166ー驚いた
「らうみぃは、しちゅれいみゃ! みみはてんしゃいみゃ!」
「その天才のミミちゃんなら、分かるだろうと言っておるのじゃ」
「ミミはしらないみゃ」
「なんじゃ、そうなのか?」
「らってミミはちゅかいまみゃ。らうみぃのしょばにいるみゃ」
「ミミ……」
おっと、久しぶりに父が氷のような目付きでミミを見ている。
「みゃみゃみゃ! みのきけんを、かんじるみゃ!」
アハハハ、身の危険だって。ミミも鋭くなったじゃないか。
「ミミの役目は何だと私は言ったかな?」
まるで地を這うかのような声で父は言った。
「みゃ、みゃ、らうみぃの、のうりょくのはあくと、せいぎょみゃ」
「よ~く分かっているじゃないか。なのにラウの能力が分からないと言うのか?」
おっとぉ、これはミミの分が悪い。『氷霧公爵』という名の魔王の降臨だ。
後ろでアンジーさんがクスクスと笑っている。そこは我慢しよう。父が激オコなのだから。
「ま、なんにしろじゃ。とりま、オヤツを食べよう」
老師ってマイペースなんだね。そりゃそうか。仕事中に抜け出して、うちに来ちゃうくらいなのだもの。
話を元に戻そう。老師はあの深紅の髪の女性が改心したのも、俺の能力が影響しているのだと見ている。3年も経つのにどうしてそう考えたのか?
それは俺がまだ0歳だった所為もあって、すぐに影響が出るほどではなかったのではないかと推測している。弱い力だったけど、それでもじわじわと確実に女性を変えていった。
でもそれは、俺の能力だけじゃないと思うんだ。女性自身が実際にこの国で経験したことも影響しているだろう。
どっちにしろ、生まれ育った故郷には帰れないんだ。いや、女性自身が帰りたくないと言っている。
なら、強制労働に服さないといけないとしても、できるだけ女性が心穏やかに暮らせる方が良い。と、俺は思うんだ。
「ろうし、ぼくあうよ。てちゅだうよ」
「ラウ、駄目よ。止めておきなさい」
「そうだぞ、ラウ。まだ3歳のラウが会うような者ではない」
両親の反対が強かったため、取り敢えず先に両親が女性と面会することになった。俺との面会はそれから決めるそうだ。
俺は女性をあんまり覚えてないんだよな。顔面にしがみ付いていたから、お顔だって覚えていない。もちろん女性にそんな影響が出るようなことをした覚えもない。
だけど、反省して更生しているのなら良いことじゃないか。と、単純にその時は思っていた。そんなに重要なことだとは、考えていなかったんだ。
「どっちにしろ、ワシはラウ坊に普通を教えるぞ。そこは譲れん」
「老師、それはありがたいと思いますよ」
「そうか? そうじゃろう? ふぉッふぉッふぉッ」
その日はそれでお開きになった。老師に師事することは決定事項らしい。それは俺も嬉しい。だって老師は楽しいもの。
数日経った頃だ。俺はそんな話もすっかり頭の隅に追いやっていた。
相変わらず、アコレーシアに毎日1本のお花を持って行っていた。だって、毎日会いたいのだもの。ふふふ。
今日もアコレーシアと一緒にご本を読んで帰ってきて、お昼寝から起きた頃だ。
「ラウ、今日も行っていたの?」
「かあしゃま」
母が部屋にやって来た。思わず母にパフンと抱きついてしまうよね。だってまだ3歳児だから。
「ふふふ、ラウったら。これから少しお話があるの」
「おはなしれしゅか?」
なんだろう? と、この時にもまさか女性の件だとは考えつかなかったんだ。
母に連れられ例の部屋へと移動する。部屋の中には、もう父とアンジーさんが待っていた。
なんだ? また何か事件でも起こったのか? と、思っていたくらいだ。
「ラウ、例の女性に会ってきたんだ」
「あー、はい」
なんだ、そのことか。そういえば、先に両親が面会してみるって言ってたな。
「フェン、説明してくれるか」
「おう、いいぜ」
父の使い魔である精霊のフェンが、ニュゥッとお顔を出した。真っ黒な翼を持った黒猫ちゃんの姿をしている。
そのまま何もない空間から出てきた。見事な艶のある漆黒の翼をゆっくりと動かして浮いている。
「おう、ラウ。今日も可愛いな!」
「えー、ありがと」
気のいい兄ちゃんだ。父の肩に止まり、話を始めた。
「一緒に会ってきたんだけどよ」
両親が例の女性に面会した時だ。当然姿は消しているが、フェンとリンリンも一緒だった。
「おう、リンリン」
「はぁ~い」
キララ~ンと姿を現したリンリン姐さん。やっぱこの二人に比べると、ミミは頼りないんだよな。大人と子供って感じでさ。
「らうみぃ、しちゅれいみゃ! みみはかんぺきみゃ!」
「はいはい」
「みゃみゃみゃ! みみは、てんしゃいなのみゃ!」
「しょうらね」
だんだん対応が、おざなりになってしまうのは仕方がない。それよりも、フェンとリンリンの話だ。
「おう、結論から言うとな」
「あら、もう言っちゃうの〜?」
「そんなもん、勿体つけても仕方ねーだろう。俺が見たところ、あれはもう長くない」
「え……?」
「だから寿命だ。どんだけ呪いを使っていたのか知らねーけどよ」
「そうね、呪いを頻繁に使っていたみたいね~」
「え……らからなの?」
「そうね~」
これは考えもしていなかったから驚いた。言葉がなかったくらいだ。
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宜しくお願いします。
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イラストはラウのカバーイラストです!早く他のイラストも公開できると良いのですが、もう少しお待ちください。