表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

149/217

149ー何故に?



 俺の日課を知っているかい? もちろんアコレーシアに、フリージアの花を1本持って行く事さ。

 婚約が決まったからって、止めたりしない。そんな事は関係ない。だって、俺がアコレーシアに会いたいのだもの。

 なのに、何故か毎日やってくる人がいる。まあ、アコレーシアのところに行く事には支障がないから、良いのだけど。て、俺の家って普通は関係ない人を中に入れないんじゃなかったっけ?

 そんな事を考えながら、四阿でオヤツタイムだ。ここは色んなお花が咲き乱れるのを、一番綺麗に見る事ができる。そして今も俺の目の前で、美味しそうにアップルパイを食べている。


「ふぉッふぉッふぉッ! なかなか美味いのぉ。絶品じゃ」


 分かる? この個性的な笑い方だよ。あの老師だ。魔術師団最年長の老師様だ。

 毎日やって来る。魔術師団て、暇なのか? 昨日なんて朝から一日中いた。お手々を繋いで、一緒にアコレーシアの家まで行ったりなんかする。


「まあ! 老師様ではないですか!」


 出迎えてくれたアコレーシアの母様が驚いていた。だって付いてくるのだから仕方ない。


「ふぉッふぉッふぉッ! これはまたラウ坊も隅に置けんのぉ!」

「え、えっちょぉ……?」


 ほら、アコレーシアも驚いているじゃないか。ひまわりの様なオレンジ色の瞳が、今にもこぼれ落ちそうだ。

 そんな事を無視して、アコレーシアの頭を撫でたりしている。老師は本当にマイペースだ。


「アコ、魔術師団の老師様なのよ。最年長のお方なの」

「まあ! はじめまして、アコレーシアれしゅ」

「ほうほう、可愛らしいのぉ!」


 なんて言いながら、俺達と一緒に絵本を読んだり、スイーツを食べたり。

 すぐにアコレーシアも慣れてしまった。


「ろうししゃま、あたちもまほうが、ちゅかえるようになりましゅか?」

「ん? アコちゃんは、魔法を使いたいのかの?」

「あい。あたちもちゅよく、なりたいのれしゅ」

「ほうほう、強くか。魔法が使えるから強いとは限らないのぉ」

「しょうなのれしゅか?」

「5歳の鑑定の儀を待つのだよ」

「あい」


 普通は皆鑑定の儀を済ませてから、魔法を習得する。魔法に関係のないジョブだとしても、生活魔法と呼ばれる汎用性の高い簡単な魔法は使えるようになるんだ。

 建国当初の魔術師団が、魔力量に関係なく使えると考案して広めたものだ。

 攻撃力は全くないのだが、生活していく上で便利な魔法なのでそう呼んでいる。

 小さな灯りを灯したり、火種を出したり、汚れを綺麗にしたり。少しの飲み水を出したり、誰にでも簡単に使える魔法だ。


「アコちゃんも生活魔法から、先ずは覚えると良いぞ」

「あい、わかりました!」


 そんな感じだから、毎日老師がやって来てもアコレーシアに会いに行く事には支障がなかった。

 そして今日もやって来て、アップルパイを食べているオヤツの時間だ。


「なんだ、ラウ坊。食べないのか?」

「たべるけろ」


 まあ、いいや。俺もアップルパイを食べよう。フォークを入れると、サクッと良い音がする。

 香ばしく焼けたパイ生地の中には、カスタードクリームと甘く煮たりんご。とっても美味しい。


「ぴよ」

「うん、ももじゅーしゅれしょう?」

「ぴよ」


 そう、老師が来るのは良いんだ。だけど、一つ不便な事がある。ミミだ。

 喋る事ができない。老師がいる間は、ずっと『ぴよ』だ。ミミの事だからきっとまた、念話がある事を忘れているのだろう。


「みみに、ももじゅーしゅを、あげてほしいな」

「はい、坊ちゃま」


 おフクが用心して、俺の側から離れない。いくら老師といっても、部外者には変わりないからだ。


「ラウ坊は隅におけんのぉ」

「え、なぁに?」

「あんなに可愛らしい嬢ちゃんがいるとはのぅ」

「あー、あこちゃんはかわいいれしょう?」

「ふぉッふぉッふぉッ! 可愛い、二人共可愛いのぉ」


 俺はさておき、アコレーシアは超可愛い。もしかしたら、花の妖精さんなんじゃないかと思ってしまうくらいなのだ。もしも本当に妖精さんだったらどうしよう? なんて思ったりして。


「とおくにいかないように、きじゅちゅかないように、ぼくがまもるんら」

「ラウ坊、守るのか?」

「うん。じぇったいに、まもる」

「ふむ」


 俺の言葉を聞いた老師が、アップルパイを食べている手を止めて言った。


「ラウ坊、アコちゃんはラウ坊がいないと生きていけないのかの?」

「え……」


 なんだ? どうしてそんなに飛躍した話になるんだ?


「ラウ坊が守らないと、生きていけないようなお嬢かのぉ? ワシには、そうは見えんかったがのぉ」


 確かに、アコレーシアはああ見えて芯がしっかりとした子だ。それはまだ3歳だというのに、片鱗が垣間見える時がある。

 老師様に、自分も強くなりたいと言った事だってそうだ。

 それでも、か弱い女の子だ。ジョブだって攻撃力のあるものではない。


「けろ……」

「確かに攻撃力は皆無じゃがな。ふぉッふぉッふぉッ!」


 なんだよ、老師ってどこまで分かっているんだ? なんでもお見通しって、感じじゃないか?

 俺は前の事に拘る余り、過度になっている感はある。それは自分でも思う。

 だって、守りたいんだもの仕方ないじゃないか。


お読みいただき有難うございます!

応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ