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214/216

214ー文通だって

 老師とレイラちゃんはしっかりとオヤツを食べて帰った。一体何をしに来たのだろう?


「ふふふ、余程悔しかったのね」

「かあしゃま、くやしいれしゅか?」

「そうよ。老師も魔王城に行きたかったから」

「ああー」


 でもそれは駄目だ。できるだけ最小限の人にしたい。もしもということがあるだろう? どんなもしもかって?

 魔王城へ行くまではミミに乗るんだ。そしてあの北の山脈を越え魔素濃度の高い魔国へ入る。その間、もちろん何もないはずだ。だけどな、老師だとちょっと心配なんだ。

 ミミが風魔法を使って風圧を軽減してくれている。シールドだって張ってくれている。だけど、もしも何かのはずみでミミから落ちたりなんかしたら最悪だ。助けられるか分からないだろう?


「しょんなことないみゃ。みみはかんぺきみゃ」

「しょうらね」


 はいはい、こういうのもちょっぴり飽きてきた。


「らうみぃ、なにいうみゃ!」

「みみは、てんしゃいらものね」

「とうじぇんみゃ!」


 小さな体でふわっふわの胸を張る。鳩胸か?

 そんなことより、捕らえられた者たちだ。実は呪いと言っても、前の深紅の髪の女性がしたような強烈なものではなかった。

 同じ種族なんだけど、男だ。男は女性ほどの呪術は使えないと分かっている。

 男たちが使ったのは、単純なものだった。老師が簡単に解呪していたし。

 何かを無理矢理させられるわけでもない。ただ単純に何もする気がなくなるんだ。それこそ食べることや寝ることまで。

 それって凄く大変なことなんだ。ずっと食べなかったら人はどうなる? ずっと眠らなかったらどうなる? 日に日に衰弱していき、最悪は死にいたる。

 当然だ、食べないし眠らないのだから。

 とんでもなく、たちが悪いと思わないか? 最悪だよ。しかも魔術師団が見ても呪いだと判別できなかった。掛けられた本人も気付かないうちに衰弱していく。

 一体何がしたかったのか? 今回捕らえた者たちもサイラスが尋問をしたが、国からの命令は話さなかった。いや、話せないんだ。

 何故かというと、彼らにも呪詛が掛けられているからだった。どうもおかしいからと、父とアンジーさんがフェンに見せて分かったことだ。

 計画の内容や指示したものに関することを話そうとすると、突然喋れなくなる。万が一、その呪詛を解呪されたら任務に関することは全て忘れてしまう。そんな呪詛を掛けられた上での任務遂行だ。

 そこまでするか? 本人はどう思っているんだ? それを受け入れているのか? あの国は自国の人間でも、人間扱いをしていない。本当に腹が立つ。

 尋問の後、どうせ話せないのならと呪詛を解呪され魔術師団に魔法封じを施された。

 そして、どうしたいか老師が聞いたそうだ。それもお人好しすぎると俺は思うのだけど。俺なら強制的に鉱山の労働へ送ってやるのに。


「呪詛を解呪した後の彼らを見ているとな、気の毒になるんじゃ」


 老師はそう言っていたらしい。


「老師はあの深紅の髪の女性のことも気の毒に思っていらしたから」


 そうだよな、最後なんて老師がいなかったら一人寂しく逝っていただろう。


「今回もそうなのよ。でも密入国者で犯罪者には変わらないわ」


 そうだよな、まだ命を落とした者がいなかったのは幸いだった。

 今回捕らえた者たちも、国には帰りたくないと言ったそうだ。

 家族はいないのか? と聞かれても、血のつながった者ならいるが家族といえるような関係ではないと答えるそうだ。

 一体どうなっているんだ? どんな国なんだよって思ってしまう。

 結局、魔法や呪詛が使えなくされてこの国で強制労働に就く。当然だ。そこまでこの国は甘くはない。いや、十分甘いかも知れないけど。

 ここでも老師が強く訴えた。命は助けてやってほしいと。もう何もできないからと。

 万が一にもデオレグーノ神王国の者と、コンタクトを取れないところでの強制労働だそうだ。何をするのか詳しくは俺は知らない。


 さて、諸々一段落したことだし。そろそろいいかな? と思うのだけど。

 何かというと、アコレーシアに会いに行くことだ。しばらく禁止令が出ていたから毎日花を一輪持って行くという俺の目標が達成できなくなっていた。

 でもさ、もういいと思うんだ。


「かあしゃま、いってもいいれしゅか?」


 期待を込めて、母に聞いてみた。


「ラウ、もう分かるでしょう? ラウだけじゃなくてアコちゃんのおうちも危険にさらすのよ」

「あい……」


 それは分かっているのだけど。


「それでも行きたいのなら、ラウがアコちゃんを守れるようになってからにしなさい」

「いまれも、まもれましゅ」

「あら、そうかしら? 大人に簡単に抱き上げられちゃうわよ。そして気絶させられたら、ラウは何もできないわ」

「えっちょぉ……」

「まだラウはちびっ子なの。いくら魔法が他の人より使えても、大人には敵わないことが沢山あるでしょう?」

「あい……」


 母の言っていることは分かるけど、ならずっと会えないのか? 俺が大人になるまでずっと?


「だからね、せめて時々にしなさい。普段は文通で我慢しなさいな」

「えー、ぶんちゅうれしゅか?」

「そうよ、それも勉強になるわ」

「あい……」


 俺は渋々納得した。いや、納得はできないけど。アコレーシアの家族にも危険がというのも分かるのだけど。

 それでも会いたかったんだ。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


投稿が遅くなってしまいました。

えっと、色々ありまして。活動報告をこの後投稿します。

よろしくお願いいたします。

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