225ー老師は特別?
老師が真剣なお顔をして俺に聞いてきた。
「ラウ坊、これは回復魔法ではないのぉ?」
「えっちょ、しょんなのじゃなくて、ぼくのまりょくを、ちょびっとらけわけたの」
「なんじゃとぉッ! 魔力譲渡かぁッ……!?」
ストンと椅子に座り、以前はあったのだろう顎髭を触ろうとしてスカッと空振りしている。
「回復魔法はかけてもらっていたのじゃ。じゃがワシは年だからのぉ、大して効果がなかったんじゃ。しかし、ラウ坊のこれは違うじょ。まるで若い頃に戻ったみたいじゃ」
「とうじぇんみゃ。らうみぃのは、わるくなるまえにもどしゅみゃ」
ミミが俺の肩で胸を張りながら、自慢そうに言った。自分のことじゃないのに。
「ミミちゃんッ! 悪くなる前に戻すと言ったかぁッ!?」
「なんみゃ? うるしゃいみゃ」
あれれ? そういう表現をすると、魔力譲渡じゃないのかな? ミミ、どうなんだ?
「しょうらけど、しょうじゃないみゃ」
また意味の分からない言い方をしている。そうだけど、そうじゃないって結局どうなんだ?
「らうみぃのまりょくを、ちょびっとだけじょうとしてるみゃ」
俺の魔力を少しだけ譲渡している。それは分かっている。だけどそうじゃないんだろう?
「しょれによって、いたむまえのじょうたいに、もどしているみゃ」
ほうほう、じゃあやっぱ魔力譲渡なんだね。
「らから、しょうらけろ、しょうじゃないみゃ」
違うだろう? 魔力譲渡をした結果、悪くなる前に戻ったということなのだろう?
「しょうともいうみゃ」
らしいよ、老師。と老師を見ると、その場でエッホエッホと掛け声を掛けながら、スクワットをしていた。話を聞いちゃいない。
こらこら、急にそんなに動いたら駄目なのじゃないか?
「ワシ、今めっちゃ元気じゃ!」
老師の側で、レイラちゃんがアタフタしているじゃないか。ほら、心配かけたら駄目だよ。ここは父にスパッと言ってもらおう。
「老師、そこはもっと姿勢をこう……」
いやいや、指導しなくていいから!
「とうしゃま、ろうし、おちちゅきましょう」
収拾がつかなくなってきている。いつもツッコミを入れるアンジーさんはどこ行った? 俺一人だと無理だぞ。
「殿下、老師、まだッスか?」
ぐったいみ〜んぐ! アンジーさんがやってきた。部屋の中を見て、俺に聞いてくる。
「ラウ坊ちゃん、なんスか、これ?」
「ろうしがね、はりきっちゃって」
「あー、またッスか」
ほら、レイラちゃんも縋るような目でアンジーさんを見ている。どうにかして欲しい。
「はいはい! そこまでッス! 行きますよ!」
アンジーさんが、パンパンと手を叩きながら大きな声で言った。
「なんじゃ、アンジー。ワシは復活したのじゃぞ!」
「急に動いたらまた痛めますよ。それより、移動しましょう」
サラッと流されてしまった老師。まあでも、治って良かったね。
「それにしてもラウ坊。これは他所ではしてはいかんぞ」
「それは老師だから特別です」
「そうかそうか? ふぉッふぉッふぉッ! ワシは特別か!」
ご満悦な老師だ。でも父はいろいろ言葉を端折っている。正確に言うと『老師が動けないと事が進まないので特別です』が正しい。それは言わないけど。
この魔力譲渡、俺がしていることはほんの少しだけ手のひらから魔力を流している。
それだけなのに、いろんな効果が不随するらしい。母に一度してからは時々、またしてほしいと言ってくるようになった。でもそれは駄目。とリンリンが言っていた。
何故なら俺の場合その不随するものがあるから、何度もするものではないらしい。
ただの魔力譲渡ならその時だけで終わる。でも俺の場合効果が持続するというか、前の状態に戻してしまう。
例えば母ならお肌がピチピチになって艶や血色が良くなった。それと同じように、老師は傷める前の腰の状態に戻ったわけだ。
これは回復魔法のエキスパートである白魔術師の老師でさえできないことらしい。
俺自身は特別何かをしているわけでもないので、どうしてそうなっちゃうのかは分からない。
『多分ジョブだけじゃなく、加護の問題だと思うのよ~』
リンリンが、コッソリ教えてくれた。だから滅多なことでは使わないと決めている。
「忘れるとこじゃったわい。今日はミミちゃんが見てくれるのかのう?」
「みゃ? みみはしないみゃ。めんどうみゃ」
相変わらず、塩対応だ。最初からミミには期待していないけど。
「らうみぃ、なんみゃ! みみはてんしゃいみゃ! どんと、きたいしゅるみゃ!」
「しょうらね。れもきょうは、ふぇんでじゅうぶんらって」
「みゃ? しょうみゃ? なにしゅるみゃ?」
やっぱ分かっていなかった。そうだと思ったよ。
「老師、基本的にフェンに確認してもらう」
「そうなのか? リンリンちゃんじゃなくて、残念じゃのぉ」
そんなことを言ってはいけない。普段フェンもリンリンも大人だから快く対応してくれてるけど、そんなことを言ってフェンがヘソを曲げたらどうするんだ?
「しぇいれいが、しゅるひちゅようないみゃ」
ほらみろ、分かっていないミミなのに『精霊がする必要はない』なんて言い出したぞ。




