233ーヤバイ!
「お早く、こちらです!」
と侍女が先を急ぐ。王子の部屋に着くと、部屋の前には護衛の近衛兵が何人も立っていた。父を見つけて敬礼をしている。
父の顔を知っているんだ。父は王弟殿下だからな。その父がちびっ子の俺を抱っこしている。敬礼してはいるものの、目線は俺だ。
このちびっ子を通しても良いのか? とでも思っているのだろう。
「私の息子だ。入るぞ」
「はっ!」
問答無用で入っていく父。ヤバイ状態だと感じているんだ。
部屋に通され案内されると、そこには医師らしき老齢の男性が大きなベッドを覗き込んでいた。そばには王と王妃の姿も見える。
何だ? 一体どうしたんだ? とにかく俺は黙ってキョトンとしている。ミミまでずっと黙っている。おフクは何事なのかとただ戸惑っていた。
「陛下、老師です」
アンジーさんが声を掛けると、弾かれたように王がこっちを向いた。
「老師! ルシアンが!」
「なんじゃ、どうしたんじゃ!?」
ご説明いたします。と言ってベッドのそばにいた王子の従者が説明してくれた。
俺たちが会いに行く前、王子はいつも通りお勉強をしていた。家庭教師に教わり、分厚い教本を開いて教わっていた。
その王子が突然、ゴボッと血を吐いた。本当に何の予兆もなく突然だったらしい。驚いた教師は、すぐに護衛を呼んだ。
護衛はすぐさま王子を抱き上げ、部屋へと走った。この状況を見られてはいけない。誰が何を考えるか分からない。どう突っ込まれるか分からない。変な噂になってはいけない。
できるだけ迅速に、その場を去った。そしてもう一人の護衛は、現場に残り教師を見張った。
一応何があったのか分かるまでは、その教師は拘束される。といっても牢に入れられたりはしない。だが念のため、城の中の部屋に軟禁され外部との接触を断たれる。
とにかく血を吐いたんだ。真っ先に考えられたのが毒だ。
この国は平和だ。貴族が何かを企んでいるわけでもない。継承を争っているわけでもない。
それでも王族が血を吐いたとなると毒を疑われる。まして第1王子だ。末は王太子で王位継承権第1位の立場にいる。
だから老師を呼びに行ったんだ。もちろんすぐに医師も呼ばれた。そしてその医師がどう診断を下したのかだ。
「王子殿下はどうして吐血を? その原因は分かっているのか?」
「いえ、それが……多分いえ、十中八九毒だろうと思われます。ですが、何の毒なのか判明しておりません」
まだこれから王子が吐いた血液を分析するところだと、医師は説明した。
「なるほど、それでワシか」
「はい、老師。お願いします」
「よし、分かったぞ」
老師がいつになく真剣な表情で、王子が寝かされているベッドのそばに行く。
「老師、頼む!」
「陛下、ワシにできることはいたしますぞ。しかしこれは……」
どうした? 毒なら早くアンチドーテを。と俺が思っていたら、徐に老師が俺を呼んだ。
「ラウ坊、見れんか?」
「え……ぼくれしゅか?」
「ラウ、試してみてくれ」
「あい」
父に抱っこされたまま、俺は王子を見る。
「え……」
額に汗が浮き出てギュッと目を瞑り、胸の辺りを掴んでハアハアと苦しそうな息をしている王子。しかも顔色が土気色をしている。
こんな顔色を初めて見た俺は驚いた。いつもの王子と違いすぎて、思わず固まってしまった。
「ラウ、しっかりするんだ」
「あ、あい。とうしゃま」
いかん、しっかり見ないと。と気を取り直して王子を見る。だけど、俺にも毒だということしか分からなかった。
一体なんの毒なのか? いや、これは毒だけじゃないような気もするのだけど、なにしろ分からない。今の俺には能力も経験値も不足している。
「やばいみゃ」
俺の肩でミミが呟いた。
「え、みみ?」
「これは、どくらけじゃないみゃ」
「やっぱりしょうなの?」
「しょうみゃ。とにかく、はやくあんちどーてみゃ」
「老師、アンチドーテだそうです」
「おう、任せろ」
老師が王子に向かって両手を出した。そして静かに深く息をすると、フワリと王子の身体が白い光に包まれた。
前から思っていたのだけど、老師は大抵無詠唱だ。今だって普通は「アンチドーテ」と唱えるはずなんだ。老師はそれをしない。
「ふぅ~、ラウ坊、どうじゃ?」
「みてみる」
老師がアンチドーテをしたことで、毒は消えていた。消えていたはずなんだ。
「え!? だめ、またどくれしゅ」
「なんだと? 今アンチドーテしたじゃろう?」
「しょうなの。いったんどくはきえたの。なのに、またじわじわどくが!」
「なんじゃと!? そんなことがあるのか!?」
「あんちどーてだけじゃ、だめみゃ。けろ、いまはあんちどーてしかないみゃ」
「みみちゃん、どういうことじゃ!?」
そんな話をしているうちに、一旦落ち着いた呼吸になっていた王子がまた少しずつ苦しみ出す。一度は消えた毒が、復活するってどういうことなんだ? そんな毒があるのか?
「ないみゃ。どくらけじゃないみゃ」
ああ、そっか。最初にミミはそう言ってたか。毒だけじゃないって?
「どくと、のろいみたいみゃ?」
「呪いじゃと!?」
「いちおう、のろいのいっしゅみゃ?」
「じゃあ、解呪か!?」
「しょれもやってみるみゃ?」
なんでずっと疑問形なんだよ!
お読みいただき有難うございます!
宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
さて、ここからどうやってあそこまで持っていこうか?(^◇^;)
いつもほんわかしたお話を中心に書いているので、陰謀みたいなのは苦手なのです。私の頭は単純なので(^◇^;)
ラウはそれに挑戦しているのですが、しょっちゅう頭をかかえてます。ちびっ子が主人公なので、やりすぎては浮いてしまいます。
基本、ほんわかを忘れずに。張り詰めた空気を和ませてくれるのか、ミミちゃんです。
本当にミミちゃんには助けられてます(^◇^;)
この先も頑張りますので、最後まで読んでいただけると幸いでごじゃいましゅ。
よろしくお願いいたします(*ᵕᴗᵕㅅ)✽*。✽
ノベルの2巻が来年1月に発売になります!よろしくお願いいたします!




