17ー真紅の髪
隣国デオレグーノ神王国は、殆ど鎖国のような状態なんだ。
何故なら、自国は神に一番近い国だと信じられている国だ。自分達には神付いていると本気で思っている。その思想故に、他国を見下している。
自分達の神聖な血を、外に出してはいけないという事らしい。
だから、民が自由に他国へ行くなんて事は有り得ない。その反対もそうだ。
その上、イケイケドンドンなんだ。他国からは距離を置かれている。
あの国やべーぞ、近寄るな。と、いった感じなのだろう。
イケイケドンドンなのも、その思想故だ。他国は自分達に跪いて当然と思っている。
それでもそう度々戦を仕掛けていると、普通なら国力が衰える。しかもいつも負けているのだから、当然そうなる。
どうやって国民は生活しているのか不思議なくらいだ。
そんな国の呪術師を生業としている種族に、真紅の髪色の者が多いという事らしい。
元々小規模な種族だ。そのため呪術師の血を残すには、近親者同士の婚姻が多くなる。
そして、少しずつ出生率が下がり種族の人数も減っている。
「この王都に在住している伯爵家に手を出したのは拙かったな」
「そうッス」
単純に距離のある領地に住んでいて、しかも末端の男爵家だと流石に父の目にも留まり難い。
「上手くいっていたから。味を占めたんでしょう」
「今回も上手くいって当然だとでも思っているのだろうな」
「その通り上手くいったんっすよ。でも、俺達の目に留まってしまった。このままにはしておけないッスよね」
「当然だ。舐めた真似をしてくれる」
ああ、怖い。どうして0歳児の俺が、こんな怖い話をしている中にいるのか。
「あぶぅ……」
「らうみぃ、ももじゅーしゅがのみたいみゃ」
「ばうあー」
こらこら、赤ちゃんの俺でも我慢しているのだから、ミミも空気を読もうぜ。
ほら、父がジロッと見ているぞ。
「らって、おのどがかわいたのみゃ。しょれに、くうきがおもいのみゃ」
「ばうあ」
「しょうみゃ?」
もう少し我慢しろと俺は言った。
「けろ、ももじゅーしゅがのみたいのみゃ」
「フク、出してあげてちょうだい。皆にもお茶を。何か甘いものも欲しいわ」
「はい、奥様」
おフクが部屋を出て行った。
ミミは少しくらい我慢できないのか? 俺だって、ぶうぶう言うのを我慢しているのに。
「ばうあー」
あ、いかん。ブルブルっときてしまった。
「ふ、ふぇ……びえ」
「あらあら、オムツ替えましょうね」
母に抱っこされてソファーに寝かされた。
これは我慢できないんだ。申し訳ない。
「可愛いッスね」
アンジーが側に来て見ている。見るんじゃないよ。下半身おっ広げているのに。
両手で足先を持って、おフクが拭きやすいようにしていたりする。しっかり拭いてもらわないと、痒くなるんだ。
「ばうあー」
「スッキリしたッスか?」
「あうあ」
そもそもなんで赤ちゃんの俺が、こんな会議に出席しているんだって話だ。
俺とミミは退出したいぞ。
「坊ちゃんはお利口ッスね。ずっと大人しくしているし」
「ラウはきっと理解しているぞ」
「そんな訳ないですよー。まだ赤ちゃんッスよ」
それが理解しているのだよ、アンジー君。君はまだまだ分かっていないね。
ま、俺が理解していたって何の役にも立てないのだけど。
「とにかく捜索しますよ」
「ああ。まさかその女性が、一人でやっている事ではないだろう?」
「そうッスね。何度も同じ事を繰り返しているので、もしかしたら組織的なものが動いているのかも知れません」
そうなったら大事になるのではないか? それに他国がしている事なら、侵略と捕らえられても仕方がない。
「多分だが、デオレグーノ神王国は戦ばかりしているから金がないのだろう」
「外貨を獲得したいって事っスか?」
「それもあるだろうが、もし組織的なものが動いているのだとしたら現金だけではないだろう。食料等も不法に持ち出している可能性がある。それだけならまだ良いのだが」
戦をしていて勝っているなら話は別だ。だが、毎回負けているんだ。
何故そんなに毎回負けてしまうのか。
それもお国柄があったんだ。なにしろ自分達には神が付いていると、信じられている国だ。
ほら、時々いるだろう? 碌に努力もしないで、自分はツイているから大丈夫だと根拠のない自信を持っている人が。それと同じなんだ。
戦力を整えたつもり、鍛えてきたつもりなのだろうが、他国はもっとやっていたという訳だ。
それで毎回負けてしまう。その見極めは早いらしい。
あ、ヤバイ。と思ったら直ぐに退却する。だからこそ、何度も他国に戦を吹っ掛けられるのだろう。
「皆様、少し休憩なさいませんか? お茶をお持ちしました」
おフクがワゴンを押して戻って来た。お茶とお茶菓子も用意されている。
それに、ミミご希望の桃ジュースだ。
「みみのももじゅーしゅあるのみゃ?」
「はい、ありますよ」
俺はおっぱいが欲しいぞ。ちょっと小腹が空いた。
「奥様、坊ちゃまに」
「ええ、ありがとう」
おフクはやっぱよく気が付くね。おフクに抱っこされて俺は別の部屋へ。
ふぅ~、あの会議室から脱出できて良かった。
「少しお腹が空きましたか?」
「ばうあー」
「はいはい」
俺のお口の中におっぱいが。ふむ、仕方ないのだ。
お読みいただき有難うございます!
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