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175ー発売記念SS 精霊会議

 ラウの使い魔としてミミがやってくる前の精霊界だ。

 ピーチリンがたくさん生えているそのすぐそばにある、広い神殿のような場所の一段高くなった場所に精霊女王がいた。その前にズラリと集まっている精霊たち。

 精霊一人一人が仄かに光っているから、辺り一帯が白く発光しているように見える。

 その精霊たちに向かって、精霊女王が厳かな声で言った。


「皆、アリシアから要請があったわ」


 集まっていたのは上位精霊たち。ゆっくりと精霊たちを見渡して、精霊女王は言った。


「アリシアの子供に、使い魔として付く子を選びます」


 どうやらアリシアの子、ラウに精霊の使い魔を出す。その選考会議らしい。

 その場に集められた上位精霊がざわつく。自分は嫌だな、精霊界を離れたくないよ。という者。自分は人間界に行ってみたいと手を上げる者、様々だった。


「リンリン、フェン」

「は~い」

「おう」


 アリシアと、父であるライナスの使い魔の二人だ。


「あなたたちはどう思うのかしら?」

「そうね~」

「ラウは特別だからな」


 精霊にはラウの能力が分かっているらしい。ラウは前の生で大賢者のジョブを授かっていた。しかも前世の記憶がある。

 赤ちゃんの頃に攫われた時にも、魔法をぶっ放して貴族の邸を半壊させたという能力の持ち主だ。


「あのラウの能力をしっかり把握して、守れる子がいいわね~」

「おう、そうだな」


 アリシアもそのつもりで、使い魔を要請したのだろう。第一にラウを守ることができる使い魔をと。


「実は私はもう決めているのだけど」


 ざわついていた精霊たちが静まり返る。精霊女王が決めているなら、この集まりは必要なのか? と、言いたそうだ。


「でも取り敢えず、どんな子なのか見てみましょうね~」


 精霊女王がそういうと、手を掲げた。白くて丸い霧が現れて、スクリーンのようになる。そこにスヤスヤと眠っているラウが映し出された。

 これは、どうなっているのか? 精霊女王の能力なのだろうが。

 そんな会議の場で大々的に、自分が映し出されているなんて当然ラウは知らない。

 小さな手を握りしめて、ほんのりピンク色したほっぺにサクランボのような色をしたプニュッとした唇。それをムニャムニャと動かしながら眠っている。


「可愛いわね、よく眠っているわ」

「ライナス似だと俺は思うぞ」

「あら~、アリシアにもよく似ているわよ~」


 精霊たちが映し出されたラウに注目している。そこに乳母のフクが入ってきた。そろそろ目が覚めるらしい。それを見守る精霊たち。

 皆、黙って見つめている。ホワワ~と、眼をキラキラさせて見ている。可愛い~と漏らす者もいる。


「赤ちゃんって天使よね~」

「ふふふ、そうね」

「だが、ラウは普通の赤ん坊じゃないぞ」


 しばらくすると、眠っていたラウが『びえッ』と小さな声を上げた。どうやら起きたらしい。


「ふぇ、ぶぇ、びえぇーん!」

「あらあら、起きましたか?」


 泣き出したラウを、フクがすぐに抱き上げあやしている。ラウを見つめる眼が、慈愛に溢れている。


「オムツを替えましょうね」

「びえぇーん! ふぎゃー!」


 またラウを寝かせてオムツをとって足を持ち上げ、プリップリのお尻を拭いている。

 ラウはオムツを取ってもらってスッキリしたのか、あばあばと声をあげている。自分の手をパチパチと合わせて何やら話しているみたいだ。


「あう、あぶ、あぶぶ」

「スッキリしましたか? もう少しだけ大人しくしていてくださいね」


 フクがラウに話しかけながら手早くオムツを替えている。

 ラウはまさか、自分のお尻が大きく映し出されているなんて、夢にも思わないだろう。そのプリッとしたお尻が大きく映し出されている。これは恥ずかしい。だが、見ている精霊たちは真剣そのものだ。


「ラウはまだ話せないからな」

「でも、ラウはやんちゃだから~」

「ふふふ、そうね」


 そんなことまでバレている。


「あぶあー」

「はいはい、おっぱい飲みましょうね」

「あぶぶ」


 フクが服のボタンを外し出すと、さすがにそこでスクリーンは消えた。

 精霊たちは精霊女王に注目している。一体誰が選ばれたのか?

 

「私は、ミミが適任じゃないかと思っているのよ」

「え? ミミか?」

「あら~、ミミなのね~」


 当の本人はというと、集められている最前列にいるものの視線は外のピーチリンに釘付けだ。話を聞いていたのかな?


「ミミ」


 精霊女王が呼ぶ。それでも、気付かない。ほけ~ッと半分お口を開けて、ずっとピーチリンを見つめている。


「これ、ミミ」


 精霊女王に呼ばれたことより、ピーチリンの方が大事らしい。


「ミミ! 精霊女王が呼んでるぞ!」


 フェンが大きな声で呼んだ。そこでやっと気づいた。


「みゃ? みみみゃ? みみはぴーちりん、たべたいみゃ」

「それはあとだ」

「らって、きょうはまら、たべてないみゃ」

「ミミ、今は大事な話をしているのよ~」

「しょうみゃ? みみは、かんけいないみゃ」

「関係あるのよ~」

「みゃみゃみゃ?」


 この頃からミミは変わらない。ピーチリン大好きなミミだ。いや、精霊は皆大好きなのだけど、ミミは特にその気持ちが抑えられないらしい。

 すぐそこに沢山生えているピーチリン。そんなの誘惑でしかない。目の前にあるのに、お預けをくらっている状態だ。


「ミミ、使い魔として人間界に行きなさい」

「みゃ!? いやみゃ! ぴーちりんが、たべられないみゃ!」

「何言ってるのかしら~? ふふふふ」

「ミミ、精霊女王の命令だぞ」

「らって、みみはぴーちりんが、たべたいみゃ!」


 なんて理由なのだろう。しかも態度が横柄だ。まん丸な鳥さんの姿をした精霊ミミ。精霊界では大きな鳥さんだ。この姿で人間界には行けない。


「ミミ、あなたの能力が必要なのよ」

「みゃ? しょうみゃ?」

「ミミは天才なのだろう?」

「ふふふふ~」

「そうみゃ! みみは、てんしゃいみゃ!」

「なら、決まりね」

「みゃ!? なんみゃ?」


 まだ理解していないらしい。こんなミミで良いのか? と、皆が思って見ている。

 だが、ミミの能力は高い。この大きな体も自由自在に変形できる。しかも人間界でも実態を維持できるのはミミくらいだ。


「ずっとそばにいて、ラウを守るのよ」

「らうって、だれみゃ?」


 やはり話を聞いていなかったらしい。


「だからね~」


 一からリンリンが説明する。精霊女王はどうしてこの選択をしたのか? とっても頼りないのだが。


「みゃ!? なんれ、みみみゃ!? みみは、ぴーちりんがたべたいみゃ!」

「人間界にも、ピーチリンによく似たジュースがあるのよ~」

「みゃ!? しょうなのみゃ!?」

「おう、美味いぞ。毎日もらえるぞ」

「みゃみゃみゃ! のんれみたいみゃ!」

「あらあら、ふふふふ~」


 食いしん坊らしい。そんな会議で、ラウの使い魔に決まったミミ。

 頼りなく感じるが能力は高いので、やる時はちゃんとやってくれるだろう……と、思いたい。

 その後、無事にラウとご対面を果たしたミミ。


「みみみゃ」

「あぶぅ」

「らうみぃのしょばで、まもりゅみゃ」

「あばー」


 こうして、ミミがラウの使い魔となった。それからはずっとラウのそばにいる。ラウが前の時の不幸を回避するべく行動を起こす時にも、ミミが力を貸すことになる。案外、良いコンビにも思える。

 ラウと使い魔のミミ。まだまだラウの暗躍はこれからだ。


お読みいただき有難うございます!

応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


発売記念SSは、リクエストにいただいた精霊たちの座談会をヒントにさせていただきました。いかがでしたでしょう?

本日1巻発売ですー!

もう手に入れてくださった方もおられるようで、ありがとうございます!

ラウの高速ハイハイがしっかりイラストになっていますね〜(^◇^;)

浮いてるラウもいます。

イラストはShabon様が担当してくださいました。

令嬢ものを描いておられる方ですね。

私はめちゃくちゃお気に入りです!皆様は、いかがでしょう?

沢山の方に手に取っていただけることを祈って!

よろしくお願いします!

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
ミミが、らうみぃ付きになったのには 天才だから自薦であったのかと思いきや…… 桃ジュースだったとは(´∀`) ミミはミミだった(笑) 井戸端会議的な座談会のつもりが大々的な精霊会議に! いつも一…
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