42ー浮いちゃった
「らうみぃ、くりゅみゃ」
「ぶぶ」
俺は身体の中で魔力を練り始める。
いつでも魔法を発動できるように、身体の中を巡らせる。
カーテンの向こう側から、シュンッと何本もの投げナイフが飛んできた。
――カン! カン! カーン!
それらは俺に届かずに、ミミが展開したシールドに跳ね返された。
0歳児の赤ん坊なんて、ちょろいと思っていたか? 甘いな、俺はただの赤ちゃんじゃないんだよ。
ここに入って来た事を後悔させてやるぜ。
「あぶあー」
小さな手を出し、ナイフが飛んできた方へ向ける。
俺はカーテンの向こうにいるだろう侵入者に、水鉄砲を放つが反応がないな。
「あぶぶ!」
「らうみぃ、ほかにもいるみゃ!」
そうなのか? すると邸の彼方此方から、ガンッ! とか、バタンッ! と大きな音が聞こえてきた。どうやら邸に複数の侵入者がいるらしい。
このタイミングで邸に襲撃だ。そんなの明らかに探ってくれるなと、今探っている者の仲間ですよと、言っているのと同じじゃないか。
態々他国にやって来て貴族をたぶらかし、それがバレそうになったら襲撃なのか?
てか、父よ。こっちの動向がバレてるって事だろう? 駄目じゃないか。
とにかく俺は此処をなんとかして、他の皆がどうなっているのかを確認しないと。
母は? おフクは? メイドさん達はどうしているのか?
「らうみぃ、ぼーっとしてるんじゃないみゃ!」
「あば!」
そうだった。俺も今狙われているんだった。
ええーい、面倒だ。と、俺は魔力を手に集める。いやでも、血飛沫が飛んだりしたら嫌だな。
「あばッ!」
シュンッと転移して、侵入者の頭の上にお尻からデデンと落ちた。
「ぶぎゃッ!」
侵入者は、変な声を出して気絶した。
ええー、0歳児に乗られた位で気絶するなよー。
勿論、普通に落ちた訳ではない。重力魔法を使って、重さを何十倍にもして落ちたんだ。
例えるなら、頭の上にデッカイ岩が落ちてきた感じかな? そりゃ、気絶するさ。
「ばいんどみゃ!」
「あう」
身動きができないように、土属性魔法でグルグル巻きにバインドしておいた。よし、これで良い。
ミミ、他の部屋を見に行くぞ。
「らうみぃ、ろうやって、いろうしゅるみゃ!?」
「あばば!?」
そうだった。俺って転移はできるけど、普通に移動するのはまだハイハイだった。
何も考えないで転移して、敵の真ん前に出たりなんかしたら拙い。
仕方ない。久しぶりに高速ハイハイを披露するか?
「らうみぃ」
ミミが俺の頭に乗ってきた。頭に乗っていたらまた母に叱られるぞ。
「しょんなこと、いってるばあいじゃないみゃ!」
ミミが乗って、ブワンと何かで繋がった感じがしたかと思ったら、俺の身体が浮いていた。
フワリと宙に浮いていたんだ。
「ぶぶぶ!?」
「みみが、ちゅれていくみゃ!」
なんだよなんだよー! ミミはこんな事ができるのかよ! もっと早く言ってくれよ! 超便利じゃないか!
よしッ! 取り敢えず、おフクのいる隣の部屋だ!
「わかったみゃ!」
フワフワ〜と空中を移動して、そっと隣の部屋を見に行った。
そこには侵入者が二人。おフクが一人で応戦していた。これはおフクのピンチじゃないか! て、俺は驚いた。マジで。
あぶ! とも、あば! とも声が出せなかったくらいだ。思わずミミと空中に浮きながら、ボーッと見てしまったくらいだ。ちょっとおマヌケな格好だ。
おフクは槍を持って、二人相手に堂々と遣り合っていたんだ。
しかも、おフクの方が優勢じゃないか?
侵入者の一人は肩から血を流していて、もう一人は片腕が使えなくなったらしい。片手でなんとか剣を握っている。
そうだった。おフクのジョブは姫騎士だ。剣でも槍でも持ってこいだ。
女騎士の上位職だけあって強い。そこら辺の者には負けないだろう。
おフクが手にしているのは、普通の槍より短い短槍と呼ばれるものだ。室内など閉所で扱いやすい。そんな槍、一体どこに置いてあったんだよ。
俺が呆気に取られていると、おフクが一気に前に出た。
瞬時に相手の懐に入り込み、柄の石突で一人を勢いよく突き飛ばして気絶させた。直ぐに槍を回し、もう一人の足を払いそのまま首をなぐって昏倒させる。
お見事! 見事な槍使いだ。俺は全然出る幕なかった。
「坊ちゃま!」
「ぶばー!」
「坊ちゃま! どうして浮いているのですか!?」
ああ、そうだった。ミミ、説明してくれ。
「みみが、うかしぇてるみゃ」
「そうなのですね! ご無事で良かったです!」
「あぶあー」
おフクも、本当に強いんだな。まあ俺は、おフクが倒した奴等をバインドしておこう。
「あぶぶー」
またまたグルグル巻きにしてやった。
「あらあら、それは良いですね」
そんな呑気な事を言っている場合じゃない。他の皆は大丈夫なのか?
ほら、ミミ。通訳だ。
「みみは、ちゅうやくじゃないみゃ!」
「あぶあ」
だって俺はまだ喋れないんだから仕方ないだろう?
「しょうがないみゃ。ほかのみんなは、へいきなのみゃ?」
「大丈夫ですよ、心配いりません。皆強いですから」
「あばー」
お、おう。そうなのか。
もしかして、メイドさん達も戦うメイドさんだったりするのか?
ちょっと見てみたい。メイド服を翻しながら戦うメイドさんって萌えるじゃないか。
「らうみぃ、なにいってるみゃ?」
「あぶあ」
おう、すまん。
お読みいただき有難うございます!
以前、ミミのセリフが読み難いぞ!と、ご指摘頂いたので、フリガナを入れる感じで対応しているのですが、如何なものでしょう?
感想を有難うございます!
現在、締切間際なのでお返事できていませんが、読ませて頂いてます。本当に励みになります。
有難うございます!
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