30ーバレちゃった
もしかしたら、もう婚姻届を出したと思っているのかも知れない。
だが、姿を現さないのはどうしてだろう?
「あの髪色は目立つから直ぐに分かるんスけど」
「確かにな」
どういう事だろう? 接触してくるのを、待つしかないのだろうか?
「貴族の邸宅はしっかり見張っているのだろう?」
「勿論です。出入りした者全てチェックしています」
それでも真紅の髪の女性は接触していないらしい。
ふむふむ。なかなか進展がない。行き詰っているという事なのかな?
「あばあ」
「らうみぃ、もうしゅこし、がまんしゅるみゃ」
「あうぅ」
「みみも、ももじゅーしゅのみたいの、がまんしてるみゃ」
「あばあ、ああーちゃ」
「はいはい。もう少し我慢してちょうだいね」
「あぶぅ」
だからさ、赤ちゃんの俺が出席する必要はないと思うのだ。何度も言っているけど。
結局、邸宅の監視は続ける事と、街中の捜索もする事。
そして再度隣国に潜入している者に、進展はないか調査報告をしてもらう事になって今日はお開きになった。
途端に父が寄って来た。ガシッと両肩を掴まれ、額をくっ付けてくる。近い近い、近いって。
「ラウ、父様だ」
「あばー」
「父様だ」
「ああーちゃ」
「あああぁーッ! まだ無理なのかぁーッ!?」
と、叫びながら俺をギュッとする。アハハハ、ごめんな。なぜかまだ言えないんだ、悪いな。多分、た行が難しいのだと思うぞ。
「あなた、いい加減になさいませ」
「だってアリシア!」
「その内、言いますわよ」
「その内か! その内なのかぁッ!? アリシアはもう呼ばれているから、その余裕なのか!?」
また意味の分からない事を言っている。
「ああーちゃ」
「はいはい、行きましょうね」
俺は自分の両親がこんなに一喜一憂して育ててくれていたなんて、夢にも思わなかったんだ。
その事を知ると、余計にあの最悪の結末を何とかしないといけないと思う。
ミミよ、みんなが寝静まった頃に作戦会議だ。
「らうみぃ、なにいってるみゃ」
「あばー」
だから、作戦会議だ。俺に考えがあるんだ。ミミのその大きな体が必要なんだ。
「なんだか、いやなよかんがしゅるみゃ」
「あばば」
なかなか鋭いではないか。
と、皆が寝静まった頃。俺もぐっすり眠っていた。当然、ミミもだ。
俺のベッドで大の字になって、ピヨヨ~なんて寝息を立てながら眠っている。
作戦会議をするつもりが、まさか眠気に抗えないなんて。
さすが、0歳児の赤ちゃんだ。いや、当然といえば当然なのだ。
だけど、昼間は必ずおフクか母がいるから話せないし。さて、どうするか。
「ラウ、何を考えているの?」
と、話しかけられて目を開けるとまた真っ白な世界だった。精霊女王が目の前にいた。おう、精霊女王の世界か。
「あば?」
え? 俺って寝てなかったっけ? なんて思っていたんだ。
「あなたの精神だけ持って来ているのよ。だって熟睡しているのですもの」
「あうー」
そりゃ、赤ちゃんなんだから仕方がない。
てか、この世界に来てもミミはまだ寝ているぞ。爆睡だ。鳥さんが大の字で寝るなんて聞いた事ないぞ。
「ふふふふ、ミミは仕方ないわね」
「あぶぅ」
やっぱミミは決まらない。
「で、ラウ。アリシア達に内緒で、何をしようとしているのかしらぁ?」
「あうー」
思わず、眼を逸らす。だって、精霊女王って圧が強いんだ。
グイグイくるんだよ。美人さんにそうそう近くで見つめられると、ちょっと腰が引けてしまう。俺って赤ちゃんだから。
「何を言っているのよ。さっさと話してしまいなさい」
「あぶあー」
ええー……だってなぁー。
「どうせバレちゃうのよ。ミミの力も必要なんでしょう? ミミったら頼りないわよ」
「あぁー」
え、それを言っちゃう? 言ったら駄目だぞぅ。
「ふふふ、ミミもやる時はやるわよ」
「あばば」
もう遅いって。でも、確かに精霊女王にはバレちゃうか。
なら一層の事、相談するか。と、俺は思ったんだ。開き直ったとも言う。
「そうよ、それがいいわ」
「あぶあー」
実は俺がずっと思っていた事だ。
魔王に会いたいんだ。てか、会いに行こうと思っている。
「な、なんですって……!?」
「ああー」
だから魔王に会いたいんだ。直談判だ。
「魔王に会うなんて……何を考えているかと思ったら、そんな大それたことを考えていたのね」
「あうぅ」
だって俺が殺された時は、魔族の侵攻を止めるために駆り出されていたんだ。その魔族の王が魔王だろう?
なら、魔王に事情を話して侵攻しないでくれと、直談判するのが一番手っ取り早いじゃないか。
「魔王って魔族領の中央にいるのよ。分かるかしら?」
「あば」
おう、それくらいは知っているぞ。魔族領の中央に魔王城があるんだろう?
そこに、最初は転移しようかと思ったんだ。だけどいくら魔力量が増えていそうでも、今の俺にはどうやら長距離の転移はまだ無理っぽい。だって前回大賢者だった時でも、長距離は無理だった。
ならどうしよう? と思っていたんだ。成長するまで待つか? 他の手段を考えるか? と、考えていたところに、あのミミの大きさだ。
「まあ! ミミに乗って行こうというの!?」
「あぶぶ」
そうだ。近くまで連れて行ってもらえれば、あとは転移でなんとかするさ。
お読みいただき有難うございます!
ラウ君もロロに続いて欲しい!頑張ります!
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