26ーどこだよ
ミミを見て、俺は驚いた。驚いたってもんじゃない。思わず変な声が出ちゃったくらいだ。
「ぷぎゃ!?」
「なんみゃ?」
「あぶあー!」
「これがみみの、ほんとのしゅがたみゃ」
今の状況も理解できていないのに、俺の前にいたミミがデカイ!
俺が優に乗れる位の大きさだったんだ。
ここが精霊女王の世界で、しかもミミは本当はデカイ!? あのちんまりとしたミミが!?
「みみは、らうみぃのしぇかいにあわしぇて、あのおおきしゃになってるみゃ。みみはてんしゃいらからみゃ」
なんて言って大きな胸を張っている。大きな鳩胸だ。フワッフワじゃないか。ダイブしたいぞ。モフリたいぞ! デカくなってもミミのフォルムはまん丸だった。
「あばばばば!」
「うるしゃいみゃ、おちちゅくみゃ」
「あぶば!」
落ち着けるかってんだ! 何なんだ? 一体どうなっているんだ!?
何処までも続く真っ白に輝く世界、その上ミミがデカイ。
そしてミミの向こうに、昼間見た精霊女王が輝きを放ちながら宙に浮いていた。と、いうか俺自身も浮いているぞ。いや地面そのものがないんだ。
どっちが上で、どっちが下なのかも分からない。足元がないってだけで、こんなに不安なのか。
俺はどうしようもなく、ただボーッと精霊女王とミミを交互に見比べていた。
ハイハイの体勢でだ。いつでも動けるようにだけはしている。赤ちゃんなりの危機管理だ。
高速ハイハイをマスターしておいて良かった。
「ふふふ、ラウ」
「あばぁ」
分からん。何をどう考えれば良いのかも分からない。抵抗するにも、どうすれば良いのか何も分からない。
いやいや、ちょっと待て。精霊女王だって昼間見た時より大きくないか!?
「らから、これがほんとうみゃ。らうみぃのしぇかに、えいきょうをあたえないように、あのおおきしゃになってるみゃ」
「ぶあ! あばぁ!」
俺は混乱しまくった。こんなのどうすればいいんだ? 昼間、母が言っていた。連れて行かれないようにと。なのに、連れてかれちゃったぞ。俺はどうなるんだ!?
「らうみぃ、らいじゅぶみゃ。ちょ〜っとよばれたらけみゃ」
「あば?」
そうなのか? ちゃんと元の世界に帰してくれるのか?
「ラウ、貴方の為に態々場所を変えたのよ。まだアリシアに知られたくない事があるでしょう? 例えばラウが一度死んでしまったとかね」
「あ、あぶ……」
なんだと……? 今精霊女王は何と言った?
「らうみぃ、けいやくしたみゃ。じぇんぶ、わかるみゃ」
「あぶ」
「にかいめみゃ。らうみぃ、かわいしょうらったみゃ。みみは、なきしょうになったみゃ」
「あば」
俺の一回目の時の事を、精霊女王とミミは分かっていると言う事なのか? バレバ~レってヤツなのか?
「しょうみゃ。けろ、らうみぃはありしあしゃまに、しられたくないみゃ?」
「あう」
そうだよ。もし話すとしても今じゃない。なにしろ俺はまだ喋れないんだから。
打ち明けるにしても、ちゃんと自分で話したい。
「だからこの世界に呼んだのよ。ラウ、いらっしゃい」
もしかして、俺の気持ちを配慮してくれたって事なのか?
精霊女王が俺に手を出す。恐る恐る俺は、その手に近付いて行くとそっと抱き上げられた。
とても優しい手つきで、ふんわりと抱っこされた。
「らうみぃは、しぇいれいじょうおうの、おきにいりみゃ。らうみぃがうまれたときから、しってるみゃ。らからみみがえらばれたみゃ」
と、また自慢気に胸を張っている。本当かよ。その割によく父に叱られているぞ。
「みゃみゃみゃ、しょれは、いまいったららめみゃ!」
「ふふふ、ミミ。これから頑張りなさい」
「もちろんみゃ。みみはがんばるみゃ!」
「そういう事なのよ、ラウ」
「あぶぅ」
おう、母の前で言わないでいてくれた事は感謝するよ。
「でもね、ラウ。無茶は駄目」
「あぶ?」
俺、何も無茶なんてしてないぞ。
「これからしようとしているじゃない」
あれれ? それもお見通しなのか?
「あなたは今はまだ赤ちゃんなのよ」
「あばぁ」
分かってるさ。でも、隣国が魔族に戦を仕掛けるまでにはなんとかしたい。
「そうね、戦は駄目だわ。こっちの世界にまで影響するもの」
ほう、そうなのか。俺の頭をそっと撫でながら精霊女王が話す。
「戦に巻き込まれて、精霊の子供に被害が出たりするわ。何より世界の魔素濃度に影響が出るのよ」
魔素濃度。魔族の国は魔素濃度が高いという。魔素とは、魔法を使う為に必要な超ファンタジーな成分だ。この世界には普通に漂っている。
その魔素濃度が濃すぎると人体に悪影響が出ると言われている。
「精霊は超自然的な存在なのよ。魔力で出来ているといっても過言ではないわ。その元となる魔素濃度が大きく変化する事は私達も避けたいの」
なるほど。精霊女王って昼間話した時より話しやすいじゃん。
俺の事を理解してくれていると思って良いんだよな?
「理解はしているわ。ただ、協力できるとは限らないわ」
「あぶぅ」
「れも、みみはらうみぃのちゅかいまみゃ。いっしんろうたいみゃ」
おう、一心同体と言いたいんだな。そうかよ、有難う。
「何かする前にミミと相談すると良いわ。決して無茶はしないと約束してちょうだい」
「ぶぶぅ……」
それは分からないな~と、眼を泳がす。
お読みいただき有難うございます!
お待たせしてしまい申し訳ありません。週末は投稿しますよ〜!^^;
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