48ー出番だ
「これは、ほのおみゃ。まほうみゃ」
ほう、なかなか面白い事をしてくれるじゃないか。ふっふっふ。
邸の中にいた者達が外へと急ぐ。おフク俺も行くぞ。
「坊ちゃま、危険ですからね」
そう言って、おフクは玄関とは反対方向へと急ぐ。
いや、違うんだよ。外に行こうぜ。
「坊ちゃま、駄目ですよ。転移しないでください」
「あばー」
先に言われてしまった。でもな、これはもう放っておけないんだ。
ここで放っておいたら、また来るぞ。これで二度目なんだぞ。
「ラウ! めって言ったわよ!」
「ああーちゃ!」
あ、母までやって来た。リンリンも姿を現している。
「あぶあー」
「しーるろは、らいじょぶみゃ。じぇんじぇんなんともないみゃ」
「この程度で壊せるわけないじゃない~」
ミミやリンリンも、全然平気そうだ。
「ラウ、他の者に任せておけば良いのよ」
「ああーちゃ」
母に手を伸ばす。その時だ、またあのおまぬけな音が。
ピロロンピロロンと邸に響いた。
「あら~、また攻撃しているのね~」
え、そんな感じで良いのか? とっても呑気にしているが。
「だから大丈夫なのよ、ラウ」
「あぶ」
おフクの腕から、母に抱っこされた。
「人の手で簡単に壊せるシールドじゃないわ」
「そうなのよ~」
「あば」
そうなのか? 流石、リンリンとフェンの二人の力で張っているシールドだ。
でもどうなっているのか、ちょっと見てみたい。
「ああーちゃ」
外に行こうと母の腕の中で、身体を動かす。
「だから、ラウ。めっていったでしょう?」
「ああちゃ!」
外からは女性の声が聞こえてきた。何かを叫んでいる。
え? もしかして、たった一人で乗り込んできたのか?
元大賢者としてはさぁ、いやそうじゃなくても自分の家を襲撃されているんだ。
放っておけないだろう? 赤ちゃんなんだけど。
俺は今回は必ず家族や大切な人達を守ると決めているんだ。それも全力でな。
「あぶぶ」
「ラウ、めッ」
「ああちゃ」
俺は母の胸をトントンと叩く。大丈夫だと。
「駄目、ラウはまだ赤ちゃんなのよ。めって言ったでしょう」
「ああーちゃ、あうあーぶぶう」
「アリシア! ラウ!」
父だ。父も外に出ていたらしい。玄関の方から走って来る。
「あなた、どうなのですか?」
「ああ、邸は大丈夫だ。リンリンとフェンのシールドを破れはしない。だが、呪詛を使うんだ」
「まあ、あの女性ですの?」
「ああ。真紅の髪をしている」
おう、髪の色が元に戻っているのか?
「たった一人で何を考えているのか。武力ならこちらの方が上だ。だが、あの女は呪詛を使う。それがやっかいだ。近寄れん」
「まあ、鬱陶しいわ」
ほら、鬱陶しいだろう? だからさ。
「ちゃーちゃ!」
「……!!」
「まあ!」
「ラウ! 今、父様と呼んでくれたかぁッ!?」
「ぶうー、ちゃーちゃ!」
「そうだ! ラウ、父様だぁッ!」
そんな事を言っている場合じゃないんだ。
俺は父に両手を出す。
「よし! 父様が抱っこしてやるぞぅッ!」
「ちゃーちゃ! あぶ!」
ビシィッと外を指さす。外に連れて行けと。
「ラウ、それは駄目だ。お前はまだ赤ちゃんだ。ラウの能力も秘密なんだ」
「ぶぶぶー」
「ぶーじゃない。駄目なものは駄目だ」
「ちゃーちゃ! あぶあ!」
俺まだ転移に自信がないんだ。見えているところだったら完璧に転移できるはずだ。
だから、外に連れて行ってくれ。
身体を捩らせながら、外へ行ってほしいと父に訴える。
「ラウ、仕方ないな。見るだけだぞ」
「あなた、ラウは転移しますわよ」
「大丈夫だ。もし何かあっても、邸の者しかいない」
「でも、あなた」
よし、父の方が甘いんだ。こんな時は母の方が用心深い。
それに、母はよく分かっている。もう俺が転移しようとしていると、しっかりバレている。
流石、母だよ。
「ラウ、ここまでだ。邸の外へは行けないぞ」
「あぶ」
父が玄関に出てくれた。開け放ってあるから、邸の門の外で人が真紅の髪の女性を取り囲んでいるのが見える。
見ていると、うちの使用人だろう男性が一人突然崩れる様に倒れた。
「あば!?」
「あれが呪詛だ。ああやって呪詛を掛けてくるから近寄れないんだ」
「あぶう」
なるほど、だから皆遠巻きに取り囲んでいるのか。
なら、どうするんだ? 手が出せないじゃないか。
「あうあー」
「ミミ、ラウは何を言おうとしているんだ?」
「ちかよれないのを、ろうしゅるのかっておもってるみゃ」
「時間を掛けるしかない。無限に呪詛を掛けられるわけじゃないだろう」
「あぶう」
「あれは、うっとうしいみゃ」
「だろう、呪詛なんて隣国のあの種族しか使わないんだ」
なるほど、だから対応策もなかなか無いという事だ。
「ラウ、もう分かっただろう? 邸は大丈夫だ」
「あぶあ」
そうだろうけど、あれじゃあ埒が明かない。どんどん人が倒されていくじゃないか。
ほら、言ってるそばからまた一人倒されたぞ。
「近寄り過ぎるんじゃない! 距離をおくんだ!」
父が玄関から指示を出す。
よし、あいつか。あの真紅の髪の女性だな。
向こうも後が無いのだろう。髪を振り乱して抵抗している。
「あうあー」
「え? らうみぃ」
ミミ、行くぞ。俺達の出番だ。
「なにしゅるみゃ!?」
「あぶぶ」
しっかり掴まっていればいいさ!
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