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177ー普通って?

 俺に指導しに来ているのか、オヤツを食べに来ているのか分からない。これなら抜け出してきていた時と変わらないぞ。

 そろそろ師団長さんがやってきそうで、思わず門の方を見てしまう。


「ラウ坊、今日は来ないぞ」

「え、わかっちゃった?」

「分かるわい、師団長じゃろう?」

「しょうしょう。いちゅも、おむかえにくるから」

「ふぉッふぉッふぉッ! 今日は抜け出して来ているのではないからのぉ」


 一応、俺の指導という名目で来ている。だけど今のところオヤツを食べているだけだ。

 ちなみに今日のオヤツは、老師のリクエストでスイートポテトだ。大好きなんだね。初めて会った時にも、スイートポテトを食べていたっけ。


「老師様、そろそろ」

「おう、そうか? そうじゃの」


 レイラちゃんが老師に声を掛けると、老師は素直にオヤツを食べている手を止めた。なんだ、レイラちゃんの言うことは聞くんだ。


「ラウ坊に、まずは普通の魔法を見せようと思っての」

「ふちゅうの、まほう?」

「そうじゃ。普通の人はこんなもんじゃと覚えておくとよいぞ」

「あい」


 なるほどね。俺に普通を教えると言っていたものね。普通の魔法から入るらしい。


「レイラちゃん、まずはファイアじゃ」


 え? レイラちゃんなのか? 老師じゃなくて?

 無言で頷くレイラちゃん。表情が全く変わらない。


「ワシはオヤツを食べるのに忙しいからの」


 なんだよ、まだ食べるんだ。それ、何個目だ?

 老師に名指しされたレイラちゃんが、手のひらを出して小さく呟くように詠唱した。


「ファイア」


 するとレイラちゃんの手のひらに、小さな炎がポッと現れた。しかもすぐに消えた。


「え……」

「ふぉッふぉッふぉッ! な、驚くじゃろう?」

「えっちょ、ろうし。ほんとに?」

「そうじゃ。これが普通の人が使う魔法じゃ」


 マジかよ。て、俺は思った。本当に、ちょっぴり驚いた。だって俺のファイアはそんなもんじゃなかったから。


「らから、らうみぃは、とくべちゅみゃ」

「みみ、しょうなの?」

「しょうみゃ。らうみぃのふぁいあは、まわりを、もやしてしまうみゃ」

「ふぉッふぉッふぉッ! それはファイアなのか? 生活魔法の範疇を超えとるわい」


 確かに、魔力を極限まで抑えてもレイラちゃんが出した炎より大きいぞ。これはマジで、俺は普通を知らないみたいだ。だって母のファイアだってあれより大きい。


「かあしゃま」

「なあに? ラウ」

「かあしゃまのふぁいあも、もっとおおきいれしゅ」

「ふふふ、そうね」

「アリシア様も普通じゃないからのぉ」


 そうなのか? そりゃそうか、だってエレメンタラーだから。他の人より精霊の力をより多く借りられる。精霊と意思疎通が取れるジョブなのだから。使い魔の精霊がいるのだから当然だ。リンリンが常にそばにいる。そんなことも考えつかなかった。


「ワシのファイアも、あんなもんじゃ」

「ええー、ろうしなのに?」

「ワシのジョブを知っておるだろう? 白魔術師は回復や解呪に特化しとるからの。だからシールドもしょぼいんじゃ。シールドものぉ……しょぼいんじゃ」


 あ、これは前に精霊女王と話した時のことを根に持っているぞ。シールドが張れないから精霊界は無理だと言われたようなもんだったし。でも、本当に行くとなったら俺やミミが補助するよ。

 老師の言った生活魔法とは。身体や部屋などを綺麗にする、クリーン。少しの水を出す、ウォーター。明かりを灯す、ライト。そして、小さな火をつけるファイアだ。

 この生活魔法と呼ばれている魔法は、誰でも使える。5歳になったら受ける『鑑定の儀』が終わると皆使えるようになる。これは各地にある教会で受ける。だから教会が関係していると俺は睨んでいる。

 まあ、俺はその『鑑定の儀』を受ける前から使えるのだけど。元大賢者だしね。


「もとじゃないみゃ」


 ミミ、そこはツッコまないでよ。スルーしてほしい。


「しょうみゃ? ももじゅーしゅ、おかわりみゃ」


 ミミは変わらず桃ジュース命だ。


「しぇいれいがいるみゃ」

「ミミちゃん、なんじゃ?」

「かんていのぎみゃ。しぇいれいが、しゃじゅ()けるみゃ」

「んんん……?」


 突然ミミが言い出した。その『鑑定の儀』のことは俺が思っていただけだからな。口に出してはいない。だから皆、何を突然言い出したんだ? て、感じなんだよ。


「しょうみゃ? みみしか、わからないみゃ?」

「しょうらね」

「みゃ! ふべんみゃ!」


 はいはい、それは0歳の時に話しただろう? もう忘れたのか?


「みゃ! わしゅれるわけないみゃ! みみは、てんしゃいみゃ!」

「その天才のミミちゃん、教えて欲しいんじゃ。『鑑定の儀』に精霊が関わっているのか?」

「みゃ? しょうみゃ。でないとまほうが、ちゅかえないみゃ」


 あれれ? それってもしかして、解明されていないことだったりするのかな?

 老師が持っていたスイートポテトをポロリと落とした。それをレイラちゃんが両手でキャッチした。ナイスキャッチだ。レイラちゃんったら、慣れてないか? と思って俺が見ていると、真顔で小さくピースをした。ちょっと面白い。


「あたりまえみゃ」

「な、な、なんじゅとぉーッ!?」


 ほら、ほぉ~ら。こうなるような気がしたんだよ。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


ラウの①を手に取ってくださった方もおられるようで、ありがとうございます!

私たち作者は見本誌というものを出版社様からいただきます。現物ですね。

届くと嬉しくてXでツイートしたりします。そしてやっぱり読むのですね。(^◇^;)

私はどの本もあとがきから読んでしまうのです。他の作家さんの場合もです。

ラウは、とにかくネトコンに応募したくて書いたものです。まさか、賞をいただいて書籍化になるとは思いませんでした。なかなか感慨深いものがあります。

馬鹿なことを書いてるなぁ〜と思ったりもするのですが、可愛いラウが出来上がったのではないかと思います。イラストなんてめちゃくちゃ綺麗ですよね!

まだの方は是非!よろしくお願いします!

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
届いたラウちゃんを早速読みました( ^∀^) 素晴らしい挿し絵可愛い可愛いラウちゃん 早く2巻が出ないかと待ち遠しいです‼︎
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