表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

183/214

183ー目立っちゃってる

 走ってきた老師に気付いた人たちが、集まってきていた。すぐに沢山の人に取り囲まれてしまっている。これは本当に有名人だ。しかも、どの人も皆老師にお礼を言っている。


「老師は大勢の人を救っておられるのですよ」

「ふく、しょうなんらね」

「はい、魔術師団で一番の有名人だと思いますよ」

「しゅごいね~」


 そんなことをしているとは、本当に思わなかった。いつもの惚けた老師からは想像もつかない。

 囲まれている中心にいた老師が、俺たちを見つけて大きく手を振りながら叫んでいる。


「ラウ坊! ラウぼうー! ここじゃここじゃ!」


 呼ばなくてもいいって。手を振らなくても分かっているって。

 その老師が、ほッほッほッほッと変な掛け声で走りながらこっちへやって来た。めっちゃ目立っている。今日はお忍びのはずなのに駄目じゃないか。


「ラウ坊、今日は頑張ろうな!」

「ろうし、めだってるって」

「ん? そうか? いつもこんな感じじゃぞ」


 はて? と老師が首を傾けた。ああ、いつも老師は沢山の人に囲まれてしまうんだね。それだけ色んな人たちを助けてきたのだろうな。


「ろうしってしゅごいんらね。ぼく、びっくりしちゃった」

「ふぉッふぉッふぉッ! 当たり前のことをしているだけじゃ」


 その当たり前のことが、なかなかできないんだよ。ちょっとここは尊敬しちゃう。


「老師様、移動しましょう。目立ち過ぎですわ」

「なんじゃ、アリシア様も来たのか?」

「ええ、ラウ一人危険なことをさせられませんわ」

「ふぉッふぉッふぉッ! 相変わらずじゃのぉ~」

「老師、目立ち過ぎです」

「なんじゃ! 殿下もか!」

「当然です」

「ワシよりお前さんたちの方が目立つぞ?」

「とにかく移動しましょう」

「おう、そうか?」


 父とアンジーさんに誘導されて、俺たちは教会の中に入る。

 そうだ、忘れてた。今日はまだ言い聞かせてないぞ。肝心なことを忘れていた。


「みみ、しゃべったらだめらよ。ぴよらよ」

「ぴよ?」

「しょうしょう。きょうはじゅっと、しゃべったらだめ」

「ぴよ」


 文句がありそうだ。でも、本当に喋ったら駄目だ。こんな大勢の人たちの前で、鳥さんが喋ったりなんかしたら大変だ。


『わかったみゃ。めんどうみゃ』


 お、今日は念話を忘れてなかったんだね。


『わしゅれてないみゃ。みみはてんしゃいみゃ』


 はいはい。さて、どこに行くのかな?

 教会の中を真っ直ぐに進んで行き、脇にある階段を上る。すると、上から見渡せる場所に出た。

 一番奥に一段高くなった主祭壇があって、その手前に司祭様や司教様がお話される場所がある。そこから入り口までの広い空間には、長椅子がたくさん並べられていて、そこにお話しを聞きにやって来た人たちが座っている。それを見渡すことができる。

 ここは王都だ。教会といっても他の街にある教会より規模が大きい。かなりの人数が一度に入ることができる。


「ラウ、老師、ここなら良いでしょう?」

「ああ、完璧じゃ」

「うん、いいれしゅ」


 えっと、でも俺は呪いにかかっているかどうかは、あの黒いもやもやが出ていないと分からないのだけど。どうするのかな?


「フェンの出番だ」

『みゃ! みみらってわかるみゃ!』


 そうなの? ミミも分かるのなら、城でも教えてくれたら良かったのに。


『らって、いわれなかったみゃ』


 そうだった。ミミってそういう奴だったよ。精霊ってきっとそうなのだろう。だからどうした? て感じなのだろうな。

 よく見ると、父の肩の辺りが少し空間が揺れて見える。きっとフェンが姿を消したままで、見てくれているのだろう。


『おう、ラウ。ここなら見渡せるからよく分かるぞ』


 フェンが念話で話してきた。フェンが見つけてくれたら、俺たちが解呪するからお願いね。


『おう』

「とうしゃま、ふぇんがみてくれてましゅ」

「ああ、そうだな」


 父にはフェンの念話が聞こえるらしい。母はどうなのかな?


「私には聞こえないわよ。私はリンリンの念話だけなのよ」

「じゃあ、とうしゃまもしょうれしゅか?」

「そうね、自分の使い魔の念話だけ聞こえるの。どの使い魔の念話も聞けるのはラウくらいよ」


 前にもそんなことを聞いたような気がする。普通に聞こえるから忘れちゃうよね。


『らから、らうみぃはとくべちゅみゃ』


 同じ精霊なんだからミミも見えるのだろう? ミミも分かるなら見ようよ。


『みゃ? ふぇんがみてるみゃ』


 協力しようって気はないらしい。俺の肩に乗って澄ましてピヨと鳴いている。まあいいや。俺も見てみよう。見えるかなぁ? 黒いもやもやが。

 そう思って下を見てみる。俺ってちびっ子だから、全部は見渡せない。階下を見られるようにはなっているけど、手すりがある。その間から顔を覗かせて見てみる。ん~、ちょっと見難いなぁ。


「ふく、だっこして」

「あら、はい。見たいのですか?」

「うん、しょう。みてみる」


 おフクが俺を抱っこしてくれる。よし、見えるぞ。じっと眼を凝らして見る。見えないだろうって先入観を捨て、見たいものが見えるように。


「あ……」

「ラウ、もしかして分かるのか?」

「とうしゃま、なんとなくれしゅ」


 城で見えたほどではない。ぼんやりと、霞がかかったみたいに、黒いものを背負っている人がちらほらと見える。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


さてさて、老師は活躍してくれるのでしょうか?

ミミちゃんもそろそろね(^◇^;)


明日は投稿をお休みします〜

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ちょー目立つ一家そして目立っている事に気が付かない老師が揃っているのだから目立たない訳がない ラウちゃん諦めが肝心です
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ