157ー今じゃろ!
「ぼくが、してあげようか?」
「まあ! ラウったら、いつの間にシールドが使えるようになったの?」
「えっちょぉ、しゅこしまえ?」
「本当かしら?」
母がとっても疑いの眼差しで、俺を見ている。
ごめんなさい、嘘だ。ずっと前からできる。だって赤ちゃんの頃からミミと一緒に練習していたから。シールドは、魔王に会うために必要だったもの。
俺のシールドはそこらへんのとは違うぞ。魔素だってシャットアウトする優れものだ。
「ふふふ、ラウのシールドなら大丈夫だわ。でもわざわざラウがしなくても、ミミがいるじゃない」
「みゃ? みみはいやみゃ」
そのミミの一言で老師は察したらしい。グリンと体ごとミミの方を向いて、必死の形相で見ている。
「ミミちゃん!」
「なんみゃ、きもちわるいみゃ」
「ミミちゃんは、優秀な精霊さんなのじゃろう?」
「ちがうみゃ。みみはてんしゃいみゃ」
「そうか! 天才か! ならシールドなんて、余裕じゃろう? 楽勝じゃろう?」
「あたりまえみゃ、らうみぃにもしてるみゃ」
こらこら、ミミ。それはまだ秘密だ。
「みゃ? しょうみゃ?」
「あら、シールドなんていつラウにしているの? 何かひっかかっちゃったわよ?」
「みゃ、みみはいやみゃ。とにかくいやみゃ」
「ミミったら、どうして嫌なのかしら?」
「らって、みみのしごとじゃないみゃ」
おや、ミミったらそんなところはドライなんだね。
「こ、こうなったら……」
おや? 老師が何かに燃えている。どうした? 何がそうさせた?
「ワシが自分でシールドを張るぞ!」
「老師、ご無理なさらずに」
「今無理をせんで、いつするというのじゃ! 今じゃろ!」
どこかの先生みたいになっているぞ。
老師はシールドが張れないわけではない。ただ、その性能がへなちょこらしい。それも、とってもとってもへなちょこだ。
初級の火属性魔法で攻撃されたら、一瞬で破壊されちゃうくらいにへなちょこらしい。それってシールドの意味がないじゃないか。
「だってワシは白魔導師なのじゃぁッ! まさかこの歳で、白魔導師というジョブが足かせになるとは思わんかった!」
だから、落ち着こう。こういう人がいると、周りの者は妙に落ち着いてしまう。冷静になっちゃうんだね。
「ろうし、らからむりしなくても、ぼくがしゅるよ」
「ふふふ、ラウの方がなんでもできるのじゃないかしら?」
「かあしゃま、しょんなことはありましぇん」
「あら、そうかしら? 私達が知らないこともできるのでしょう?」
あ、いかん。これは誘導されているぞ。ついポロッと言っちゃうとヤバイ。
「らうみぃは、てんしゃいみゃ」
こら、ミミ。こんな時に余計なことを言うんじゃないぞ。黙ってな。
「らうみぃ、しょうみゃ?」
「うん、しょうらね」
「じゃあ、ももじゅーしゅのむみゃ」
また桃ジュースかよ。その件はもういいって。
「精霊界は無理に行く場所じゃないの。必要ならその人が呼ばれるわ。その時で良いのよ」
お、とっても精霊女王らしいことを言った。
「ラウ、貴方は別よ」
「え、ぼく?」
「ええ、そうね」
なんで急に俺の話になるんだ? ほら、母の眼が怖い。どんどん鋭くなっていくじゃないか。
母って、うちの真のリーダーだからね。別名、裏ボスともいう。いや、ラスボスか?
「まさか、ラウを連れていくつもりじゃないでしょうね」
ほら、ほぉ~ら、声まで低くなって場の空気がとっても冷たくなったぞ。
「それはしないと、約束したでしょう? そうではないのよ。ラウを好きなのは私だけじゃないってことよ」
そう言って、パチンとウインクをした。なんだよ、意味深だな。どういうことだ? 俺が精霊女王の愛し子だってことは知っている。他は知らないぞ。
「あら、ラウったら。また会いたがって無理に来ちゃうわよ」
あー、そっちかぁ。魔王か。確かに俺に懐いてる。いや、好意を持ってくれているとは思う。俺が行くのを、待っていてくれるくらいなのだし。でも魔王のことはまだ内緒だ。
「ふふふ、ラウを見ていると退屈しないわね」
「あら、どういう意味なのかしら? 他に誰がラウを好きなの?」
「精霊はみんなラウが好きなのよ。ふふふ」
ごまかしきれていない気もするのだけど。まあ、ここは気付かなかったフリをしておこう。母ったら鋭いんだから。
「ワシには、じぇんじぇん分からんわい」
ぶつくさと言いながら、またズズズ~とお茶を飲んでいる。もうレーズンバターサンドを三つも食べたのだね。老師ってお年のわりにはよく食べる。
「うまかった。ちょっぴり満足じゃ」
ちょっぴりなのかよ。三つも食べて?
「フク、持って帰りたいんじゃがのぉ」
「はいはい、お包みしますね」
え、持って帰るの? もしかして奥さんにお土産とか?
「城に戻ってからまた食べるんじゃ」
なんだよ、自分のためかよ。
「で?」
「え? ろうし、なに?」
「だからワシには聞こえんのじゃ。どういう話になっておるんじゃ?」
「えっとね」
精霊女王が呼ばれたら行けると言っていたと説明した。それを聞いて老師はガッカリしている。
「なんじゃ、人に期待をさせておいて結局行けんのか」
なんて不貞腐れている。本当に、自分の欲望に正直な人だ。俺より正直なんじゃないか? 我慢というものを忘れてしまったのかも知れない。もうお年だからね。うんうん。
お読みいただき有難うございます!
花粉症真っ只中なのですが、皆様は大丈夫でしょうか?
毎年のことなのですが、嫌になります。(-。-;
さて、ラウの書籍化作業も頑張ってます。担当さんが早くから対応してくださっているので、他作品の書籍化を進めながらなんとかやってます。
早くイラストが公開できるようになると良いのですが、まだまだです。
楽しみにしていただけると嬉しいでっす!
リリとロロのコミカライズも順調です。見ていただけましたか?どっちも可愛いですよ!
宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします。
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