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31ーマジですか!?

「ラウ、あなたまだ赤ちゃんだって分かっているのかしら? 何なのその大胆さは!?」

「あう」


 もちろん分かっているさ。でもさ、精霊女王やミミとも話せるだろう?

 魔王とも話せるんじゃないか? 話せば分かってくれないか?


「そんな問題じゃないわよ。それ以前の問題よ。まだ赤ちゃんなのよ。もっと成長するまで待てないの!?」

「あばあー」


 だって、気が急くんだ。早く何かしないとと思ってしまうんだ。

 魔族の侵攻はおれが17歳だった時だ。その前年に隣国が魔族に戦を仕掛ける。

 16年後には、侵攻の切っ掛けになる戦が始まるんだ。早いに越したことはない。

 だって直ぐに、分かってもらえるとは限らないだろう?

 魔王と話せたら、隣国の王にも会うつもりだ。馬鹿な事は止めろと話すんだ。

 自分達には太刀打ちできない大きな力だと思ったら、戦を吹っ掛けるなんて事もしないだろう?


「ラウったら……驚いたわ。そんな事を考えていたのね」

「あぶぶ」


 俺はあの最悪の結末をどうしても変えたい。それだけだ。

 俺がそう話すと、精霊女王は黙って考え出した。

 そんな事は止めておけと言われる事は百も承知だ。だけどそれくらいでは、俺の決心は揺るがない。

 何がなんでもあの結末を変える。変えてやる。その為の今回の生だと俺は思っている。

 だから俺は精霊女王をジッと見た。テンと足を伸ばして座り、短い腕を組んでさ。


「ラウ、魔族領がどんなところなのか忘れていないかしら?」

「あば?」


 どんなところって……あの北の山脈の向こう側にある国だ。

 俺達が住むところよりも、魔素濃度が高くて作物が育ち難い……て、え? ええ? もしかして、そうなのか?


「分かったかしら?」

「あば!?」


 もしかして、人間が立ち入る事ができないのか!?


「そういう訳ではないわ。ただし、時間制限があるわね。人体に影響が出ちゃうのよ。今のラウだとほんの数分かしら? しかも、自分にシールドを張ってガードして数分ってところね。だってラウはまだ赤ちゃんなんですもの」

「あばー」


 マジですか!? それは考え付かなかったぜ。


「先ずはミミにシールドを習いなさい。魔素を防げるシールドよ。話はそれからよ」

「あぶあー」

「ふふふ、でも私は嬉しいわ。話してくれて有難う」

「あう」


 だってどうせお見通しなんだろう? なら隠しても仕方ない。


「そうね、ラウの知らない事や気付かない事を、私やミミがカバーしてあげられるわ。だから話してくれる方が良いのよ。ラウ、あなたは勇気のある子だわ。それができたら世界平和に繋がるわ。さすが、あのアリシアの子ね」

「あばー」


 え? ここでどうして母が出てくるんだ?


「ふふふ、また今度教えてあげるわ。今日はもう戻りなさい。良い? 一人で早まっては駄目よ。相談してちょうだいね。あなた一人で背負わなくて良いのよ」

「あぶあー」


 ああ、また精霊女王に救われた。また一つ俺の気持ちを救ってくれた。

 一人で背負わなくて良い。この一言が俺の心を軽くする。

 もしも一回目の時に精霊女王と知り合っていたら、あの最悪の結末も変わっていたんじゃないかと思ってしまう。

 一回目の時も、母は精霊女王と交流があったのだろうか? 俺はそんな事を聞いた事がなかったけど。

 それとも、色々変わってきているのか?

 何にしろ、ミミはずっと寝ていた。俺が精霊女王と話している間も、終わってからもずっと寝ていた。

 朝になってやっと起きたんだ。


「なんみゃ、らうみぃ。なにみてるみゃ?」

「あばー」


 いや、なんでもないさ。


「やっぱおきたら、ももじゅーしゅがのみたいみゃ」

「はいはい、食堂に行きましょうね」

「あぶあ」


 この頃には俺は、夜は起きる事なく一晩中眠る様になっていたんだ。なんてお利口な0歳児なんだ。

 そして、離乳食も始まっていた。だから三食、母達と一緒に食堂で食べるんだ。

 俺用のチャイルドチェアが置いてある。

 まあ、おフクに食べさせてもらっているんだけど。一応、俺も手にはフォークを握っている。

 でも真面に食べられない。ブスブスと刺しているだけだ。まだまだだな。

 離乳食が始まって、少しずつ形のあるものが食べられる様になってくると、腹持ちも違ってくる。

 そう頻繁におっぱいをもらう必要もなくなってきた。

 起きている時間も長くなってきた。だから俺は練習するのだ。


「あうッ! あばッ! ぶぅッ!」


 と掛け声と共に、足をビシィッと出す! 出す! 前に出す!


「らうみぃ、てをはなしてみるみゃ」

「あば?」


 え? 手を離すと倒れるだろう?


「ゆっくりと、しょぉ〜っと、はなしてみるみゃ」

「あうぅ」


 おう、ミミがそう言うならやってやろうじゃないか。

 俺は掴まっていた手をそっと離す。そのまま両手をバランスを取るように出して、小さな足に力を入れる。

 身体がグラつくけど、それでも踏ん張る。グッと足に力を入れる。


「あーあぶあー」

「しょうみゃ、ゆっくりみゃ」

「あうぅー」

「あらあら! 奥様!」

「まあ!」


 両手でバランスを取りながら、ゆっくりと一歩ずつ足を前に出す。

 グッと一歩。そして反対の足をまた一歩。厚い絨毯が敷かれた床を、確かめる様に一歩ずつ。


「ラウ! 凄いわ!」

「ああーちゃ!」

「ええ、母様よ! いらっしゃい!」


 母が俺に向かって両手を広げてくれる。そこに向かって俺は一歩、また一歩。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 精霊女王優しい。ラウちゃんの為の助言を的確にしてくれて頼りになります。ミミと一緒に魔法を頑張りましょう(^O^☆♪ 歩行も頑張っていますね。また進歩〜 [一言] ヨタヨタ歩きも可愛いよね。…
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