240-2025クリスマスSS 言えねー
※本編には全く関係ありません。まだ0歳のラウです。
お邸の長い廊下を俺は行く。張り切って手足をバタバタと動かして。
「あばばばばー!」
「らうみぃ、しょんなに、いしょぐことないみゃ!」
「あばばばばばーッ!」
「坊ちゃま、階段ですよ! フクが抱っこします! 止まってください!」
追いかけてきたおフクが大きな声で俺を呼び留める。
どうしてそんなに急いでいるかって? だって今朝起きたら、外が真っ白な世界だったんだ。
昨日、俺が寝る頃はまだ降っていなかった。なのに、起きたら一面真っ白に雪が積もっていた。
ちょっと感動しないか? 誰の足跡も付いていないところを歩きたいと思わないか? ワクワクするじゃないか!
「ぶきゅー! あぶあぶ」
「はいはい、そんなに急がなくても、数日は溶けませんよ」
前の時はどうだったっけ? それも覚えていない。きっと前の時の俺は、雪なんてなんとも思ってなかったんだ。こんなに綺麗な世界なのにさ。
どうりで冷えると思ったんだ。空気が凛として澄んでいるように感じる。時々木の枝からバサリと雪が落ちる音だけして、あとは雪に音を吸い込まれているみたいに静かだ。
俺がいつも歩く練習をしている庭の小道、そこも雪に埋もれてどこが道なのか分からなくなっている。あそこがいいな。誰もまだ足を踏み入れていない。
「あぶあぶ」
「あら、降りたいのですか? だめですよ。汚れます」
「あばー」
大丈夫だよ、ちょっとヨチヨチとそこを歩くだけだ。
「あぶぶ」
「じゃあ、フクと手を繋ぎましょう。良いですか?」
「あう」
よし、でも俺が先に足を出すぞ。
おフクに降ろしてもらって、ちゃんと手を繋ぐ。真っ白な雪の上に、一歩足を出そうとした時だ。
「ラウーッ!」
父が正面からダッシュしてきた。ああ……なんてこったい。
「ラウ! ラウは初めてだろう!? 雪だぞ! 冷たいのだぞ!」
「ぶぶぶぅ」
俺が最初に歩こうとしていたのに、誰の足跡も付いていなかったのに、そこを父がダッシュしてきやがった。もちろん、後ろにはアンジーさんもいる。
もう、俺の楽しみが……いや、小さな野望が台無しだ。真っ白だった雪の上に、くっきりと二人の足跡が付いているじゃないか。
「あぶー!」
俺は思いっきり文句を言った。つもりだ。
「らうみぃ、おこってるみゃ」
「なに? どうしてだぁッ!? またミミが何かしたのかぁッ!?」
ちげーよ! 父とアンジーさんのせいだよ! くっそう、俺はヨチヨチあんよの準備をしていたというのに。
「ちがうみゃ、ちちしゃまと、あんじーしゃんのせいみゃ」
「なぁにぃッ!? 私とアンジーだとぉ!? ミミ、嘘をつくんじゃないッ!」
そう言いながら、父はミミの頭をガシィッと掴み持ち上げた。ああ、だからさぁ、もう熱血すぎるんだって。
「アハハハ! 何やってんッスか!?」
笑ってるけど、アンジーさんもだからな。
「は、は、はなしゅみゃ! みみはわるくないみゃ!」
「ならどうしてラウは怒っているんだぁッ!」
「だから、ちちしゃまと、あんじーしゃんが、あしあとをちゅけるからみゃ!」
「足跡???」
まあ、そりゃ『?』になるよな。ちゃんと説明してくれよ。て、ミミにそれを望むのは無理があるか。
「あらあら、坊ちゃまが今そこを歩こうとしておられたのですよ。誰の足跡も付いていないから、喜んでおられたのだと思いますよ」
まあ! おフクったら完璧じゃないか! 俺は感心を通り越してびっくりしたぞ。さすが、俺の乳母だ。
「なんだとぉッ! ラウ!」
ポイッとミミを投げ捨てて、俺を抱き上げる父。
こらこら、一応ミミは飛べるから良いものの、そんなことをしてはいけません。
「ラウ! 父様が悪かった! あっちにまだ足跡が付いていない場所があるから、そこに行こう!」
「あばー」
ええー、もういいや。テンション下がっちゃった。
「あぶあぶ」
「あら、ジュースですか? お部屋に戻りますか?」
「あう」
「ラウ! 父様と歩こうなッ!」
「あばー……」
ええー、俺ちょっとお喉が渇いちゃったんだけど。
「アハハハ! 殿下、もう嫌みたいッスよ」
「アンジー! お前も悪いんだぞッ!」
「いやいや、なんでッスか!?」
父とアンジーさんってさ、いつも賑やかで仲良しだね。
結局俺は父に抱っこされて、四阿の方へ連れて行かれた。
そこは、誰も入っていない新雪が真っ白な絨毯のように残っていた。これはちょっとまたテンションが上がっちゃうぞぅ。
「どうだ? 綺麗だろう?」
「あばー」
「この綺麗な世界を守らないといけない。皆の平和な暮らしもな」
父が雪景色になっている庭を見ながらそう言った。
庭の木や植木の枝に雪が綿帽子のように積もっている。風が吹くと、どこからかハラハラと雪が舞ってくる。カラリと晴れた太陽に反射して、キラキラしていて目も眩む雪景色だ。
シンと静まり返って、いつもの朝とは少し違う。雪のせいで、馬車も走れないのだろう。
「あぶあぶ」
俺は降ろしてくれと、父の腕をペチペチと叩く。
「歩くか? 父様と手を繋ごう」
「あう」
大きな父の手に支えてもらいながら、一歩一歩ゆっくりと雪の上を歩く。空は薄い水色の空が広がっている。
父はこの大きな手で国を守っているんだ。俺も父に守られている。ああ、俺がもっと大人だったなら……
「ラウ、ゆっくりでいいと前に言ったのを覚えているか?」
父がそんなことを言い出した。俺が生き急いでいるみたいに、思っているのか?
そんなことはないぞ。やりたいことがいっぱいで、早く大人になりたいとは思っているけど。
「ラウが、立った。ラウが喋った。ラウが歩いた。全部私たちには宝物なんだ。ゆっくりでいい。ゆっくり私たちに希望を見せて欲しい」
俺の成長が希望だと言った。前の時、俺は一体何を見ていたんだ。こんなに愛情を込めて育ててもらったというのに。
今回は俺が守るから、必ずあの最悪の最期を変えてみせる!
「何を考えているのか、私には分からないが。どんなことがあっても、私と母はラウの味方だ。ラウを心から愛している」
「あぶ」
本当に愛おしそうな表情をして俺を見る父。その父を見上げながら、俺は一歩を踏み出す。
この一歩が大事なんだ。父がいうように急がないよ。ちゃんと一歩ずつ着実に歩いて行く。
『ふふふ、ラウったら忘れているのかしら? 今日はホワイトクリスマスね。ラウ、メリークリスマス!』
突然、精霊女王の声が頭の中に響いた。ここでそれを言うか!? また見ていたんだな。
「あばー!」
「ラウ、どうした? もしかして、私の言っている意味が分かっているのか?」
そうか! クリスマスなのか! あー! 言えねー! 喋っても『あばー』とかしか言えねーじゃん!
なんてこったい、来年は父と母にちゃんと言うぞ。
メリークリスマス! てさ。
「あぶあ!」
俺は思わず決意の拳を上げた。今日はクリスマスなんだってさ。
メリークリスマス!
お読みいただき有難うございます!
宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
いやぁ、ラウのお話が全然アイデアが浮かばなくて焦りました。できたてホヤホヤです(^◇^;)
赤ちゃんラウを久しぶりに書きたかったのです。
いかがでしたでしょうか?
今日、ラウ②の見本誌が届きました。クリスマスプレゼントみたいだと思いませんか?
もしや、担当さんの粋な計らいだったのでしょうか?(^◇^;)
明日はお休みさせていただいて、明後日から通常の投稿に戻ります。
でもまたお正月が来ますからね〜。
どうしましょう?(^◇^;)
来年はラウ②が発売になります。
よろしくお願いいたします!(ᴗ͈ˬᴗ͈)♬♡




