36ー試したい
「かっちょいいみゃ! みみはかんろうしたみゃ!」
「あう」
そうかよ。とにかくシールドの事も、魔王城へ行く事も全部内緒だ。
これから毎日シールドの練習だぞ。
どうせ、俺は喋れない。ミミが言わなきゃ、何の練習をしているのかなんて分からないさ。
良いか、俺とミミの二人だけの秘密だ。
「ふたりらけのひみちゅって、なんらかかっちょいいみゃ!」
「あぶ」
そうかよ、まあ何でも良いけど秘密だぞ。
「わかったみゃ! しゅぱるたれいくみゃ!」
「あばー」
「ただし、ラウ。約束してちょうだい」
「あう?」
何だよ、今更止めたりなんかしないよな?
「ミミと二人で、勝手に行動する事は絶対にしないでね。魔王城に行くとしても、ちゃんと私に話してちょうだい」
「あぶ」
それは、分かっている。だって行くとしても夜中だ。みんなが寝静まってからじゃないと行動できない。
だって俺はまだ赤ちゃんだから、昼間はおフクがずっと側にいる。
そうなると、精霊女王の協力も必要になる。
「まあ、そこまで考えていたの?」
「あうあー」
当たり前じゃないか。今みたいに俺とミミを、こっちに引っ張ってきて欲しいんだ。精神だけじゃなくて、身体も全部だ。
「困った子ね。そんなとんでもない事を考えていたなんて。流石、アリシアの子供だわ」
「あば?」
なんだ? ちょくちょく母の名前が出てくるが、一体母は何をしたんだ?
とっても嫌な予感がするから、無理には聞かないけど。
「ふふふ、もっと大きくなったら教えてあげるわよ」
「あうあー」
そうかよ。とにかく、これで魔王城へ乗り込む事が現実味を帯びてきた。
それまでは、どうすれば良いのか全く考えつかなかったのだけど。
精霊女王とミミの協力があるなら、鬼に金棒だ。うん、我ながら良い計画だ。
「ラウ、そんな事はないわ。私だって魔王城なんて行った事がないもの。行こうとも思わないけど」
「あぶ」
そりゃそうだろう。何しろ、魔王がいる魔王城だ。精霊とは対極なんじゃないか?
「そうね、その通りよ。でも、根源は同じなのよ」
根源とは? て、同じなのか?
「人間から見た魔王は悪と見えるかも知れないけど、魔族から見れば立派な王なのよ」
見る立場によって違うという事か。そうか、魔族の王だから魔王。
一族を統べる者って事だ。なら余計に話をしないといけない。
戦になったら魔族にだって被害は出るんだ。
戦なんてお互い良くない。その切っ掛けは隣国なのだけど。
その隣国の王にも話をつけないと。デオレグーノ神王国、厄介な国だ。
今父が調査をしているのも、そのデオレグーノ神王国の一族だ。
何が神に一番近いだ。馬鹿な事を言っている。それで他国に迷惑を掛けるなってんだ。
「ふふふふ、その通りだわ。あの国には精霊も近寄らないもの」
「あうあ」
そうなのか?
「ミミ、シールドだけじゃなくて、他の魔法の練習もしなくちゃ駄目よ。万が一の事を考えてね」
「わかったみゃ! まかしぇるみゃ!」
やっとミミの本領を発揮してもらう事ができるな。
と、言う事でその日からミミと一緒に魔法の練習だ。
精霊女王が、他の魔法の練習もしろと言っていたからミミに一通り教わる事にする。
流石、一度は大賢者と鑑定されただけの事はある。
魔法の使い方自体は覚えていたんだ。ただ今の身体でどう使えば良いのか、感覚が掴めなかった。
「あばー」
俺は小さな手を出す。ぷっくぷくの手から風がビュ~ッと吹いた。
そんな基礎的な四属性魔法から、魔力操作、身体強化、回復魔法、複合魔法、支援魔法、それにレジストやリフレクション、ディスペル、魔法無効、気配遮断などなど、色んな魔法をおさらいしていった。
そう、俺にとってはおさらいなんだ。
殺される前の俺は全部使えた。転移魔法だって中距離だけど使えたんだ。
魔素を遮断するシールドは使った事がなかった。そんなの存在自体を知らなかったからだ。知っていたら、使えたのだろうか?
そして、今回俺は無詠唱をマスターした。当然だ、まだ喋れないのだから。
これは良いぞ。前回よりランクアップしている気がする。
そして空間魔法を覚えた。亜空間になんでも収納できるんだ。これで赤ちゃんなのに、なんでも持ち出せる。
なんならマジックバッグでも作ろうか? て、感じまでマスターした。
その間、おフクはずっと付いていたけど、俺とミミが何をしているのかは理解できていなかったと思う。何故なら俺は早々に念話を習得したからだ。
口に出さなくてもミミと喋る事ができる。正確にいうと、今迄ミミには俺が思っている事は伝わっていた。だが逆が駄目だったんだ。俺はミミが何を言いたいのか、喋ってもらわないと分からなかった。
それが念話を覚えた事で可能になった。
これは早く習得しないといけないと思っていたんだ。
だって、ミミは喋ってしまうから。ポロッとさ。
「みゃみゃみゃ、みみをしんようしゅるみゃ!」
なんて言っていたけど、そこは信用できない。今までのミミを見ていて、強くそう思ったから。
「ひろいみゃ! らうみぃはときろきひろいみゃ」
念には念を入れてだ。
さて、一通り習得した俺は早速試したくなった。
だって、試したいだろう? どれだけ使えるのかを。
それと肝心な事を一つ試しておきたい。
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