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163/217

163ー甘くないか?

 老師ってやんちゃさんだからね。マイペースともいう。何を考えているのだか。

 俺に興味があるのは確かなのだろうけど、でも俺はまだ3歳だ。そんなちびっ子を犯罪者に会わせても良いと思っているのかな?


「ミミ、喋ったら駄目よ」

「みゃ? またみゃ?」

「ええ、邸を出たらどこへ行くのも喋ったら駄目」

「わかったみゃ。とってもめんろうみゃ」


 また一言多い。ほら、母が氷のような視線でジトッと見ているぞ。


「らってみみは、とりしゃんじゃないみゃ」

「そうね、でも仕方ないでしょう? それとも、ミミは一人お留守番しているほうが良いかしら?」

「みゃ!? しょれはないみゃ! らうみぃといっしょにいるみゃ!」

「じゃあ、喋ったら駄目。お外に出たら、ミミは鳥さんね」

「わかったみゃ。しかたないみゃ」


 精霊の使い魔だなんてバレちゃったら、ミミだけじゃなく俺も狙われる。きっと母まで狙われてしまうだろう。だからミミ、鳥さんだ。ぴよ、だぞ。


「らうみぃ、わかったみゃ。ぴよ」


 若干の、いやとっても不安はあるのだけど、馬車は城へと入って行く。俺達が乗る馬車の前を父とアンジーさんが馬で行く。城門を抜ける時も、顔パスだ。

 前を走る父とアンジーさんを見る。二人とも背筋がスッと伸びていて、無駄な力が入っていない。

 その上、父はプラチナブロンドの髪を嘆かせて、まるで絵画を見ているようだ。


「とうしゃま、かっちょいいれしゅ」

「ふふふ、あら、そうかしら?」

「あい、あんじーしゃんもかっちょいいれしゅ」

「ああしていればね、あの二人はクールに見えるもの」

「しょうれしゅね」


 本当に、うちでの二人を見ていると『氷霧公爵』や『銀花男子』なんて呼ばれているようには見えない。

 その二人に先導されて老師が待つ魔術師団の一室へと向かった。


「ラウ坊! よく来たのぉ!」


 嬉しそうな笑顔で、出迎えてくれた老師。


「ろうし、こんにちは」

「まあまあ座るんじゃ。ラウ坊は何が良いかのぉ? ジュースが良いか? ん? 遠慮せんでいいぞ」


 いやいや、それはいいけど。


「ろうし、ぼくにできるの?」

「なにをじゃ?」


 キョトンと頭を傾けている。マジか、忘れちゃっているのか? 俺を呼んだのは老師だろう?


「老師、ラウでないと嫌だとおっしゃったでしょう?」

「おう、そうじゃった、そうじゃった。ふぉッふぉッふぉッ」


 とぼけた爺さんだ。


「ラウ坊、なんか言ったか?」

「ううん、なんにも」


 こんな時だけ鋭い。老師の説明によると、例の深紅の髪の女性に魔封じを施したいそうだ。

 今は首にゴツイ首輪の魔導具をしていて、呪いを使えないように封じている。それを外しても呪いを使えないようにする魔封じだ。ごく簡単な初歩の魔法や、こちらが特定した魔法のみ使えるようにする特殊な魔封じを施したいらしい。

 それには魔力量が必要だ。何故なら女性が持っている呪いを扱う力が強力だからだ。老師がそれをしている間、俺に補助して欲しいそうだ。そんなの捕らえた時みたいに、フェンやリンリンに頼めないのか?


「ラウ、リンリンや精霊の使い魔のことは秘密だ」

「しょうれした」


 それに精霊の能力だと強力すぎるらしい。呪いだけじゃなく、魔法も全て完璧に封じてしまう。それだと、これから労役につく際に支障があるらしい。

 そこで老師の出番だ。その老師が俺を指名したらしい。


「けろ、ぼくまだ3しゃいれしゅ」

「なんじゃ? 知っておるぞ」

「かあしゃま、とうしゃま」

「ラウ、私は何度も説得したんだ」

「私はあの女性に、ラウを会わせるなんて反対ですわ」


 ほら、ほ~ら、老師、聞いた? 母は反対だと言っているぞ。見てみな? 母の凍るような冷たい視線をさ。


「なに、彼女も改心しとるわい」

「そんなの信用できませんわ。本当に改心していたとしても、罪人に会わせたくないですわよ」

「そう言うでない」

「当然ですわ、私はラウの母親ですから。ラウを守るのは当たり前です」


 老師が改心していると言った。この国で3年も囚われの身だった女性。その間、取り調べは当然あった。魔導具を着けられ、魔法も呪いも使えない女性は大人しく観念していたらしい。

 それで、労役に服していたそうだ。最下級の使用人の恰好をして、他の使用人が嫌がる仕事をしていた。

 首に大きな魔導具を付けているんだから、一目で罪人だと分かる。後ろ指も指され、陰口もあっただろう。

 それでも女性が見たこの国は、自分が生まれ育った村よりずっと自由で希望に満ちていたらしい。

 女性は村で、とても厳しい訓練を受けていたそうだ。それも生かし、この国の役に立ちたいと自分から申し出てきた。もしも叶うのなら、この国で生きていく権利が欲しいと。


「なんて身の程知らずな願いだと、最初は思ったんだ」


 父がそう思うのも無理はない。女性がこの国でしたことは、貴族の老人に呪いを掛け騙して命を奪う。その上で、全財産を奪い自分の国に送金していたのだから。

 そのことを考えると、今生かされているだけでもめっけものだ。

 女性より1日早く捕まった男たちは、牢獄に繋がれ厳しい尋問を受け、その後鉱山で強制労働の刑に服している。

 なのに、女性だけ自由にさせるわけにはいかない。しかも実行犯だ。

 

お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


女性の件や老師について、文句も出るかも知れませんが、少し見守っていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。


1巻が5/10に発売になります。

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
女性の処遇は、被害者遺族の気持ちは置いて、国としての利用価値が高いので、まぁそういうことかなぁと。 老師自由過ぎる(笑
早くラウちゃんの本を手に取って読みたい( ^ω^ ) ラウちゃん達は普通ではないから自覚しないと困る事になりそう、でも老師に普通の常識を教えられるか心配です(°▽°)
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