27ー泣けるぜ
「無茶をするならミミを返してもらうわよ」
「あばー」
「だから、ミミに相談する事。良いわね」
「あぶ」
仕方ないな、分かったよ。どっちにしろ俺が魔法をもっと使える様になるには、ミミの協力も必要なんだ。
「今日はそれを言いたかったの。ラウ、忘れないで。貴方は一人で戦っているんじゃないのよ。あなたに協力してくれるミミや私達がいるの。無茶をしないで頼ってちょうだい。貴方の意思を尊重すると約束するわ」
「あう……」
え……なんだか俺、そんな事を言われたら泣いてしまうぞ。泣いたらきっとおフクがやって来るぞ。
「ふふふ、今日はもうお休みなさいな」
「あうあー」
そうして俺はまた眠りについた……のではなく、泣いた。嬉し泣きだ。男泣きだぜ。
「ふぎゃー! あば、あば、あぎゃー!」
まだちゃんと理解できていないのだけど、精霊女王のあの言葉が本当に嬉しかったんだ。
一人で戦っているんじゃない。その一言が俺の心に突き刺さった。ズギューンときた。
この世界でまた赤ちゃんとして生まれて、俺は一人焦っていたのかも知れない。
俺だけが知っている未来。最悪の結末。
それをなんとか避けようと、肩に力が入っていたのだろう。
なのに、まだ自分は赤ちゃんだ。何も自由にできない。それが、焦れったくて悔しくて気ばかりが焦っていた。一人でなんとかしなきゃと。
そんな俺を理解してくれたんだ。俺に手を差し伸べてくれた。
俺に頼もしい味方ができたのかも知れない。母がエレメンタラーでいてくれたお陰だ。精霊女王との縁を繋いでくれたのは母だ。
「あらあら、坊ちゃまどうしました?」
おフクが俺の泣き声でやって来た。
「あばぁー! ふぎゃ、ふぎゃー!」
俺はおフクに手を伸ばす。
「怖い夢でも見ましたか? 大丈夫ですよ、フクがおそばにいますよ」
俺を抱き上げて、あやしてくれる。
最悪の結末の時、おフクはどうなったのだろう? 無事だったのだろうか? 何も分からない。
おフクの体温と、伝わってくる鼓動。それが落ち着く。ああ、生きているって思うんだ。
と、俺がおセンチになっているのにミミは。
「ピヨヨ……スピー……ピヨピヨ」
眠っていた……爆睡だ。なんだよ、呼んでおいて自分はさっさと寝ているのか。
その場にいたのだから、俺の感動を一緒に味わってくれよ。
え、鳥さんってこうして寝るのか? ミミは俺のベッドのど真ん中で、無防備に腹を見せて羽を伸ばしてノベーッと爆睡していたんだ。
普通鳥さんは、そんな格好で寝ないよな? 精霊さんだからなのか?
いやいや、気が緩み過ぎじゃないか?
そんな事もあったのだけど、相変わらず俺は練習をしている。
備えあれば憂いなしだ。というか、俺の性格だ。俺にできる事はしていたんだ。
「あうッ! あばッ! ぶぅッ!」
「らうみぃ、しょればっかなのみゃ」
「あぶぶぅ!」
何を言っているんだ。積み重ねが大事なんだぞ。何事も努力の積み重ねだ。
こうして毎日、一日でも早く歩ける様に頑張るんだ。
と、俺はビシィッと足を出している。
右! 左! 右! 左! と、小さな足をビシッと出して歩く練習だ。お尻が一緒にヒョイと揺れるのはご愛嬌だ。
つかまり立ちも、長い時間できるようになった。
つかまってさえいれば、ヨチヨチと歩けるようにもなったんだ。
だが、赤ちゃんだ。何をするにしても、おフクの手を借りないといけない。
そろそろ、喉が渇いてきたぞ。
「みみも、ももじゅーしゅのむみゃ」
はいはい、桃ジュースが好きだね。
「坊ちゃま、オヤツですよ」
「あばー」
最近の俺はオヤツが追加された。ふふふん。凄いだろう?
りんごを細かく切ったものを柔らかくなるまで煮てある。甘くて美味しいんだ。
「あうぁ、あばぁ」
「はいはい。食べましょうね」
俺専用の椅子に座らされる。所謂、ベビーチェアだ。前にずり落ちないように、お股のところにガードがついている。ミミには桃ジュースだ。
「みみは、じぶんれのめるみゃ」
飲むというか、突いているというか。チョンチョンと啄むようにして桃ジュースを飲んでいる。ピヨピヨと時々鳴きながら。
こうして見ると、本当に鳥さんに見える。
でも、精霊なんだよな。デカかったし。
あの大きさは良いよなぁ。俺が楽に乗れそうな大きさだ。うん、あれは良い。
「らから、みみはかんぺきみゃ。うまうまみゃ」
そうかよ。おフクが小さなスプーンで、俺に食べさせてくれる。
「はい、坊ちゃま。あーん」
「ああー」
お口を開けると、甘いりんごが入ってくる。
「んまんまぁー」
「まあ、美味しいですか?」
「んまんまーあー」
「はいはい」
まったく……
本当に……
どうしようもなく……
0歳児だ。乳幼児ってやつだ。
りんごが美味しくて、ついつい足をグングンと動かして喜んでしまう。蹴りの練習ではない。お手々はグーだ。
「ふふふ、美味しいですねー」
「あぶあうぁー」
スプーンで口に入れて貰っているのに、俺の口の周りはベットベトだ。
それでも、もっと食べると口を開ける。
「あぅあぁー」
「はいはい。はい、あーん」
美味いぜ。りんごがこんなに美味く感じるとは。乳幼児ってこんな感じなんだな。
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