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164ーワシの出番じゃ

 もちろん、生涯本当の自由なんて有り得ない。そこまでこの国は甘くない。生涯監視がつく。今だってそうだ。四六時中監視の目がある中で生活している。


「それでも、この国の方が良いというのじゃ」


 ズズズ~ッとお茶を飲みながら老師はそう言った。少し悲しそうな表情に見える。

 今回、魔封じをしたとしても、もちろん自由はない。生涯、国の管理下におかれるのは当然だ。

 極刑にならなかったことに異議を唱えている貴族だっている。家族を亡くした貴族たちだ。

 だが、この女性の事件は公にはなっていない。隣国の陰謀に嵌められた貴族がいたなんて、大っぴらにはできないからだ。

 それでも王は、被害にあった貴族に補償金を出した。弔慰金としての意味合いで幾らかの金銭を出したんだ。これは異例なことらしい。

 奪われた遺産全てをカバーすることはできない。だが、貴族として相応の生活をするための足しにはなるだろう。

 幸い領地は無事だった。贅沢さえしなければ、また立て直せる。そんなことで、家族を失った気持ちが収まりはしないだろうが。


「この先まともな仕事には就けないし、自由はない」

「そうじゃな。それは当然じゃ」


 実際に、女性はこれから囚人の世話をする強制労働に就くらしい。この先一生だ。

 それでも女性は、国に帰るよりマシだと言ったそうだ。


「特殊な種族じゃからのぅ。村全体が国に洗脳されていたようなもんじゃ」


 女性は取り調べを重ねるにつれて、自国の状況も話し出したらしい。

 デオレグーノ神王国の頂点は、神王と呼ばれているそうだ。

 その神王が御座すところは神城と呼ばれ、任務が決まったらそこから使者が派遣されるそうだ。豪華な馬車に乗った使者がやってきて、その前で跪き上層部からの任務を言い渡される。

 その時に思ったらしい。自分達は、自由もなく厳しく教育され、毎日鍛錬に励んでいる。最低限の食事や衣服。それが当たり前だった。

 なのにやってきた使者はどうだ? 豪華な馬車に、煌びやかな服装だった。任務に当たる時に支給された物も、それまで見たこともない物だった。

 任務を熟していれば自分達もそうなれるんだと言われ、頑張ろうと思ったと。

 神王は神の使いで、神に一番近い国である神王国のためにと思わされる。それも洗脳だ。

 その呪縛から少しずつ解き放された女性は、自分の目でこの国を見、自分の耳で現実を知り、自分の頭で考えた。

 自分は何てことをしていたのだろうと、思うようになった。それから自ら望んで労役についている。取り調べも、従順に応じている。


「実はワシは、ラウ坊の能力が影響しているのではないかと思っておるんじゃ」

「ラウですか?」


 え、突然何を言い出すんだ? 俺があの女性と接点を持ったのは、あの一瞬だけだ。

 まだ0歳だった俺が転移して、女性の顔面に張りついた時だ。出ちゃったんだけどな。


「まさか……老師、ラウが顔面に……!?」

「ワシはそう考えておる」


 老師ったらちゃんと考えていたんだ。

 女性を捕らえた状況は一部の人間しか知らない。大臣にさえ、知らされていない。


「ラウの能力はトップシークレットだ」

「それはワシも心得ておる。ラウ坊をワシも守ると約束するぞ」


 今日の老師はいつもと違って真面目だった。いや、こんな言い方をしたら失礼なのだけど。

 老師は最初に会った時に話していた。この歳になると、なんでも一度は見たことがあると、年寄りの経験値を舐めちゃいかんと話していた。

 その経験値と、老師が今迄精進していきた白魔術師としての能力で気付くことがあるという。


「ラウ坊は世の中の普通を知ることが必要じゃ。それはそこの使い魔には教えられんじゃろう?」

「ぴよ」


 ミミだ。こいつ、また念話が使えると忘れているな。


『しょんなことないみゃ!』


 そうかよ、で? 何が言いたいんだ?


『みみはてんしゃいみゃ! できないことなんてないみゃ!』

「ミミが言いたいことは分かるな」

「ええ、そうですわね。ミミですもの」


 おや、父も母も読んでいるらしいぞ。


「確かに、この世界で生きていない精霊には分からないこともありますわね」

「そうじゃろう? そこでワシの出番じゃ」


 要するに、老師が俺の師匠になるということだ。


「え……」

「なんじゃ、ラウ坊。ワシだと不服かのぉ?」

「らって、ろうしはおともらちらと、おもってたの」

「ふぉッふぉッふぉッ! お友達か! それも良いのぉ! だが、ラウ坊」


 え、笑っていたと思ったら、老師の目は真剣だった。俺の目をじっと見ている。


「このままだと、ラウ坊の能力がバレるのも時間の問題じゃわい。なにしろラウ坊の周りには普通がおらん」


 なんだって? 普通がいない? 言葉がおかしくないか? 父と母はどうなんだ? おフクだっているじゃないか。


「ラウ坊、お前さんの家は普通ではないぞ」

「あー……」


 なるほど、そういわれてみれば普通じゃない。なにしろ、可愛いメイド服を着ているお姉さんだって鬼強いのだから。バトルメイドさんなんだ。

 父だって魔法も剣術も飛びぬけて強い。母なんてとっても希少なエレメンタラーだ。おフクも上位のジョブの姫騎士だ。なにより、父の仕事内容が普通じゃない。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

やっと老師の真面目な部分が書けました。ふざけたキャラなので、色んなご意見をいただいたのですが。

ただふざけているだけではないのです。

少し長い目で待っていただけると嬉しいです。


ラウのカバーイラストを!他のキャラも出したいのですが、まだまだ我慢です。

挿絵(By みてみん)


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