47ー母が!?
結局、意味の分からないうちに報告会は終わった。
伯爵家に髪色を変えた女性がいた事。瞳の色は流石に変えられないらしく、ローズ色の瞳だった事。
そして、こっちの手の者が呪詛をかけられて助け出された。その時にどれだけの情報を抜かれたかだ。
襲撃があった事から考えても、誰の命で動いているのかは、バレているのだろう。
だからと言って、父は王弟だ。この国の王の弟で王族だぞ。そんな父の邸に襲撃しようなんて、普通なら考えない。
国際問題にまで発展しても、おかしくない。下手したら戦だ。なのに、白昼堂々と襲撃してきた。
それだけ自信があるのか、又はそれだけ追い込まれているのか。どっちだ?
「あら、ラウ。難しいお顔しているわね」
「ああちゃ」
邸への襲撃騒動も落ち着き、呪術を掛けられた諜報員もリンリンの解呪で無事に回復した。
俺は母と呑気に四阿でまったりとしていた。
「お外でのんびりお茶を頂きたいわ」
との母の希望があったからだ。
騒ぎが落ち着いたとはいえ、どこかピリピリとした空気の邸。母は多分、それを俺に気付かせたくなかったのだろう。気付いているんだけどさ。
だから俺がいつもの考える時のポーズでいると、心配そうな顔をしている。
いかん、母に心配かけたい訳じゃないんだ。
「ああちゃ」
「はいはい。ラウはまだ赤ちゃんなのよ。難しい事は父様が考えるわ」
「あば」
そう言って俺をふわりと抱きしめてくれる。母の腕の中は温かい。俺の安全地帯だ。
無条件でそう思える。赤ん坊にとって、母とはそんな存在なんだ。
「ああーちゃ」
「ふふふ」
母の胸元に自分の頭を擦り付けて甘える。
「らうみぃは、あまえんぼうみゃ」
母と子の穏やかな時に、余計な一言を言うんじゃない。ミミは場の空気を読むって事を考える方が良いぞ。
「なんみゃ? むじゅかしいこと、いうなみゃ」
「あば」
はいはい、分からないならいいよ。
その日は何事も起こらず平和に過ぎていった。
襲撃があったというのに、俺やミミも夜はぐっすり眠っていた。
精霊女王に呼ばれる事もなく、オムツを替えてもらう事もなくだ。
翌朝、流石に出ちゃった。
「ふぎゃー、おぎゃ、あぎゃー!」
「あらあら、はいはい。坊ちゃま、おはようございます」
おフク、朝イチから悪いね。
「オムツ替えましょうね」
「あぶぅ、ぶばー」
「はいはい、フクですよ。よく眠れましたか?」
爆睡だったよ。邸も何もなかったみたいだな。うん、平和が一番だ。
そういえば前の時にも、襲撃なんて事があったのだろうか? 俺はまだ赤ちゃんだったから覚えていないけど。
「はい、できましたよ。朝食を食べに行きましょうね」
「あうあー」
「みみは、ももじゅーしゅみゃ」
「はい、用意してありますよ」
ミミは桃ジュースしか飲まないのか? 他のジュースはどうなんだ? りんごジュースも美味しいぞ。
「ももがいいみゃ」
「あうあー」
あれか? 精霊界にあるピーチリンか?
「おいしいみゃ」
「あぶ」
「とってもとってもおいしいみゃ。ももじゅーしゅより、おいしいみゃ」
そうかよ、一度食べてみたいものだ。
「しぇいれいかいに、くるといいみゃ」
「あば?」
俺が行けるのか? 精霊じゃないぞ?
「ろうしてみゃ? ありしあしゃまも、きたことあるみゃ」
「あぶあ!?」
なんだって!? 母様が!? ここにきて、とんでもない事が発覚したぞ。
ミミ、どうして今まで言わなかったんだ?
「らってきかれてないみゃ」
ああ、そうだった。ミミはそういう奴だったよ。
「なんですか? ミミとお喋りですか?」
「あうあ」
おフクに抱っこされて俺は移動する。ハイハイで行ってもいいのだぞ。
「ラウ坊ちゃまは、もう直ぐ歩けそうですね」
「あぶ」
そうだろ、そうだろう? 俺もそう思うんだ。毎日足の筋肉を鍛えているしな。
「あば」
「らうみぃ、とぶほうがはやいみゃ」
なんて、おフクに抱っこされている俺の肩に乗っているミミが言う。
なら、どうしてミミは飛ばないんだよ。
「みみはらうの、しょばにいるみゃ」
「あぶあ」
意味が分からん。飛んだって側にいられるじゃないか。
そんな平和な会話をしていたんだ。もうすぐ食堂だという場所まで来た時だ。
俄かに外が騒がしくなって、邸の中にいた使用人達がバタバタと玄関の方へ走って行く。
「あぶあ」
「あら、騒がしいですね」
「みゃみゃ? しーるろがみえないみゃ!?」
ミミ、何か分かるのか?
「らいじょぶみゃ、しーるろがこわしぇるわけないみゃ」
「ぶぶぶ」
攻撃されているのか?
「しょれほどじゃないみゃ。ましゃか、しーるろがあるなんて、おもわないみゃ。はいってこれないみゃ」
ほう、じゃあシールドの中にいれば大丈夫って事か?
「なかは、らいじょぶみゃ。けろ……」
と、ミミが話している途中でピロロンピロロンピロロンと、少しおまぬけな音が邸に響いた。何だ、この音は? どこで鳴っているんだ?
「あんなのれ、リンリンとフェンのしーるろはこわしぇないみゃ」
「あぶあ?」
壊そうとしているのか? シールドは見えないんだろう?
「しょうみゃ。みえるわけないみゃ。このやしきにひをちゅけようとしているみゃ」
ああ、なるほど。
邸を攻撃しようとして、シールドに当たっているという事か。それであの音なのか? 再考する方が良いぞ。緊張感も何もないじゃないか。
お読みいただき有難うございます!
なんとかなりそうな感じ…山場は越したと思いたい。
あとはSSだぁ。(-。-;
宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。