153ー従弟?
そんな生まれ方をする魔王、孤高の存在といっても良い。まあ、アースランは従弟らしいけど。どうやって従弟だと認識しているのか? だって親がいないのに、従弟って親の兄弟の子供だろう?
「私が生まれた数年後に、飛び跳ねた小火からアースランが生まれた。だから従弟だ」
「え……」
それって従弟っていうのかな? ちょっと違う気もするのだけど。親とか全然関係ないじゃん。
「いえ、ラウ。魔国ではそういうものなのです。親という概念はないと言ったでしょう?」
だから生まれた場所で判別するらしい。魔王が生まれた業火が飛び跳ねた火からアースランが生まれた。だから従弟なのだそうだ。
因みに魔王に兄弟はいないらしい。魔王と同じ場所から生まれたら兄弟になるそうだが、そんな事は起こらないそうだ。飽くまでも、業火の中から生まれるのは魔王一人。その魔王が死ぬとまた同じ場所から新しい魔王が生まれる。
それって何かに管理されているみたいだ。それに……。
「まおうは、さいきょうなの?」
「そうなのだぞ」
とっても自慢げに胸を張る魔王。アースランも誇らしげだ。
「魔王様は、最強で唯一無二のお方なのですよ」
ほほう、なるほどね。
「バット達は私が生み出したのだ」
「え……」
「ふふふ、ラウは知りませんでしたか?」
「しらない。まおうがうんだの?」
「ラウ、私は性別でいうと男だ。生み出したといっても、作り出したという方が正しいな」
「えー、しゅごいねー」
「ふふふ、私は魔王だからな! 私に不可能などないのだ」
そうだね、だって正反対の精霊女王の世界にまでやって来るのだもの。普通はそんなことはしない。いや、不可能だ。精霊界と魔国は真逆の存在なのだから。だから精霊女王だって驚いていた。魔王の前では平気な顔をしていたけど。
魔王は強いだけじゃなく、全ての能力が全魔族の頂点にある。魔王の魔力で生み出されたのが、バット達だ。だから魔王のペットなのか。なるほどね。
「らうみぃ、しょろしょろかえるみゃ」
「えー、もう?」
「仕方ない、ラウの身体に影響が出るといけない」
「ラウ、また来ると良いですよ」
「うん、ありがとー」
と、俺はミミと一緒に精霊界に戻ってきた。ロールケーキを食べに行ったようなものだ。ミミはもちろん戻って即行でピーチリンに飛びついた。至福の表情で美味しそうに食べている。
「ふふふ、みみはほんとうに、しゅきなんらね」
「ミミだけじゃないわ。精霊はみんな大好きよ、ピーチリン」
「ふふふ」
「で、久しぶりに魔王に会ってきてどうだったの?」
「ん? いちゅもどおりらよ」
「あら、そうなの?」
「うん。べちゅに、ごようがあったわけじゃないし」
ミミがピーチリンを食べたかっただけだからね。遊びに行ったようなものだ。
そろそろ帰りたいんだけど、ミミはもう食べたかな?
「もういっこたべたいみゃ」
「ミミ、それは駄目よ」
「しかたないみゃ。あきらめるみゃ」
「またいらっしゃい」
「うん、ありがとー」
と、精霊女王に送ってもらって自分の部屋に戻ると……。
「ズズズ~……」
「ラウ、あなたまた行っていたのね?」
「えっちょぉ……」
今の俺の状況が分かるかい? もうごまかしようがなかったのだよ。俺とミミが精霊女王に送ってもらって部屋に戻ると、そこには蟀谷に青筋を立てた母と、のんびりとお茶をすすっている老師がいた。さっきの『ズズズ~』て音は老師がお茶をすすっている音だ。そして困った表情のおフク。
送ってもらったのだから、そこにはもちろん精霊女王もいた。
「あら、バレちゃったわね」
「精霊女王、どういうつもりなのかしら?」
「どうって、だってラウが来るっていうのですもの。ふふふ」
ああ、母が精霊女王に喧嘩腰で詰め寄っている。とっても眼が怖い。
「かあしゃま、しぇいれいじょうおうは、わるくないれしゅ」
「ラウ、あなたは精霊女王の肩を持つの?」
いやいや、肩を持つとかそういう事じゃなくて。俺の方が無理を言って世話になっているんだ。
まさか魔王に会いに行っているとは言えないのだけど。と、チラッと精霊女王を見ると、パチンとウインクをしてきた。分かってくれているらしい。
「ちょぉ~と精霊界に行っていただけじゃない。ミミがピーチリンを食べたいと言うのですもの」
「ミミ、そうなの?」
「ぴーちりんは、みわくのあじみゃ。もういっこたべたいみゃ」
「なんてことかしら。使い魔失格じゃないかしら?」
母が本気で怒っている。母と精霊女王って仲が良いとは言えなくても、もう少し良い関係かと思っていた。だって精霊の使い魔を出してくれるくらいなのだし。なのに、この険悪なムードはどうした?
「みゃみゃみゃ! みみはしっかくじゃないみゃ!」
「やっぱりチェンジしてもらった方が良かったかしら」
「ちぇ、ちぇ、ちぇんじみゃ!?」
「あら、ふふふ」
精霊女王は余裕の微笑みだ。だからさ、母は心配してくれていたのだろうけども。
「かあしゃま、まえにやくしょくしました」
「ラウ……」
そうだろう? 今度精霊女王に会ったら、お陰で父を助ける事ができたからありがとうってお礼を言おうと話していただろう?
「かあしゃま」
「もう……ラウったら、分かったわよ」
母が精霊女王に向かってゆっくりと深く頭を下げた。
お読みいただき有難うございます!
皆様如何お過ごしでしょうか?
私は花粉症と戦いながら、リリの改稿をし、確定申告の準備をし、諸々慌しくしております。
もう少しマメに投稿したかったのですが、なかなか時間が取れず時間が空いてしまってます。
それでも投稿すると、読んでくださる皆様には本当に感謝です。
さて、XやAmazonさんで公開になりました。『元貴族の四兄弟はくじけない!②』の書影です!
活動報告にも投稿しましたが、こちらにもドドンとお届けを!
この中にヤツがいます。ロロとニコがぶっ叩いていたヤツです。どこにいるのか分かった方は、是非コメントいただけると楽しいです!(^◇^;)
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