217ーオヤツタイム
ホイップクリームをたっぷりとつけて、パクリとお口に入れた。
このホイップクリームはめっちゃまろやかで美味しいな。やっぱさすがシェフだ。
「しぇふ、とってもおいしいね!」
「本当、美味しいわ」
「ありがとうございますッ!」
ちょっと涙を溜めながら、パァーッと嬉しそうにシェフが笑った。なんで涙ぐむんだよ。そんなに嬉しいのかな?
薬草が温室の穏やかな温かさの中で葉を生き生きと伸ばしている。俺は分からないけど、この中にはきっと希少なものもあるだろう。そしてテーブルセットの周りには母の好きな花が咲き乱れている。とっても平和で、ここにいるとうちの事情なんて忘れてしまう。
「かあしゃま、きれいれしゅね」
「ふふふ、そうでしょう?」
きっと庭師と一緒に母が丹精込めて育てているんだ。それを眺めながらのんびりと皆でティータイム。いいね、こんな日常が俺は好きだよ。
なのに、その雰囲気をぶった切るかのような声が温室の入り口から聞こえてきた。
「な、な、なんじゃぁー! ここはぁーッ!?」
この声は老師だよ。今日も来たのか。最近毎日と言って良いほどやってくる。しかもオヤツタイムを狙ってくるから質が悪い。
「あら、今日もいらしたわよ」
「にぎやかれしゅね」
一体何に驚いているのか? 声のした方を見ると、老師がガビーン! と音がしそうな表情で温室を見ている。
「この温室は秘密だったのに、老師ったら」
もう邸の人間には老師は顔パスだ。きっとここにも誰かが案内したのだろう。いいのか? 秘密だと母は言ったけど。
「仕方ないわね~」
母が苦笑いをしながら、優雅にお茶を飲んでいる。
「奥様、よろしいのですか?」
「コニス、もう来たのだもの仕方ないわ。お茶を用意してちょうだいな」
「かしこまりました」
コニスとおフクも一緒にオヤツタイムだったのだけど、老師のお茶を準備する。シェフは急いで戻って行ったから、きっと老師の分を持ってくるんだ。
入れ違いにどんどん中へと入ってくる老師。今日もレイラちゃんが一緒だ。もうニコイチだね。
「れいらちゃん、おいれ」
「……!」
目がキラキラしているのだけど、何か言ってほしいな。相変わらず言葉が少ない。
「こっちきて、しゅわって。しぇふがおやちゅを、もってきてくれるからね」
「……!!」
きっと心の中ではまた、はわわ~! と思っているのだろう。キョロキョロしながら、あちこちを見て回っている老師を放りっぱなしでこっちにやって来る。
そしてやはり、テーブルの上で桃ジュースを啄んでいるミミにロックオンだ。
「なんみゃ? またきたのみゃ?」
「ひょぉー……!」
あ、ちょっとだけ声が出たね。やっぱミミに興味津々らしい。
「ここにしゅわって、おやちゅたべようね」
コクコクと頷くレイラちゃん。一度は座ろうとしたのだけど、そこでレイラちゃんは気付いた。慌てておフクとコニスのところに行って手伝おうとした。あわわわ、どうしよう~! なんて思っていそうだ。
「レイラちゃん、いいわよ。座ってなさいな」
「そうよ、気にしなくて良いわ」
おフクとコニスは、レイラちゃんに優しい。老師付きといってもまだ年若いし、あの老師に付くなんて大変でしょう? みたいな空気が流れている。老師から見れば、孫みたいな歳だものね。
いいのかな~て空気を出しながら、レイラちゃんが戻ってきた。
「いいよ、れいらちゃん。しゅわって」
俺のお隣の椅子を指すと、遠慮気味にやっと座った。こんなところも俺は好きだよ。老師に付いてきているから当然だと思っていないところがいい。自分はメイドだからと、ちゃんと立場をわきまえている。
そんなことは全然気にしていなさそうな老師が、やっとテーブルセットまでやってきた。
「なんじゃ、ここは! 図鑑でしか見たことがない薬草があるではないかぁッ!」
え、そうなの? 希少なのだろうとは思っていたけど、そこまでとは思わなかったよ。
「老師、私が育てているのですよ」
「も、もしかして、あれか!? 5年前の疫病の時に薬湯が作れたのは!?」
「ふふふ、秘密ですわよ」
なんだ? 5年前って俺が生まれる前じゃないか。そんなことがあったのか?
「なんて運が良いのだと単純に思っておったぞ!」
「あら、そう思っていていただいて良いのですわよ」
「しょ、しょ、しょんなわけなかろうてッ!」
老師って興奮するとよく言葉に詰まるよね。
「ろうし、しゅわって」
「ラウ坊、なにを食べておるんじゃ?」
「きょうのおやちゅらよ」
「うましょうじゃのぉ~」
「ほら、しぇふがはしってもってきてくれてるよ」
温室の入り口からワゴンを押したシェフがダッシュしている。そんなに慌てなくても良いのに。
「ふぉ~ッ! これはすまんのぉ~!」
そんなことを言いながら、絶対にオヤツの時間を狙って来ているよね?
「老師、今日はどうされましたの?」
「しょうじゃ、それじゃったわい」
どっこいしょと言いながら座ると、ふぅ~ッと息をついた。
「この歳になるとのぉ、城からここまでくるのにも疲れるんじゃ」
「あら、老師。徒歩で来られているのですか?」
「そうじゃよ。こんな近くに来るのに、馬車なんて使っておれんわい」
あら、そうなんだ。俺は馬車でしか城に行ったことがないけどね。
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宜しくお願いします。
ラウの更新が遅くなってしまいました。申し訳ありません。
なんか、迷走しているのです(๑•᎔•๑)ウ~ン…
でも頑張ってラストまで書きますよ〜!
読んでいただけると嬉しいです⸜( ˶'ᵕ'˶)⸝
ハルちゃんが発売されて、明日で10日になります。
もう読んでくださった方もおられるようで、ありがとうございます!
リリやロロみたいに大きな改稿はありませんが、チマチマと小ネタを加筆していたりします。
可愛くて鬼強いハルちゃんもよろしくお願いいたします!
明日はトラブルがない限り、ロロを投稿できると思います。多分です(^◇^;)
ハルちゃん3巻を!よろしくお願いします!




