196-心配かけちゃった
俺はアンジーさんの馬に乗せてもらって、お邸に帰ってきた。馬ってさ、乗ってみると高いんだよ。3歳の俺にしてみれば未知の高さだ。いや、未知じゃないな。
「ひゃーッ! あんじーしゃん、たかいね!」
「怖くないッスか?」
「うん、こわくないよ!」
だってミミに乗っている時はもっと高いもの。
「みゃ、みみのほうが、たかくとべるみゃ」
「ミミちゃん、そりゃ鳥さんと比べたら駄目ッス」
とっても和やかに平和な感じで邸に戻ると、庭で両親とおフクがソワソワしながら庭先で待っていた。
「ラウ!」
「ラウ坊ちゃま!」
「あー! たらいまー!」
馬の背からブンブンと手を振る。ニカッと笑いながら。
「ご無事ですよ、怪我もありません」
アンジーさんに抱っこされて降ろしてもらうと、母とおフクが駆け寄ってきた。
「ラウ、無事で良かったわ」
「坊ちゃま、申し訳ありません! 私が抱っこしていたのに」
ほら、やっぱりおフクは自分の責任だと自分を責めている。
いきなりヒョイと搔っ攫われたんだから、不可抗力だよ。不意を突かれたのだから仕方ない。
「ふくは、わるくないよ」
「坊ちゃま……」
「らいじょぶらよ、ふく」
「フクの所為じゃないって言ってるのに聞かないのよ」
そう言いながら、母は俺を抱き上げ確かめるみたいにギュッとした。
平静を装って微笑んでいるけど、顔から血の気が引いているし指が小刻みに震えていた。心配かけてしまった。母の首に手を回して抱きつく。
「かあしゃま、らいじょぶれしゅよ。たらいま」
「ええ、ラウ。おかえりなさい」
やっと母の白い頬に血の色が差してきた。俺の額に自分の額をくっつけて微笑んでいる。
「ふふふ、かあしゃま」
「心配しちゃったわ」
「らいじょぶれしゅ」
「みみがいるから、らいじょぶみゃ」
「あら、ミミが助けてくれたのかしら?」
「ちがうみゃ、らうみぃのてんいみゃ」
「じゃあミミは、役に立ってないじゃない」
「みゃみゃみゃ! しょんなことないみゃ! みみもひっしで、ちゅかまってたみゃ」
そうそう、俺の肩に掴まってただけだね。
父も一緒に出迎えてくれた。
「ラウ、無事で良かった。アンジー、サイラス、ご苦労だった」
「はい、殿下」
「サイラス、そいつか?」
サイラスが男を抱えていた。まるで物みたいに脇に抱えている。男はまだ気がついていないらしくて、手足をだらりとして力が入っていない。
「はい、あとは護衛が」
「ああ、一体どこのどいつだ」
「これからしっかり話してもらいましょう」
「頼んだぞ」
「はい、お任せを」
サイラスさんがクイッと眼鏡を上げて、男を担いで行った。きっとこれから尋問という名の拷問をするんだぞ。怖い怖い。
「みみはちゅかれたみゃ、ももじゅーしゅがのみたいみゃ」
はいはい、我慢していたものね。
「ふく、みみにももじゅーしゅを、あげてちょうらい」
「はい、ご用意しますね」
おフクの表情がまだ硬い。これはまた後でもう一度ちゃんと話さないとな。
「フクは責任感の強い子だから」
「しょうれしゅね」
「私もまた話してみるわ」
「かあしゃま、おねがいしましゅ」
今更おフクがいなくなるのは嫌だぞ。俺の乳母はおフクしかいない。もう3歳だから乳母って歳じゃないのだけど。
少し遅くなったけど、おフクとメイドさんが用意してくれて母と一緒にお昼ご飯だ。
ミミも桃ジュースをもらって、無心に飲んでいる。
「ふぅ~、やっと落ち着いたわ」
母がスープを一口飲んで言った。俺もスープを飲む。温かいものを飲むと、自分も緊張していたのが分かった。強張っていた身体が解けていくみたいだ。やっとお腹が空いてきた。
父とアンジーさんたちは忙しそうだ。さて、サイラスの尋問に耐えられるのかな? 黒幕は誰なのかな? そう待たなくてもきっと分かるだろう。
「らうみぃ、しょれおいしいみゃ?」
「うん、あたたかくておいしいよ」
「しょうみゃ? みみもちょ~っとだけたべるみゃ?」
「らから、みみはたべられないれしょう?」
「しょうらったみゃ!?」
ミミって食いしん坊だよね。何度も食べられないと言われてるのに、いまだに食べると言うのだから。忘れっぽいのか?
「午後はもうゆっくりしましょうね」
「かあしゃま、きょうはまら、あこちゃんにおはなをもっていってましぇん」
「あら、今日も行くの?」
「あい、まいにちいきましゅ」
「ふふふ、じゃあお昼を食べたら行ってくる? 偶には私も一緒に行こうかしら?」
「かあしゃま、あるいていきましゅよ?」
「あら、馬車で行くわよ」
すぐそこなのに、母が一緒だと馬車だ。俺が裏口から出て歩いて行くのと違って、母が動くと目立つ。
いくら変装しても、隠しきれないものがあるんだ。母は生まれながらの侯爵令嬢だから、気品があるというのかな? オーラが隠しきれないんだ。
その点、おれはまだ3歳だからそんなものは全然ない。
きっと大人になってもないと思うけど。前の時、大賢者だった時にもそんなものはなかったと思う。
「久しぶりに会いたいわ」
母とアコレーシアの母は仲良しだ。といっても、母が父と婚姻してからは自由に会えなくなってしまった。父の仕事柄仕方がないのだけど。
そんなこと関係なく、俺は毎日アコレーシアに会ってるけどね。今日もお花を持って会いに行くんだ。
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宜しくお願いします。
遅くなってしまいました!申し訳ありません!
実は…先週の金曜日にソファーの脚で足の小指を思いっきり打ってしまって、腫れて青くなっていたのです。
それで整形外科に行ってきました。
あー、微妙やなぁ。これはどうかな?とお医者様がおっしゃりながら、レントゲンを撮ってもらうと、ほんの少しだけ折れてました。
残念やな、ちょっとだけ折れてるな。と言われました(^◇^;)
固定も無しでシップだけもらってきました。痛みもなくて、普通にスニーカー履いて歩いてます。靴を履くと、ちょっと痛いけど( # )ω³ )
去年も同じような時期に足の薬指を骨折しています。同じソファーの脚にやられました(>_<)
大したことはないので、全然いつも通り元気です!
皆様も気をつけましょう(*ノ>ᴗ<)
ラウ①好評発売中でっす!