表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/217

27ー泣けるぜ

「無茶をするならミミを返してもらうわよ」

「あばー」

「だから、ミミに相談する事。良いわね」

「あぶ」


 仕方ないな、分かったよ。どっちにしろ俺が魔法をもっと使える様になるには、ミミの協力も必要なんだ。


「今日はそれを言いたかったの。ラウ、忘れないで。貴方は一人で戦っているんじゃないのよ。あなたに協力してくれるミミや私達がいるの。無茶をしないで頼ってちょうだい。貴方の意思を尊重すると約束するわ」

「あう……」


 え……なんだか俺、そんな事を言われたら泣いてしまうぞ。泣いたらきっとおフクがやって来るぞ。


「ふふふ、今日はもうお休みなさいな」

「あうあー」


 そうして俺はまた眠りについた……のではなく、泣いた。嬉し泣きだ。男泣きだぜ。


「ふぎゃー! あば、あば、あぎゃー!」


 まだちゃんと理解できていないのだけど、精霊女王のあの言葉が本当に嬉しかったんだ。

 一人で戦っているんじゃない。その一言が俺の心に突き刺さった。ズギューンときた。

 この世界でまた赤ちゃんとして生まれて、俺は一人焦っていたのかも知れない。

 俺だけが知っている未来。最悪の結末。

 それをなんとか避けようと、肩に力が入っていたのだろう。

 なのに、まだ自分は赤ちゃんだ。何も自由にできない。それが、焦れったくて悔しくて気ばかりが焦っていた。一人でなんとかしなきゃと。

 そんな俺を理解してくれたんだ。俺に手を差し伸べてくれた。

 俺に頼もしい味方ができたのかも知れない。母がエレメンタラーでいてくれたお陰だ。精霊女王との縁を繋いでくれたのは母だ。


「あらあら、坊ちゃまどうしました?」


 おフクが俺の泣き声でやって来た。


「あばぁー! ふぎゃ、ふぎゃー!」


 俺はおフクに手を伸ばす。


「怖い夢でも見ましたか? 大丈夫ですよ、フクがおそばにいますよ」


 俺を抱き上げて、あやしてくれる。

 最悪の結末の時、おフクはどうなったのだろう? 無事だったのだろうか? 何も分からない。

 おフクの体温と、伝わってくる鼓動。それが落ち着く。ああ、生きているって思うんだ。

 と、俺がおセンチになっているのにミミは。


「ピヨヨ……スピー……ピヨピヨ」


 眠っていた……爆睡だ。なんだよ、呼んでおいて自分はさっさと寝ているのか。

 その場にいたのだから、俺の感動を一緒に味わってくれよ。

 え、鳥さんってこうして寝るのか? ミミは俺のベッドのど真ん中で、無防備に腹を見せて羽を伸ばしてノベーッと爆睡していたんだ。

 普通鳥さんは、そんな格好で寝ないよな? 精霊さんだからなのか?

 いやいや、気が緩み過ぎじゃないか?

 そんな事もあったのだけど、相変わらず俺は練習をしている。

 備えあれば憂いなしだ。というか、俺の性格だ。俺にできる事はしていたんだ。


「あうッ! あばッ! ぶぅッ!」

「らうみぃ、しょればっかなのみゃ」

「あぶぶぅ!」


 何を言っているんだ。積み重ねが大事なんだぞ。何事も努力の積み重ねだ。

 こうして毎日、一日でも早く歩ける様に頑張るんだ。

 と、俺はビシィッと足を出している。

 右! 左! 右! 左! と、小さな足をビシッと出して歩く練習だ。お尻が一緒にヒョイと揺れるのはご愛嬌だ。

 つかまり立ちも、長い時間できるようになった。

 つかまってさえいれば、ヨチヨチと歩けるようにもなったんだ。

 だが、赤ちゃんだ。何をするにしても、おフクの手を借りないといけない。

 そろそろ、喉が渇いてきたぞ。


「みみも、ももじゅーしゅのむみゃ」


 はいはい、桃ジュースが好きだね。


「坊ちゃま、オヤツですよ」

「あばー」


 最近の俺はオヤツが追加された。ふふふん。凄いだろう?

 りんごを細かく切ったものを柔らかくなるまで煮てある。甘くて美味しいんだ。


「あうぁ、あばぁ」

「はいはい。食べましょうね」


 俺専用の椅子に座らされる。所謂、ベビーチェアだ。前にずり落ちないように、お股のところにガードがついている。ミミには桃ジュースだ。


「みみは、じぶんれのめるみゃ」


 飲むというか、(つつ)いているというか。チョンチョンと啄むようにして桃ジュースを飲んでいる。ピヨピヨと時々鳴きながら。

 こうして見ると、本当に鳥さんに見える。

 でも、精霊なんだよな。デカかったし。

 あの大きさは良いよなぁ。俺が楽に乗れそうな大きさだ。うん、あれは良い。


「らから、みみはかんぺきみゃ。うまうまみゃ」


 そうかよ。おフクが小さなスプーンで、俺に食べさせてくれる。


「はい、坊ちゃま。あーん」

「ああー」


 お口を開けると、甘いりんごが入ってくる。


「んまんまぁー」

「まあ、美味しいですか?」

「んまんまーあー」

「はいはい」


 まったく……

 本当に……

 どうしようもなく……

 0歳児だ。乳幼児ってやつだ。

 りんごが美味しくて、ついつい足をグングンと動かして喜んでしまう。蹴りの練習ではない。お手々はグーだ。


「ふふふ、美味しいですねー」

「あぶあうぁー」


 スプーンで口に入れて貰っているのに、俺の口の周りはベットベトだ。

 それでも、もっと食べると口を開ける。


「あぅあぁー」

「はいはい。はい、あーん」


 美味いぜ。りんごがこんなに美味く感じるとは。乳幼児ってこんな感じなんだな。


お読みいただき有難うございます!

ラウくんのお話も頑張ります!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ