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162/216

162ーまた放ってきた

 チラリと老師に見られちゃった。何かな?


「ラウ坊が育ってくれたらのぉ。ワシも引退できるんじゃ」

「え、ぼくなの?」

「そうじゃ。ラウ坊なら楽勝じゃろう?」

「え、しょんなことないよ」

「老師様、ラウはまだ3歳ですわ」

「そうじゃった、そうじゃった。ふぉッふぉッふぉッ」


 これは老師は分かっていて言っているな。精霊女王の姿が見えて話せるってバレてるから当然か。

 そんな平和な日々を母と一緒に過ごしていた。父はさすがに忙しいらしくて、あまり会えていない。邸には帰ってきているのだけど、俺は早くに寝てしまうからだ。

 そんなある日、父が昼過ぎに帰ってきた。馬に乗って颯爽と走ってくる。あれ? アンジーさんがいないぞ。また置いてきてしまったのか?


「アリシア! ラウ! 会いたかったぞぉーッ!」


 大きな声でそう言いながら、馬から華麗に飛び降りて走ってくる。玄関で待っていた母と俺は、父にガシィッと抱きしめられた。これもいつものことだ。


「あなた、お仕事を放ってきてはいけませんわよ」

「アリシア! クールだな! 今日は放ってきてはいないんだ!」


 今日は……と言った。ならいつもは放ってきているのか? と、勘ぐりたくなる。今日だって怪しいものだ。


「なら、アンジーはどうしました?」

「ああ、あいつは遅いんだ」

「あなたったら」


 母は少々呆れ気味だ。ため息をついたりしている。その割に大人しく父に抱きしめられている。

 俺は母に抱っこされたまま父に抱きしめられたから少し苦しいぞ。


「とうしゃま、くるしいれしゅ」

「おう、そうか? ラウ、今日は起きているのだな!」


 俺は一日中眠っているわけではない。いつも俺が眠ってからしか帰ってこないからだ。


「それよりあなた、何かご用事があったのではないのですか?」

「おお、そうだった!」


 そこにやっと馬で追いかけてきたアンジーさんの登場だ。


「でんかぁーッ! なんで一人先に行くんッスかーッ!」


 ほら、やっぱ置いてきちゃったんだ。


「ふふふ、アンジーったら」


 馬からヒラリと降りて、父を目掛けて走ってくる。


「だからぁッ! まだ仕事が残っているでしょう!?」

「なんだ、アンジー。あれくらい明日にでも片付ける」


 やっぱ放り出してきたんじゃないか。アンジーさんが気の毒に思えてくる。父よ、もう少し落ち着く方が良いぞ。


「あなた、何ですの? 仕事を放ってまで帰ってくるなんて」

「ああ、アリシア。老師がラウをお呼びだ」

「え? ぼくれしゅか?」

「ああ、そうだ。私は関わらせたくないのだがな」

「まあ、なんでしょう?」


 父が説明してくれた。覚えているだろうか? 隣国、デオレグーノ神王国の呪術師一族の、深紅の髪の女性だ。

 この国の貴族に、呪術を掛けて操り資産を奪っていた。だが父に追い込まれて、うちにたった一人で襲撃してきて捕まったあの女性だ。

 その女性の呪術を封印するために、俺の魔力が必要だと老師が言っているらしい。今頃なのか? と思った。だってあの事件は俺が0歳の時なのだから。


「ずっと魔道具で対応していたのだがな、それも状況が変わったんだ」


 そうだとしてもだ。俺じゃなくて、フェンやリンリンの方が適役じゃないか。実際、あの女性がこの邸にいる間はずっとフェンが呪いを封じていた。


「ラウ、それは秘密なのよ」

「けろ……ぼくじゃなくても」

「そうなのだが、老師がどうしてもラウが良いと言ってきかんのだ。まるで、駄々っ子だ」

「ええー」

「老師ったら、それでラウの魔力量を確認するおつもりじゃないですか?」

「ああ、多分な。だが、協力しないわけにもいかん」


 なにしろ、魔術師団の老師の希望だ。だが正式なものではないらしい。それを正式に要請されると俺の方も困る。何故なら俺の魔力量等はまだまだ秘密にしておきたいからだ。その条件をのんでの俺への協力要請だ。

 だから今回のことはもちろん、俺の能力は公にしないという約束なのだそうだ。

 いや、それ以前に3歳の俺が役に立てるのか?


「公にされるのは避けたいですわね」

「そうなんだ。あの老師、余程ラウに興味があるらしい」

「おともらちなのに」

「老師が友達か?」

「あい、おともらちれしゅ」

「アッハッハッハ! それは老師が小躍りして喜ぶぞ」


 そうかな? だってもうこれだけ一緒に遊んだり、オヤツを食べていたらお友達だろう? 一緒にアコレーシアにも会いに行ったし。


「しかたないれしゅ。とうしゃま、ちゅれてってくらしゃい」

「ああ、ラウ。だが、くれぐれも秘密だということを忘れるんじゃないぞ。ミミ、頼んだぞ」

「みゃ? みみみゃ?」

「当然だろう? ミミはラウの使い魔だろう?」

「しょうみゃ! みみはらうみぃの、ちゅかいまみゃ! らうみぃをまもるみゃ!」

「そうだな、だからずっとそばにいて守ってくれ」


「わかったみゃ! どんとまかしぇるみゃ!」


 と、小さなフワフワな胸を張るミミ。とっても頼りないのだけど。


「みゃ! らうみぃ、みみにまかしぇるみゃ!」

「うん、おねがいね」

「おねがいしゃれるみゃ!」


 俺はおフクの膝の上に座らされながら、馬車に揺られている。


「本当にあの老師ったら、困ったものだわ」

「そうですね、あの女性にラウ坊ちゃまを会わせたくありませんね」


 母も当然付いて行くと言って、一緒に城へ向かっている。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


遅くなりましたー!

老師はラウが大好きなのですね。それだけじゃなくて、興味津々です。


4月1日に、『ボクは光の国の転生皇子さま!⑥』が発売になります。記念SSを投稿予定です。

よろしければ、読んでいただけると嬉しいでっす!

よろしくお願いします!

ラウのイラストはまだなので、リリを。(^◇^;)

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
ラウちゃんの本最高です(^_^) ラウママの心配は当然ですね、老師が大雑把過ぎです
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