウ、父様だ」
「ああちゃ」
「んん? 父様だ。言えただろう?」
「ああちゃ!」
「あら?」
「ラウ、父様と呼んでくれないか?」
「ああーちゃ!」
「まあ、ふふふふ」
「ラウゥーッ! どうしてだぁーッ!」
アハハハ、熱い父だ。こんな両親が俺は好きだよ。
また、父様とは言えなくなっちゃったけど。
「ああちゃ」
「ええ。母様よ」
「ああーちゃ!」
まあ、またその内言えるようになるさ。
お読みいただき有難うございます!
今日の投稿はとっても不安なのですが(-。-;
因みに心が折れるので、苦情は受け付けておりません。m(__)m
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宜しくお願いします。