198ー見つかっちゃった
「坊ちゃま、どうされました?」
「あのね、ふくとぼくらけなら、てんいでいけるのになって」
「あら、それは駄目ですよ」
「だめ?」
「はい。坊ちゃまの転移は秘密ですからね」
ふむ、それはそうなのだけど。でもやっぱお顔が見たいよね。
おフクにお手紙を書いてもらって、それをアンジーさんに預けてもらう。しばらくは行けないだろうな。
部屋に誰もいなくなったタイミングで、バットが窓の外に張り付いてきた。
トコトコと大きな窓のそばに行って、そっと開けて中に入れてあげる。バットがこうしてやってくるのって珍しいじゃないか。
「ばっと、どうしたの?」
「ばっとみゃ。まらいたのみゃ?」
ミミったらそんな言い方はないだろう? バットだって見守ってくれているんだ。
「みゃ? みみがいるから、へいきみゃ」
「ぼくも見守るのれしゅ! あぶなかったのれしゅ!」
「あー、きょうかな?」
「しょうなのれしゅ! あんなのろいをちゅかうなんて!」
え!? ちょ、ちょ、ちょっと待った。バット、呪いって言ったか?
「ミミは分かるのはずなのれしゅ」
「え? みみ、しょうなの?」
「なんみゃ?」
「のろいらって、わかってたの?」
「なにがみゃ? のろいはかいじゅしたみゃ?」
ああー、これはミミは気付いてないぞ。バット、詳しく教えてくれ。
「信じられないれしゅ! 精霊なのに気付かないなんて!」
「みゃみゃみゃ! なんみゃ! みみはてんしゃいみゃ!」
バットがパタパタと飛ぶ後ろを、ミミが追いかけて飛んでいる。もう、部屋の中でやめようね。
「ぼくはすぐに気付いたれしゅ! あれは呪いで操られていたのれしゅ!」
「みゃみゃみゃ! しょうみゃ!?」
ほら、ミミったら分かっていない。だってミミだもの、そんなに優秀じゃないぞ。
「みゃ! らうみぃ、なにいうみゃ!」
俺の頭に乗ってきた。プンプンと怒っているらしい。だって、本当のことだもの。だってミミは気付いてなかったのだろう?
「らってみみは、しがみちゅくのに、ひっしらったのみゃ!」
え、そこ? そこなの?
「見ればわかるのれしゅ!」
「まじょくのばっととは、ちがうのみゃ!」
はいはい、分かったから落ち着こう。わちゃわちゃしている時に部屋のドアが開いた。
部屋に入ってきたのは、おフクだけじゃなく父と母もいた。まずい、バット隠れろ!
「みゃ、もうおしょいみゃ」
「見つかっちゃったのれしゅ!」
仕方なく俺の後ろに隠れるバット。ミミが言うようにもう遅い。しっかりガッツリとみんなに見られてしまった。
「ラウ……」
「とうしゃま、えっちょぉ」
「それは蝙蝠……ではないな? 小さな角がある。しかも今喋ってなかったか?」
バットが隠れながら、プルプルしているのが伝わってくる。怖がる必要はないぞ。バレたら駄目って魔王に言われたのか?
「魔王しゃまはしょんなこといわないのれしゅ! けろ、ぼくはこっそり見守るのれしゅ!」
「なに? 魔王だと!?」
ほら、自分で色々暴露してるじゃないか。
「見守るってラウをか!?」
父がズンズンと近寄ってきて、俺の後ろにいるバットの頭を片手でガシッと捕まえた。まただよ。父はこんな捕まえ方しか知らないのか? ミミも片手で捕まえられていたよな。
「なにしゅるれしゅか!」
「お前は何者だ?」
「ぼくはバットなのれしゅ! 魔王しゃまのペットなのれしゅ!」
自分で全部言ってるじゃないか。もう俺は庇えないぞ。
「ラウ! なんとかしてほしいれしゅ!」
「とうしゃま、はなしてくらしゃい。なにもしないれしゅ」
「おう? そうか?」
「はい、ばっとっていいましゅ」
「バットは魔王のペットなのか?」
そう聞きながらやっと手を離した父。バットが慌てて俺の肩に留まりにくる。まだプルプルと震えながら俺の頭にしがみ付いてくる。怖くないぞ。いつも見ているから知ってるだろう?
「らって、ちゅかまえられたのれしゅ」
「らいじょぶらよ」
よく考えたら、父よりバットの方が攻撃力は上じゃないか? バットは小さくても魔族なのだから。
「ラウ、そういう問題じゃないのれしゅ」
「どうして魔王のペットがラウのそばにいるんだ?」
「あら、よ~く見たら可愛いわね。バットちゃんっていうのね?」
「はいなのれしゅ! アリシアしゃま、よろしくなのれしゅ!」
「ふふふ、お利口さんなのね。ミミより頼りになるのじゃないかしら?」
「みゃみゃみゃ! ききずてならないみゃ!」
反対の肩に留まっているミミが羽をパタパタさせる。だから両側で騒ぐのは止めて欲しい。ミミも羽を羽ばたかせるんじゃないよ。
「みゃ? ごめんみゃ」
「うん、しじゅかに、おはなししようね」
「わかったみゃ。みみはらうみぃのちゅかいまみゃ」
「うん、しょうらね」
「ちぇんじはなしみゃ!」
「しないしない」
「しょうみゃ? ほんとうみゃ?」
「うん、しないよ」
「ならいいみゃ。ももじゅーしゅのみたいみゃ」
現金な奴だ。保身に走ったな。
両親とおフクが俺に注目をしている。バットさん、仕方ないね。説明して。
「ぼくは魔王の可愛いペットれしゅ!」
おっと、自分で可愛いと言ってるぞ。まあ、可愛いのだけど。
「ふふふ、可愛いわね~」
「いや、小さいが角があるし魔王のペットだと? 魔族じゃないか!」
「ラウを見守るように、いわれてるのれしゅ」
「あら、そうなのね~。ラウを守ってくれるのかしら?」
「はいなのれしゅ。魔王しゃまの命令なのれしゅ!」
これはもう全然隠せていない。