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160ーオヤツタイム

 毎日のように老師が訪ねてくる。もしかして、魔術師団ってお暇なのだろうか? なんて思っちゃうよね。


「今はお忙しいと思うのだけど……ふぅ~」


 と、ため息をつきながら母が言った。忙しいのか。その割に、しょっちゅう来るよね。それも、老師を迎えに師団長さんまで来ている。


「ラウが見つけた呪いの件があるはずなのだけど」

「あー、あれれしゅか?」


 俺が城で呪いをかけられている人を見つけた件だ。実行犯を即行で捕まえた。

 だからもう終わったものだと思っていたのだけど、まだその件で忙しいらしい。

 何故なら、母が言うには城の中だけでなく、王都在住の貴族の中にも同じ状態の者が見つかった。

 きっと城で呪いをかけられたのだろうと、父や取り締まっている騎士団は考えていた。

 もう実行犯は捕らえたのだから、解呪すれば良いだけだと。それがどうやら違ったらしい。


「あの時、お城に行ってない人も呪いをかけられていたそうなのよ」

「しょうなのれしゅか?」

「だから大変らしいわ」


 城に行っていなかった貴族の中にも、呪いをかけられた者が見つかった。それが発覚してから、王都を捜索しているらしい。魔術師団と騎士団や街の衛兵が総動員され、隈なく捜索している。

 その結果、呪いをかけられた者が発見された。それも貴族だけでなく、平民でも城に納品していたりと関わりのある商人たちもいた。

 だから今は魔術師団は忙しい。なのに、性懲りもなく老師は脱走してくる。その度に、師団長さんが自ら老師をお迎えにやってくる。もう恒例になっている。

 ちょっと待てよ。なら、その人達は誰に呪いをかけられたんだ? 城で捕まえた奴等じゃないのか?


「それが、違うらしいわよ」

「かあしゃま、しょれってたいへんれしゅね」

「ね、そうよね」


 と、言いながら母は優雅にお茶を飲む。俺はそんな母を微笑ましく思いながらジュースを飲む。


「みみの、ももじゅーしゅ、もうないみゃ」


 ミミは今日も桃ジュースだ。

 そんな平穏な毎日を送っていた。呪い騒動だって、騎士団や魔術師団が総動員されているのだから、すぐに片付くだろうと安易に思っていたんだ。


「ラウ坊、今日のオヤツは何じゃ?」


 老師だ。今日もオヤツを食べに抜け出してきたのだろう。城でもそれくらい食べられるだろうに。実際に、初めて会った時には、スイートポテトを食べていた。


「城だとすぐに呼び出されてしまうんじゃ。ここならゆっくりできるからのぉ」


 ふぉッふぉッふぉッ! と、いつもの笑い方をしながら優雅にお茶を飲んでいる。

 これでも朝からずっと解呪や呪いの解析をしていたらしい。きっとそれで疲れてしまうのだろうね。いくら老師でも、全く放り出してきているわけではない。


「老師様、また師団長さんが迎えに来られますわよ」

「構わんのじゃ。奴だってオヤツ目当てなんじゃ」

「あら、ふふふ」


 いやいや、老師が来なければ師団長さんだって来ない。完璧に老師の所為だと思うぞ。

 母がお気に入りのいつもの四阿で、オヤツタイムだ。メイドさんが今日のオヤツを持ってきた。


「楽しみじゃのぉ~」


 老師は首元に大判のハンカチを挟んで、食べる準備万端だ。一応、魔術師団の制服を汚さないように気を付けているんだね。


「つくとオヤツを食べたのが、バレてしまうからのぉ」


 なんだよ、そっちなのか。意外と考えているんだ。とっくにバレているから無駄だと思うけど。

 今日のオヤツは、アップルクランブルケーキだった。ブラウンシュガーを使ったサクサクのクランブルと、キャラメル風味に煮たりんごを合わせてじっくり焼き上げたスクエアケーキ。うちのはアップルだけじゃなくて、バターやアーモンドプードルを混ぜてある。

 

「ふぉーッ! これは美味そうじゃー!」


 まるで子供みたいに老師の目がキラキラしている。本当に好きなんだ。しかも結構しっかりと沢山食べる。

 どこにそれだけ入るんだ? と、思ってしまうくらいに食べる。もうお年なのに。


「ラウ坊、今失礼なことを考えておったじゃろう?」

「え? しょんなことないよ」

「そうかのぉ? まあ良いわ。いただこうかのぉ」


 切り分けてくれたものに、フォークを入れるとサクッと良い音がする。焼きたてなのだろう、香ばしい匂いがする。あーんと大きなお口を開けて頬張る。


「んん~! 甘く煮たアップルとアーモンドが良いハーモニーじゃのぉ~。しかも表面はサクッサクじゃぁ!」

「ふふふ、おいしいね~」

「美味いのぉ~」

「ふふふ。二人共、クランブルがほっぺについてるわよ」


 だって美味しいのだもの、仕方がない。ね、老師。


「後でまとめて拭くから良いんじゃ。美味いのぉ~」


 子供みたいなことを言っている。3歳の俺でも、ほっぺを拭いているのに。と、いっても実際に拭いているのはおフクだけど。


「ふく、ありがと」

「はい、坊ちゃま」


 おフクはよく気が付くね。うん、完璧だ。


「みみもたべるみゃ?」

「ミミちゃんは食べられないでしょう?」

「しょうみゃ?」


 また言っているよ。ミミは食いしん坊だから。


「ミミちゃんは桃ジュースですね」

「みゃ。ももじゅーしゅのむみゃ」


 そうそう、ミミは大人しく桃ジュースだ。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


ピンチです!

リリの6巻発売記念SSを投稿しようと思うのですが、アイデアが浮かびません!

リリは番外編もたくさん書いているし、発売毎に書き下ろしやSSです。

もうネタがないのです!(T . T)

よろしければ、アイデアをください〜!(>人<;)

挿絵(By みてみん)


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