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151ー久しぶりに魔王城

 あれれ? 前にも老師はお姫様抱っこされていなかったっけ?


「お、お、下ろすんじゃぁーッ! こら! サイラス! ワシはアップルパイを食べておったのじゃぞぉッ!」


 老師はそのまま師団長さんに、はい、と渡されて、今度は師団長さんにお姫様抱っこをされて去って行った。


「お騒がせして申し訳ない!」


 と師団長さんが去り際に謝っていた。サイラスが、いえいえ大変ですね。て、同情していたりして。

 連れて行かれる間も老師は騒いでいた。


「離せ! 離さんかぁッ! ワシの食べ掛けのアップルパイがぁッ!」


 なんて叫んでいた。甘い物が大好きだものね。でももう2切れも食べたのだから良いだろう? しかもその手にも持っているじゃないか。もしかして1ホール食べるつもりだったりして。

 魔術師団の師団長に抱っこされながら、老師が叫んでいる。


「ラウ坊! また来るからのーッ!」

「またねー」


 と、小さな手をフリフリしておいた。なんてお騒がせな老師なんだ。とても良い大人だとは思えない。あれか? 年を取ると子供に戻るとか言うけど、戻り過ぎちゃったか? 無邪気な老師だ。


「老師様も困ったお方ですね」

「ふふふ、かわいいね」

「おや、ラウ坊ちゃんの方が大人ですね」

「さいらす、しょんなことはないよ」


 一体何歳違うと思ってんだ。いや、そんなことは分かっているだろう。

 あの老師、きっとまた来るよ。うん、必ずね。

 そんな毎日を送っていたのだけど、俺の周りはなんとも賑やかだ。


「らうみぃ、しゃいきんおとなしいみゃ!」


 ミミだ。突然そんなことを言い出した。意味が分からない。


「みみ、なぁに?」

「らって、まおうのとこにも、いかないみゃ!」

「え? みみは、まおうにあいたいの?」

「しょんなわけないみゃ! みみはしぇいれいみゃ」

「しってるけろ」

「しぇいれいかいにも、いかないみゃ!」

「あー……」


 この一言で分かっちゃったぞ。ミミはあれだ。俺が精霊界を経由して、魔王に会いに行っていた時は、ミミは帰りに精霊界でピーチリンを食べていた。

 それだろう? ピーチリンが食べたいだけじゃないのか?


「みみ……」

「なんみゃ?」

「ほんとうに、しゅきなんらね」

「らってとってもおいしいみゃ!」


 ほら、ピーチリン目当てだ。それはそれとして、確かに最近魔王城へ行ってない。そろそろ行っておくか? でないとまた精霊女王の世界にやってくるぞ。そしたら俺はまた強制的に呼ばれる。それよりも、自分から行っておこう。

 バットはどこにいるのかな?


『ここにいるのれしゅ』


 バットの声が頭の中に聞こえてくる。本当にずっと俺を見ているらしい。

 窓の外を見ると、一番近くにある木の枝に小さな黒いものがぶら下がっている。

 ああ、あれがバットだ。こうして見ると普通の蝙蝠に見える。でもバットも魔族だ。衝撃波を飛ばしたりできるし、こうして念話で話すこともできる。自他ともに認める魔王のペットだ。


『まおうのところに、あしょびにいこうかな』

『それは良いことなのれしゅ! 魔王さまが喜ぶのれしゅ!』


 閉じていた羽をパタパタと動かしている。お口の中は真っ赤で、鋭い犬歯があるのだけど見慣れると可愛い。こうして俺を守ってくれているらしい。


「みみ、じゃあしぇいれいじょうおうに、たのまなきゃ」

「ぴーちりん!」


 もう頭の中はピーチリン一色なのかよ。先に魔王に会うんだよ。


「わかってるみゃ。ぴーちりんは、とってもとってもおいしいみゃ。みわくのあじみゃ!」


 魅惑なのかよ。

 そんなこんなで、俺とミミは精霊女王に精霊界に連れてってもらった。


「久しぶりじゃないかしら?」

「しょうなんらよ」

「ぴ、ぴ、ぴーちりんみゃ!」


 ミミはそれしか考えられないのか? 魔王に会いに行くというよりも、ピーチリン目当てだ。


「みみ、さきにまおうにあいにいくよ」

「わかってるみゃ!」


 ミミがブワワンと大きくなり、俺はその背中にテンと乗る。


「しぇいれいじょうおう! いってくるねー!」

「気をつけるのよー!」


 精霊女王が手を振ってくれている。いつもいつもありがとう。


「みみにのるのも、ひしゃしぶりらね」

「しょうみゃ。しばらく、ぴーちりんをたべてないみゃ」

「らからさぁ……まあ、いいや」

「なんみゃ? かえりに、ぴーちりんたべるみゃ」


 はいはい、分かったよ。

 魔王城が見えてきた。すると、パタパタとバットが俺達のそばを飛ぶ。


「魔王さまー!」


 ふふふ、会いたいんだね。バットは本当に魔王が大好きだ。


「かっこいいれしゅ! 魔王さまのお城れしゅ!」

「らね、おおきいね」

「はいなのれしゅ!」


 魔王城の上空に到着すると、俺とミミは転移だ。もう慣れたもんだよ。


「ぶぶふッ!」

「あ、まおう。ごめんね」


 相変わらず、転移する先は魔王の顔面だ。シュンッと転移して、ガシィッと魔王の顔面にしがみついた。おっと危ない。落ちたら痛い。


「ラウ! どうしてあなたはいつもいつも魔王様の顔面にダイブしてくるのですか!?」


 いつものように文句を言いながら、魔王の顔面から俺をベリッと剥がす魔王の側近アースラン。いつも悪いね。

 でもこのアースランは、いつ来ても俺の為にオヤツを用意してくれているいい奴だ。


「ラウ、久しぶりじゃないか」

「うん、げんきらった?」

「私は元気だ。ラウも元気だったか?」

「うん」


 そう言えば、久しぶりになっちゃったのに魔王は精霊女王の世界に来なかったね。


「ちょっとバタついていたからな」

「しょうなの?」

「ラウ、例の国ですよ」


 アースランが、とっても嫌そうにお顔を歪めながら言った。

 例の国とは、デオレグーノ神王国の事だ。どこの国からも、面倒でやっかいな国だと認定されている。この魔国でもそうだ。


お読みいただき有難うございます!

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