23ー呪術はだめ
「ラウの可愛らしさに、目を奪われている時がチャンスだったんだ」
「ええ、そこが一番大事なところですわ」
「あばー……」
「らうみぃのちちしゃまは、ちょっとかわってるみゃ」
あ、ミミ。それは禁句だろう?
「ミミ、今何か言ったかぁ?」
ほら見ろ、父が睨んでいるぞ。冷たい空気になってきたじゃないか。
「なんれもないみゃ。しゅごいしゃくしぇんみゃ」
「そうだろう、そうだろう」
ああ、先が思いやられるぞ。それにしてもミミの奴は変わり身が早い。
「その後、アンジーが貴族に接触した」
おう、なら上手くいったんだな。
「それがだ。信じてもらえなかった」
「盲目とはこの事ですわね」
父と母も、俺に関しては盲目だと思うぞ。
アンジーが貴族に説明したらしい。こういう嫌疑が掛けられていて調査中だと。もちろん、他国の人間だとは明かせない。
だが、貴族は彼女に限ってそんな事はない。何かの間違いだと言って聞かなかったらしい。
「すんません、遅くなったッス」
と、アンジーが部屋に入って来た。なんだか疲れている。
「あれは駄目ッスね」
「聞かないか?」
「はい、彼女はそんな人間じゃないの一点張りです」
「だが、アンジー」
「はい、分かってます。彼女の出自が問題ッス」
アンジーは調べていた。その真紅の髪を持つ種族を。
隣国デオレグーノ神王国にも父の部下が密に潜り込んでいる。その者からの報告だ。
「その集落には近寄れないらしいッス」
厳重に管理され、部外者は近寄る事さえできない。それだけじゃない。普通の民達はその集落の存在さえ知らない。勿論、どこにあるのかも知らないそうだ。
だから多分あの辺りにあるだろうと言う事位しか、分からなかったらしい。
その集落の者は自由に出る事ができない。管理されているんだ。まるで大きな牢獄だ。
「集落の人間はそれで何も文句はないのか? 自由がないだろう」
「殿下、ですからあの国全体がそんな感じなんス」
「ああ、そうだったな」
デオレグーノ神王国はこの国の半分もない小さな国だ。そんな国が何を企んでいるのか?
「小国家だからこそできる統率といったところか」
「洗脳に近いですね。今回は呪術師の集落出身者です。そこがヤバイッス」
「やはり呪術か?」
「いや、まだ分かりません。俺には呪術が使われているかなんて、判断できないッスから」
貴族は女性に呪術を掛けられていると言う事だろうか?
「じゅじゅちゅは、らめみゃ」
「ミミ、何か知っているのか?」
「しらないみゃ。じゅじゅつは、らめみゃ。しぇいれいじょうおうは、きらうみゃ」
起きていたのかよ。てっきり眠っていると思っていた。
「みみは、おきてるみゃ。らうみぃのほうがやばいみゃ」
「ばうぅ」
まあな、俺はもうお眠の時間だからな。
「呪術は人を駄目にするのよ~」
母の使い魔、リンリンだ。母の肩にフワリと留まった。
ふんわりとお花の匂いがしてくるから不思議だ。
「あれは呪術を、発現させるための媒体も駄目だ」
父の使い魔、フェンだ。なんだか詳しそうだぞ。
「強力な支配をしたい時に、人の命や血液を媒体に使う場合がある。そんな事は自然の理に反するんだ」
「フェン、詳しいのか?」
「いや、詳しいって程じゃない。俺達だって呪術は嫌いだからな」
「私達とは正反対の存在なのよ~」
精霊は超自然的なものだ。精霊女王と精霊王がそのトップにいる。
だが、国を成している訳ではない。それでも。精霊女王と精霊王の元に皆が集う。
精霊が集う場所は、誰も知らない。エレメンタラーである母でも知らない。
「手っ取り早く、その女性を拘束しましょう」
「それしかないだろうな」
幸い今の相手の貴族は分かっているんだ。その貴族を追っていれば、必ず接触してくる。そこで女性を捕らえる。が、飽くまでも秘密裡にだ。
そんな事ができるのか? できるのだろうな。そう当然のように父とアンジーは話しているから。
「ぶぅ……」
「あらあら、お眠だわ。フク、お願い」
「はい、奥様」
俺はおフクに抱っこされ、部屋を後にした。もちろん使い魔のミミも一緒だ。
もうミミは俺の肩で半分眠っている。こいつもいい加減なのもだ。
「みみは、がんばったみゃ」
「ばうあー」
「はちゅげんしたみゃ。りっぱな、はちゅげんみゃ」
「あう……」
発言っていっても一言じゃないか。結局それも知らなかったのに。
「はちゅげんしゅることに、いみがあるみゃ。りっぱなことみゃ」
「あうあ」
まあ、いいや。とにかく俺は眠い。
部屋に着く前に、フクの腕の中で眠ってしまった。
翌朝、父が出掛けるので玄関で母と一緒にお見送りだ。
「ああ、離れるのが辛いぃッ!」
「あなた、アンジーが待っていますわ」
「ラウ! 可愛いぃがすぎるぞぅ!」
俺を抱っこしている母に抱きついて離れようとしない。
「はいはい、毎度の事っスね~」
そういいながら、アンジーさんにベリッと剥がされ連れて行かれる。
「な、な、何をするぅッ! アリシアァ! ラウゥーッ!」
そう叫びながら、アンジーさんに引きずられて行った。どこが『氷霧公爵』なんだか、俺にはさっぱり分からない。
「あばあー」
本当にいつも懲りないな。面倒だ。
「らうみぃ、しょれいったら、らめみゃ」
「あう」
ミミに言われてしまった。
「さあ、ラウとミミも魔法の練習をしましょうね」
「あぶ?」
え? そうなのか?
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こんなに0歳児を続ける予定ではなかったのですが、まだまだ0歳児です。^^;
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