154ーお礼を言おう
「あら、アリシアったらどうしたの?」
「以前……精霊女王のお陰で夫を助け出すことができたわ。あの時は本当にありがとう」
「まあ! アリシアったら、まだそんな事を気にしていたの?」
「だって命の恩人なのですもの。精霊女王だって異例だと言っていたじゃない」
「ふふふ、確かに異例なのだけれど。あの国は私も好きじゃないのよ」
あ、言っちゃった。好きじゃないって言っちゃった。良いのか?
そういえば、あの国には下位のジョブしか与えていないと話していた。
「碌な事をしないのですもの。今の王になってからは特にそうだわ」
「そうなのよ。本当に何を考えているのか理解できないわ」
「そうよね、本当に困った国だわ」
「うぉっほん!」
あ、忘れてた。もう一人いたのだった。大人しくお茶を飲んでいるから、存在を忘れちゃっていた。
「フク、今日のオヤツは何じゃ?」
え、そこ? そこなの? もっと聞くことがないかな? だって目の前に精霊女王がいるんだよ。
「ラウ、見えていないのよ」
「え……」
「ラウ坊、普通は見えないのじゃ」
「しょうなの?」
おフクを見ると、大きくうなずいた。おフクも見えていないらしい。じゃあ、母の侍女のコニスはどうなんだ?
「私はリンリンの加護を頂いておりますので、存在は分かります。しかし、そこがぼんやりと光って見える程度です」
あらら、そうなんだね。今更なのだけど、俺は赤ちゃんの頃から普通に見えて喋れたから、みんなそうなのだと思っていた。へぇ~、そうなんだね。
「ラウ坊、ワシにはなんも見えん」
「えっちょぉ……」
「そこにとんでもなく神々しい存在のお方がおられるだろうと感じる程度じゃ」
珍しく老師が真面なことを言ったかと思うと、立ち上がり精霊女王の方をみて恭しく跪いた。
「お目に掛かれて光栄に存じます。ワシはこの国の魔術師団におりますウォード・クロウリーと申します」
びっくりした。いつもの老師と雰囲気が違っていたから。いつもは子供みたいにやんちゃな爺ちゃんが、ちゃんと魔術師団最古参の老師だった。
片方の手を胸の前にやり、静かに頭を下げている様子は礼儀正しく丁寧な所作で、かっちょいいと思ってしまった。
なんだ、老師もちゃんとできるんだと感心していたら、徐にこちらを向いてニヤリとした。
「ラウ坊、ワシもやればできるんじゃ。と、いっても見えておらんのじゃがな。ふぉッふぉッふぉッ!」
「ふふふ、白魔術師ね。能力は高いわ。それ以上にとっても精進しているのね。魔力が洗練されているもの」
「え、しょうなの?」
「ええ、彼なら私の存在を感じ取るくらいはできるでしょうね」
それでも感じ取る程度なんだ。ほぉ~。ここにきて新事実の発覚だ。
「これだけジョブを使いこなして精進している人を見ると、嬉しくなっちゃうわ」
ほうほう。老師、良かったね。声も聞こえないのかな? 後で教えてあげよう。
「みみは、もうねむいみゃ」
「みみ……」
ミミはどんな時でもマイペースだ。
「うぉっほん! 今更なのじゃが、ラウ坊の使い魔は喋れるのだな?」
「あ……」
しまった! 忘れていたぞ。どうするよ?
「ラウ、今更だわ」
「かあしゃま、らってわしゅれてました」
「ふふふ、そうね。老師なら良いのじゃないかしら?」
「しょうれしゅか?」
良いんだって、ミミちゃん。
「なんみゃ? らうみぃ、きもちわるいみゃ」
気持ち悪いって言うな。ミミ、老師の前では喋ったら駄目だと言っただろう?
「みゃ? みみは、いわれてないみゃ?」
「ええー」
「らってらうみぃ、いまはなにもいってないみゃ」
これだよ、応用しようぜ。今まで喋ったら駄目だと言っていたじゃないか。ミミだって『ぴよ』で通していただろう?
「けろ、きょうはいわれてないみゃ」
はいはい、分かったよ。
「ろうし、みみはしゃべるんら」
「今更じゃ。さっきから堂々と喋っているではないか。びっくりして心臓が止まるかと思ったぞ。ふぉッふぉッふぉッ」
そう言ってまた『ズズズ~』とお茶を飲む。お髭がなくて良かったね。あったらきっとビショビショになっていたと思うぞ。
「フクや、オヤツはまだかの?」
「あら、ふふふ。楽しい人なのね」
精霊女王が苦笑いだ。
「しぇいれいじょうおうも、オヤツたべてく?」
「ラウ、私は人の食べ物を食べられないのよ」
「じょうおうれも、らめなの?」
「ええ、存在自体が違うのですもの」
そうなんだ、それは残念だね。
「しぇいれいじょうおう、こんどみんなれ、しぇいれいかいにいってもいい?」
「みんなでなの?」
「しょうしょう。とうしゃまや、ろうしもいっしょに」
「ぶほッ!」
これは老師がお茶を噴き出した音だ。老師の顔面がお茶で濡れているのを、おフクが慌てて拭いている。お茶を飲むのも賑やかな人だ。
「ラウ坊! ワシも行って良いのかぁッ!?」
「しぇいれいじょうおうが、いいっていったらね」
「あら、私なの?」
「らって、しぇいれいかいらから」
「ふふふ」
俺の話を聞いていた老師。精霊女王の声は聞けなくても、内容は理解したのだろう。それはもう期待に満ちた眼で俺を見てくる。いやいや、だから決めるのは俺じゃないんだって。
お読みいただき有難うございます!
最近また変な感想が見受けられるようになってしまいました。私の力が足りないのは自覚しております。
が、公の場でストーリーに文句をつけたり、校正紛いのことをするのはご遠慮いただけますようお願い致します。本当に!読んでくださっている方々の気分を害するような内容を書いて何が楽しいのでしょう?
容赦なく、削除しブロックさせていただきます。
温かく応援してくださる方々に失礼なのですよ。
ところで、ハルとロロがもうすぐ発売になります。
ハルが2/28、ロロが3/3です。3/3は月曜日です。なので、土日を挟んで28日には店頭に並べてくださる書店様もあるかも知れません。
ハルちゃんとロロが並ばないかなぁ?なんて思っておりますが、出版社が違うのでどうかしら?て、感じです。
近所の紀伊國屋さんに見に行く予定です。だって嬉しいのですもの^^;
もし並んでいるのを見られた方は是非教えて下さいませ。
宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。