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4ー魔族の侵攻

 俺の父は王弟。当然父の兄が王だ。その王、ルーカス・クライネンが治める国、クライネン王国。

 大陸の東南にあり、自然が豊かで作物はよく育つ。南端には海があり、豊富な魚介類が捕れる。台風の様な自然災害が無い事もないが、基本穏やかで豊かな住みやすい国だ。

 この大陸には、同じような規模の国が数カ国ある。

 そして大陸の最北、未踏の地に魔族の王、魔王が治める国がある。

 その間には、俺達には越えられないほど険しい山脈がある。しかも俺達には害になる瘴気が漂う山脈だ。だからと言って魔族がこっちの国にいない訳ではない。

 その山脈を魔族は楽々と越えてくる。俺達と見た目の変わらない魔族もいるし、姿形を変えられる魔族だっている。

 そんな魔族とは普通に貿易をしている。

 魔族の国は瘴気が濃く、作物が育ち難い。だが、貴重な鉱石や魔鉱石が採れる。

 それを取引している。特に魔族と対立している訳ではなかった。

 だが、どの国も魔族を脅威には考えていた。何故なら身体能力や魔力量が桁違いだからだ。

 真面にやり合ったら普通なら勝てない。

 そこで、各国は万が一の事を憂慮して『鑑定の儀』というものを義務付けていた。

 全国民が5歳になったら、強制的に受けなければならない『鑑定の儀』

 そこで、各々のジョブを鑑定するんだ。所謂、適性検査の様なものをして、国が管理している。

 魔族に対抗できる戦力を把握する為だ。


 父のジョブは『魔導戦士』

 魔術にも長けている戦士だ。剣も魔術もどっちもオッケーって反則なジョブだ。

 現場を管理する立場だというのに、自分も前線に出て戦う。諜報だってする。

 剣がなければ拳で戦う。それはもう無敵なのだそうだ。


 母は『エレメンタラー』

 精霊使いで、この国では珍しいジョブだ。

 地上のすべての物質には精霊が宿っているとされている。 その精霊と契約し、戦う事もできる。

 精霊と意思疎通ができ、そのお陰で珍しい薬草を育てる事ができたり災害を事前に察知したりもできる。国にとっては貴重なジョブだ。


 そして俺は、一回目の時に『大賢者』と鑑定された。

 他の者達よりも遥かに優れた知見や魔術、膨大な魔力量を持っている。


 王は『賢者』だった。大賢者の下位職にあたる。

 それでも弟大好きっ子な王は、甥である俺が大賢者だと鑑定された事を喜んでくれた。

 これで次の代も安泰だと。流石、ライくんの息子だと。


 そして、王の嫡男である王太子は『英雄』

 王女は『魔術師』だった。

 王太子の英雄だって希少なジョブなんだ。

 だが、魔術師と鑑定された王女が危機感を持った。危機感だけでなく、妬みもだ。

 その妬みの切っ掛けになったのが、今はまだ生まれていない俺の4歳下の妹だ。

 妹は『聖女』と鑑定されるんだ。


 王女は 自分が聖女に選ばれなかった事。妹が根っからの聖女だったことに嫉妬をした。自分こそが聖女のはずなのにと。

 その上、自分の兄である王太子は英雄なのに、どうして俺は大賢者なのだと。

 何もかも王弟一家の方が勝っているじゃないかと妬んだらしい。

 その気持ちに同調したのが王妃だ。

 王妃もずっと母に嫉妬していた。 母のジョブは希少なエレメンタラー。

 なのに王妃は王女と同じ魔術師だった。一般的なジョブだ。

 それでも、王妃に選ばれたんだ。それは王妃自身の努力の賜物だ。 何より、全ての事がジョブに影響される訳ではない。

 俺の父だってジョブは魔導戦士だが、策士の様な事ばかりしているし、魔導戦士というよりも、アサシンの方が合っているんじゃね? て俺は思う。

 希少なジョブと鑑定されたからといって、本人が何の努力もしないとそれは宝の持ち腐れになる。要は適性があるといった程度だと俺は思っている。


 だが、大賢者として国に召集される事態が起こったんだ。

 その原因は一番北側にある隣国だ。 イケイケドンドンな隣国は、周りの国に喧嘩を売りまくっていた。

 周りの国は良く見えるってやつだ。

 例外なく、この国にも戦を仕掛けてきた。その割に、どの国にもあっさりと負けてしまっていた。

 その隣国が、何を血迷ったのか未踏の地にある魔族の国に戦を吹っ掛け、そして案の定あっさりと負けた。山脈にさえ辿り着く事なく、それはもうこてんぱんに負けたらしい。

 その時に、どの国も思った。

 ああ、なんて馬鹿な事してくれたんだと。


 怒った魔族は、勢いに任せて他の国にも侵攻してきたんだ。

 その侵攻を食い止めるために大賢者だった俺は召集された。

 その時俺は17歳。

 突然だけど、俺には婚約者がいた。俺の可愛い可愛い婚約者。7歳の時に、母のお茶会で偶然出会った侯爵家の令嬢。

 これはうちの血筋なのかも知れない。いや、単純に父に似たのか?

 俺もその小さくて可憐な令嬢に、一目見て恋に落ちた。

 それから、毎日花を1本ずつ届けたんだ。届けさせたのではなく、自分で届けに行った。

 ランニングだとか意味の分からない言い訳をして、自分で走って行ったんだ。王族の息子がだよ。

 普通、貴族の家では先触れがマナーだ。それをガン無視して、1本の花を手に毎日通った。なんておませな7歳児だよ。

 その数がもうすぐ100本になろうかといった時に令嬢の家が根負けした。

 そして無事に婚約が成立したんだ。


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