207ーお決まり
「ぶぶふッ!」
これは誰の声かな? そうだよ、魔王の声なのだよ。だって俺が顔面に張り付いているから、こんな声を出しているんだね。
「これ、ラウ! あなたはいつもいつも、どうして狙ったように魔王様の顔面に張り付くのですか!?」
「アハハハ! あーしゅらん、きたよー!」
「とにかく離れなさい!」
いつものように転移して、魔王の顔面にしがみついている俺をベリッとアースランが引っぺがした。そしてそのまま抱っこだ。
「ラウ、よく来たな! 父殿もよく来た! 歓迎するぞ!」
そういえば、父たちはどこに着地したのかな? と見てみると、父は平然として立っていたのだけど、アンジーさんがうつ伏せでお尻だけを上げているという変な格好をしてた。
サイラスは片膝をつきながら眼鏡を片手で押さえている。うん、大丈夫そうだ。
「魔王しゃまー!」
パタパタと飛んできて魔王の肩に止まるバット。頭を擦り付けて甘えている。
「バット、ご苦労だっな」
「あい! 魔王しゃま!」
おや? ミミとフェンはどうした?
「ミミ! お前は自分で飛べるだろう!」
「らって、みみはちゅかれたみゃ」
フェンの背中に乗っているミミ。疲れたなんて言いながら、羽繕いをしている。
なんだかわちゃわちゃしてるぞ。一度落ち着こう。
「とうしゃま、らいじょぶれしゅか?」
「ん? あ、ああ。ラウ、驚いて声も出なかった」
何に驚いたのかな?
「ラウ、あれは木だろう? どうして動いている? ここは城の中なのだろう? どうして木が生えているんだ?」
「あー、あれはきのまものれしゅ。まえに、あーしゅらんがもってきて」
「ふふふ、ラウが喜ぶかと思いましてね」
「あーしゅらん、ありがとねー!」
「はい、ラウは可愛いですね」
まだ俺を抱っこしたままのアースラン。結構、俺を可愛がってくれる。いつもオヤツを用意してくれるものね。
「魔王、おしかけてすまない」
「かまわないぞ。それにしても、奴はまだ起きないが良いのか?」
転移してきたままの格好で動かないアンジーさんのことだ。
「あー、アンジー。お前は何をしている」
そう言いながら、アンジーさんのお尻をペシッと叩く父。そっとしておいてあげようよ。アンジーさんは怖がっていたし。
「で、で、殿下! 息できるッスか!?」
「何を言っている。フェンがちゃんとシールドで守ってくれているぞ」
「そうッスか」
ふぅ〜ッと大きく息を吐いて体を起こしたアンジーさん。そしてまたそのまま固まった。
「で、で、殿下!」
「なんだ、お前は煩いな」
「は、花が! 花が笑いながら動いてるッス!」
ああ、あれもアースランが持ってきたんだ。慣れたらなかなか可愛いよ。
なんだっけ? 前世でずっと昔にこんなおもちゃがあった気がする。それよりもっと、不気味だけど。
「アンジーでしたか? あなたは器が小さいですね」
「へ!? なんスか!?」
「花が動くのは当たり前でしょう?」
「当たり前じゃないッス! 普通は動かないし笑わないッス!」
アンジーさんは賑やかだ。サイラスは落ち着いているのにさ。おっと、額に汗が光っているじゃないか。
もしかしてサイラスも動揺していたりするのかな?
「さいらす、らいじょぶ?」
「ラウ坊ちゃん、何もかもが驚きでキャパオーバーです」
「えー」
全然そうは見えないけどね。
それよりもフェン、ありがとう。シールドを張ってくれるから助かるよ。
「ラウ、シールドくらい任せろ。今のラウの能力だと数分しか滞在できないだろう?」
「しょうなの。らから、いちゅもまおうが、しーるどしてくれるの」
「ラウ、そんな危険な場所に0歳から来ていたのか!?」
「アハハハ! 初めてラウが来た時はおどろいた! 何しろ顔面に転移してきてお漏らししたのだからな! ワッハッハ!」
「魔王様、笑い事ではありませんよ。しかしラウも大きくなりましたね。もうオムツはしてませんからね」
「あーしゅらん、ぼくはもう、あかちゃんじゃないの」
「ふふふ、そうでした」
オヤツを用意しましょうと言って、俺を魔王に渡すアースラン。
魔王も当たり前のように、俺を抱っこしてくれる。
「父殿、ラウが繋いでくれた縁だ。良い縁にしよう」
「ああ、よろしく頼む」
俺を抱っこした魔王と父が握手した。どっちが父なのか? て感じだ。だって俺は魔王に抱っこされてるし。
「まおう、とうしゃま、なかよくしようね」
「ああ、ラウ。当然だ」
「ラウ、私もだぞ。ラウの国には戦をしかけたりは絶対にしないと約束しよう」
俺の国だけだと駄目なんだって。その戦だけどさ、そろそろ本題に入ってもいいかな? みんな落ち着いたかな?
アンジーさんもやっと落ち着いたらしい。サイラスはもうアースランの手伝いをしていたりする。
「とうしゃま、あのくにれしゅ」
「ああ、デオレグーノ神王国だな」
「ラウと約束したからな。我が国から戦を仕掛けることはない」
「けろ、まおう。むこうからしてきたら、どうしゅるの?」
「それはもう、ポイッとするぞ」
そのポイッとが問題なんだって。デオレグーノ神王国が仕掛けてきたからといって、手を出してほしくないんだ。そんなことをしたら戦になってしまうじゃないか。
「ラウの国に影響がなければ良いのだろう?」
「しょうらけろ、いくしゃはだめ」
「あの国ともか? 向こうから仕掛けてくるぞ?」
「れも、くにには、はいってこれないれしょう?」
「ああ、いつも山脈の入り口までもたどり着けないらしい」
ね、ならそのまま放っておいてほしいんだ。
お読みいただき有難うございます!
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宜しくお願いします。
今日も暑いですね〜
車で動物病院に行くだけなのに汗だくになってしまいました。
もう明日で連休は終わりという方が多いのではないでしょうか?
事故や怪我のないようにお気をつけください。
さて、皆様予想されていたと思います。
期待を裏切らずラウはしっかり魔王の顔面に着地です(^◇^;)
アースランやアンジーさんは、なかなか良いキャラに育っていると思うのですがいかがでしょうか?
これから私は初稿作成を頑張ります!あと半分以上あるのですが、今日と明日でなんとかしたい!
プロローグを考えるのにえらく時間がかかってしまってヤバヤバです(꒪ཫ꒪; )
頑張りまっす!(๑•̀ㅂ•́)و✧
ラウの1巻、好評発売中です!
まさかの初の重版でした!ありがとうございます!