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40ー本題に入ろう

 それからやっと落ち着いた父は、またバリトンボイスの良い声で言った。


「ラウが考えているより大変な事なんだ」


 おう、さっきの転移の事だな。

 父とアンジーさんが丁寧に説明してくれた。

 転移ができるという事は、当然だがどこにでも瞬時に移動できるという事だ。

 それは、国にとってはどういう事なのか。

 極端な事を言えば、誰にも見つからずに政敵を始末する事ができるという事だ。


「あばば」

「それだけじゃない。普通は入る事ができなような要所にも、簡単に出入り可能だという事だ。しかも誰にも見つかる事なくだ」


 ああ、そうなのか。スパイしまくりなんだ。しかも暗殺だってできちゃうぞって事だな。

 俺はそんな事はしないけど。

 でも俺の意思には関係なく、国や教会に利用される事になってしまうかも知れない。


「もちろん、兄上はそんな事はしないだろう。ラウの事は可愛がってくれているからな。だが要職に就いている貴族や、大臣達が知ったらどう思うかだ」

「そうなんスよ、坊ちゃん。良い人間ばかりじゃないんスから」


 おう、それは身に染みているぞ。味方のはずだった騎士団長の息子に、俺は殺されたからな。


「あば」


 俺はヒョイと手を挙げる。


「え? もしかして分かったって事ッスか?」

「あうあー」

「ふふふ、だからラウは理解しているわよ、アンジー」

「マジッスか!?」


 母の言う通りなのだよ。俺はちゃんと理解しているぞ。

 だから絶対に人前では魔法は使わない。人前ではな。


「あぶぶぶ」

「あら、ラウ。何を考えているの?」


 え? 母ったら鋭い。人前では使わないけど、人が見ていないところでとんでもない事をしようとしている俺とミミ。


「あう、あう」

「駄目よ。めっていったでしょう? お外で使っては駄目よ」

「あぶあー」


 分かっている。絶対にバレないようにする。その為に今ミミと練習しているんだから。


「いやだわ、なんだかとっても嫌な予感がするわ」

「あぶー」


 おふッ、本当に母の勘は鋭い。母親だからなのだろうか? それとも母自身が鋭いのか?

 いや、どっちもだな。


「俺、びっくりして報告する事忘れちゃったッス」


 何を言っているんだ。アンジーさんはそんな事はないのだろう?

 父の側近をしているくらいなんだ。俺達の前ではとっても朗らかな良い兄ちゃんって感じなのだけど、そうじゃないって事くらいは気付いているぞ。

 それに邸のメイド達が、話しているのを聞いた事がある。

 父とアンジーさんはとってもクールだと。

 父が『氷霧公爵』ならアンジーさんは『銀花(ぎんか)男子』と言われているそうじゃないか。

 『銀花』とは雪の異称だ。雪の結晶が銀色の花のように見えることから、雪を銀花と呼ぶらしい。

 色んな事を考えるもんだ。

 氷と雪だよ。冷たい事を現すには良い表現だ。ふむふむ。

 と、俺は考えながらつい癖で腕を組み、指をペチッと額につける。


「ぶふふッ! 坊ちゃん、貫禄があるッスね」

「あば?」

「そのポーズですよ。癖ッスか? よくやってるでしょう?」

「あうあー」


 え? そんなにやっているか? 癖だから知らない内にしているのかも。

 赤ちゃんがすると、とっても可愛らしいだろう?

 なかなか本題の報告に入らない。俺の話は良いんだ。


「アンジー、落ち着こうか」


 さっきまで、一番落ち着いていなかった父が言う。


「はいッス。報告です」


 やっと本題に入った。もう俺は関係ないな。おフク、出て行こうぜ。オヤツが食べたい。


「あぶぶ、ぶばー」

「あらあら、オヤツですか?」


 そうそう、小腹が空いたぜ。さつまいもが良いな。りんごでも良いぞ。


「ラウ、もう少し我慢だ」

「あう」


 え? 俺、いらなくね? 必要なくね?

 俺、赤ちゃんなんだけど。


「あうあう」

「坊ちゃま、我慢ですって」

「あぶあ」


 仕方ない。我慢しよう。と思うのだけど、口が寂しくて自分の指を咥えてしまう。


「あば、あば」

「らうみぃ、おやちゅみゃ?」

「あうあ」

「がまんみゃ。しょう、ちちしゃまがいったみゃ」

「あぶう」


 俺が話を聞いても仕方ない。まあ、我慢するけども。

 アンジーさんの報告だ。呑気に関係ないねと、思っていた俺もその話を聞いて少しびっくりした。


「いつの間にかまた婚姻届けを出そうとしていたんです」

「なんだと? 女性とは接触していないのだろう?」

「していません、していないはずです。24時間体制で見張ってますし、メイドとして一人潜り込ませてますから」


 スゲーな。潜入捜査しているんだ。なのにまた婚姻届なのか?


「なら、婚姻届けは出せないだろう? 女性のサインが必要な書類もあるんだ」

「そうなんですよ。なのにです」

「どういう事だ? ちゃんと見張りを付けているのだろうな」

「当然です」


 ほうほう、なるほど。

 アンジーさんが言うには、見張りの者は深紅の髪の女性を見ていないというのだ。

 潜入している者も見ていない。だがその貴族は、また婚姻届けを出そうとしていたと。

 なら、誰かが代わりにサインをしたのか?


お読みいただき有難うございます!

いつも感想や誤字報告を有難うございます!

今週から少しの間ですが、お返事できないかも知れません。申し訳ないです。

ですが、全部読ませて頂いてます。

有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラウちゃんやはり母様にはラウちゃんの行動がお見通しですね ʅ(◞‿◟)ʃ 母親には勝てません。さぁ〜どうする❓母様を出し抜く事は無理だと思うけど。 もうしばらくは、大人しく魔法の練習を…
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