195ーアンジーさんがいたから
男は進行方向を塞がれたものだから、俺を抱えたまま脇道に入った。
そこは建物の影になっていて、大通りよりずっと細くて人通りもない。
「あんじーしゃん!」
「坊ちゃん、今ッス!」
アンジーさんが馬を乗り捨て、脇道に入ってくるのを確認した。その後ろにサイラスさんの姿も見えている。
よし、転移すれば楽勝だ。と思っていたのに、俺はまた違う男にポ~イッと投げられた。脇道から出てきて俺をキャッチした男はそのまま別の道へと駆け抜けて行く。
「ひゃぁーッ!」
「坊ちゃん!」
なんだよ、なんだよー! 俺は荷物じゃないって言ってんだ! ポ~イッて投げるってどうなの!? そこは良いのか!? そんな扱いで良いのか! 俺は物申すぞ!
「坊ちゃん! 早く!」
「うん!」
アンジーさんがしっかりと後を付いてきている。その後ろにはサイラスさんの姿も見える。よし、今度こそ!
「みみ、ちゅかまってて!」
「みゃ! おっけーみゃ!」
ミミが力を入れたのだろう、俺の肩がちょっぴり痛い。足が食い込んでないか?
「みゃみゃみゃ! らっておちるのはいやみゃ! でんじゃーみゃ!」
はいはい、そうだね危険だね。
ほら、ミミ。いくぞ!
「あんじーしゃん!」
俺は一言叫ぶとそのままシュンッとアンジーさん目掛けて転移した。
俺が呼んだ瞬間にアンジーさんは立ち止まり、両手を広げてスタンバイしていた。そこに狙いを定めて転移する。
「ぶぶへッ!」
「きゃははは! だいしぇいこー!」
「みゃみゃみゃ! びっくりみゃ!」
ストンとアンジーさんの腕の中に出ようとしたのに、やっぱアンジーさんの顔面にしがみ付いている。俺はちょっぴりテンションが上がってしまった。
アンジーさんの頭にガシッとしがみ付いているけど、さすがにもう3歳だから出ちゃったりしないぞ。
顔面に俺をくっつけたアンジーさんを追い越し、サイラスが男に飛び蹴りを入れ一瞬で地面に押し倒した。
「クッソ! 離せ!」
逃れようと身体をバタつかせているけど、そんなの無理に決まってるじゃないか。だって捕まえているのがサイラスさんだから。
男の両手を後ろ手に捕まえているのだけど、軽く片手で持っているように見える。でも男がどれだけジタバタ抵抗しても、ピクリともしない。サイラスさんは涼しい顔をしている。
「ぐふッ! 坊ちゃん!」
アンジーさんに引っぺがされちゃった。ごめんね、転移すると何故かいつも顔面に着地するんだ。0歳児からの悪い癖だ。
でももう出ちゃったりはしないから、問題ない。無問題だ。
「びっくりしたねー」
「いやいや坊ちゃん、びっくりじゃないッス。怪我はないですか?」
「うん、ないよ」
「みゃ……ちゅかれたみゃ。みみはとってもとってもちゅかれたみゃ」
げっそりとしているように見えるのはなんでかな? 鳥さんなのに。
「みみは、ももじゅーしゅがのみたいみゃ」
「かえったら、もらおうね」
「みゃみゃ、いましゅぐ、のみたいみゃ」
なに無理をいってんだよ。今あるわけないじゃないか。
「みゃ、しょうみゃ? いじわるじゃないみゃ?」
「しょんなことしないよ」
「とにかく戻りましょう。殿下と奥様が心配してますよ。それにフクさんもッス」
あー、おフクはまた自分を責めるだろうなぁ。おフクはなにも悪くないぞと言うしかないのだけど。
アンジーさんに抱っこされ見ていると、男が三人掴まっている。
こっちに護衛の人たちが来ているから、父たちは大丈夫かな?
「全員来ているわけじゃないッスから、それに殿下もお強いから大丈夫ですよ」
「しょう? とうしゃまは、ちゅよいの?」
「当然ッス。俺はまだ勝てたことがないッスよ」
ええー、そんなになのか? 俺はアンジーさんでもかなりお強いと思うぞ。
「まあ、俺は騎士団に入るつもりだったッスから」
騎士団だって、ちょっとかっちょいいよね。
「えっちょ、おしろのなかに、いたひとたち?」
俺が何度が城に行った時、等間隔で立っている人がいた。揃いの制服を着て腰に剣を差して、かっこいいなぁって思って見ていたんだ。
「そうッスね。警備していたのは騎士団ッスね」
「ほかにもあるの?」
「王族の方々を警備しているのは近衛師団ッス」
「あー、しろいふくのひとたちら」
「そうですよ。坊ちゃんよく見てるッスね」
だって男の子ならきっと憧れちゃうと思うよ。鍛え上げられた身体は隊服の上からでも分かるくらいに精悍だ。あの隊服が良いよね。
「坊ちゃん、怖くなかったのですか?」
後ろからサイラスさんが話しかけてきた。男を一人肩に担いでいる。あれ、結局気絶させたんだ。
「こわくないよ。らってあんじーしゃんが、いたもの」
「ふふふ、なるほど。アンジー、良かったな」
「なんッスか!? 照れるッス」
アンジーさんがずっと追いかけてきてくれたから大丈夫だって思ってた。
それにしても街中で堂々と人攫いだ。黒幕は誰だろう? あの国なのか? それとも、父をよく思っていない貴族なのか?
「らうみぃ、みみはねむいみゃ。ねむねむみゃ」
「ねむってもいいよ」
「しょうみゃ?」
「うん」
眠って肩から落ちたら、そのまま放って行くから。
「みゃ! らうみぃったらひどいみゃ! おにみゃ!」
「ふふふ、じょうだんらよ」
「しんじられないみゃ。みみは、がんばるみゃ」
はいはい、すぐに家だからね。もう少し頑張ろう。
お読みいただき有難うございます!
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えー、現在初稿に追われてましてー(^◇^;)
週末は別のに追われる予定で(゜∀゜;)
何が言いたいのかというと、今日のお話はできたてホヤホヤでっす!ついさっきできました!
何度も読み直してますが、誤字がありましたら教えていただけると助かりますです。
いや〜、マジで、かなり、ヤバヤバでっすꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)アハハハ!
明日はロロの投稿です。スリリングで手に汗握りますね〜=͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)
これからロロを考えます!明日は動物病院にも行きます。きゃー!ヤバイですー!頑張りますー!(๑•̀ㅂ•́)و✧
(眠くてテンションも変です(^◇^;))
ラウちゃん1巻発売中でっす!