184ーピロロロロー
もっとはっきり見えないかな? 身を乗り出して見てみる。
『こりゃ、けっこういるぞ』
フェンにはちゃんと見えているらしい。俺も見たいぞ。
「思っていた以上か……」
父様もフェンの声を聞いている。どうする? この広い教会の中に一体どれだけの人がいるんだ? まだ外にも人がいるみたいだけど。どうしようっか?
「老師、分かりますか?」
「ん? ワシはじぇんじぇん分からんぞ」
老師は解呪はできても、不特定多数の人の中から呪いにかかっている人を見つけるのは無理らしい。
この人は呪いにかかっているらしいと言われると、それを確認することはできる。だけど、どうだか分からない大勢の人の中から判別するのは無理らしい。これはきっと魔力量が足りていないのだと俺は思う。
「殿下の使い魔は分かるのじゃな?」
「はい、かなりの数の人が呪いにかかっているそうです」
「ふむ、まだ外にも人がいるだろう?」
「ええ、そうなんです」
もっと始まる時間ギリギリになるのを待つ。
中でお話を聞く人や、ついてきて外で待っている人もいるらしい。中に入る人が途切れるまで待っていたのだけど、それでも外には何人もいそうだ。
「週に一度の娯楽みたいになっているのじゃな」
「しょうなんらね」
確かにこの世界に娯楽は少ない。貴族でもそうなのに、庶民になるともっとだ。毎日忙しなく働いている。そんな人たちの、週に一度の憩いの場なのだろう。
前世は娯楽に溢れていた。娯楽だけじゃない。教育に関してもこの世界はまだまだ発展途上だ。
外には小さな子供を連れている人たちもいる。ちびっ子はまだ静かに話を聞くことは難しいだろうから。
そんなちびっ子用に、教会に併設されている孤児院にいるシスターたちがお話をしてくれるらしい。この世界は精霊さんのおかげで、平和に暮らせるのですよ~って話だ。ちびっ子用に優しく、ちょっぴり楽しく脚色されているらしい。
それなら一層のこと、文字を教えれば良いのにと思ってしまう。
「殿下とワシは外に行くかの?」
「老師、そうしますか?」
「ああ、外の方がまだ人は少ないだろう」
ほとんどの大人は教会の中に入っている。主祭壇の前に司祭様が出てきたから、そろそろ始まるのだろう。じゃあ、中を俺がやっつけるか? ミミの出番だぞ。
「みゃ?」
「らから、みみ。ぴよらよ」
「ぴよよ」
忘れていたらしい。本当に、すぐに忘れるんだから油断できない。
ミミの活躍はいつ見られるのやら。
「ぴよ!」
ミミの凄いところをまだ見せてもらってないぞ。
「ぴよよ!」
「じゃあ、アリシア。私は老師と外に行く。アンジーはここに残ってアリシアとラウを守るんだ」
「はいッス」
二手に分かれて、解呪をすることになった。じゃあ、ミミ。フェンが父と一緒に外へ行ってしまったから、ここからはミミ頼りだぞ。大丈夫か? なんならリンリンに頼むか?
『なにいうみゃ! ミミはできるとりしゃんみゃ!』
いやだから、鳥さんじゃないだろう? 精霊さんだろう?
『しょうらったみゃー!』
やっぱとっても頼りない。母に言ってリンリンに頼んでもらうか。
『らからミミはできるしぇいれいみゃ! まかしぇるみゃ!』
そういうとミミが俺の肩からパタパタと飛んだ。あらら、ムキになっちゃったかな?
皆が座っている上空にパタパタと飛んで行ったミミはそこで旋回し出した。どうするんだ? 何をするつもりなんだよ。
『のろいをらうみぃにも、みえるようにしゅるみゃ!』
おう、そうか。それは助かるぞ、やってもらおう。
旋回をしながら、ピヨピヨと鳴いている。天井近くまで飛ぶと、そこで羽を広げて止まりピヨヨーと鳴いた。するとミミの小さな目がピロロロローと光ったように見えた。
ミミの周りにミニマムでまん丸な鳥さんがたくさん現れて、空間いっぱいに広がっていく。ピヨヨピヨヨと鳴きながら、小さな羽をパタパタと動かして飛んでいる。めっちゃ可愛いじゃないか。
これってあれだ。ミミが来た時に俺の魔力量を見る時にもミニマムな鳥さんが登場した。あれと同じだ。でもこれって、下にいる人たちには見えていないのかな?
『大丈夫よ~、見えないようにミミはちゃんとしているわ~』
リンリンの念話が頭の中に聞こえてきた。やっぱリンリンも見てくれているんだ。それなら安心だな。
『らうみぃ、らからみみはできるみゃ!』
はいはい、そうだったね。ごめんよ。
そのミニマムな鳥さんたちが何をするのか見ていると、特別何かをしている感じもない。だけど、下を見て俺は驚いた。
「うわッ! しゅごいみえる!」
「ラウ、見えるの?」
「はい、かあしゃま。みえましゅ。くろいもやもやが、みえましゅ」
ただミニマムな鳥さんが飛んだだけなのに、何故か俺にも呪いが見えるようになった。ミミったら凄いじゃないか。
『あたりまえみゃ! ほんきになったら、みみはしゅごいみゃ!』
あ、言っちゃった。本気になったらだって。やっぱいつもは本気じゃないんだ。
『しょ、しょ、しょんなことないみゃ!』
思いっきり動揺しているじゃないか。図星だな。
『しょ、しょんなことより、かいじゅしゅるみゃ!』
おう、じゃあ俺は前半分を解呪するからミミは後ろの方を頼むよ。そう言って前の方を見る。主祭壇の前で司祭様がお祈りをしている。